廃棄問題の背景にはアパレル特有の理由が……。

 昨今アパレル品の廃棄問題が話題となっている。それは言わずもがな多量の在庫が余っていることに他ならない。ではなぜ残るのか?

 アパレル業界では「通常販売」→「セール販売」→「アウトレット販売」→「ファミリーセール」といった販売フローが一般的である。2000年代初頭まで多くのアパレル企業は通常販売で7割程度は販売できており、残った3割程度をセール販売やアウトレット、ファミリーセールで販売すればほぼ在庫は残らなかった。これはマーケット全体が拡大傾向にあるが故に成し得た構造であった。

 ところが2000年代も半ばに入り、ファストファッションが台頭してきた結果、多量の商品が安く市場に流通することで市場全体の供給量が増加した。多くのアパレル企業は通常販売で5割程度の販売しか見込めず、その結果、セールやアウトレットでの販売規模が増加し、収益を圧迫する結果となった。

 また、収益が圧迫されたのみならず市場供給量が増加したことからセールやアウトレット、ファミリーセールでの販売を行っても当シーズンの最終的な消化率も悪化してしまった。こうしてアパレル商材の滞留在庫は増加することになり、昨今の報道の通り、一部では多量の廃棄問題につながってきている。

 アパレル商品の廃棄処理はなぜ行われるのかといえば、それはブランド棄損を避けるために行われているケースが多く、廃棄するという行為についてはその当事者は少々の疑問を感じていながらもだんだんと当たり前のように行われてきたように思える。

 廃棄は、環境に影響を与えかねない行為であることは明白だ。衣類品の多くが、ポリエステルやナイロンといった化学繊維で作られており、これが各家庭の洗濯で非常に細かい繊維となって下水へ流れ、海へと流れている。他方、廃棄された商品が焼却された場合は、化学繊維においては有毒ガスが発生するためCO2の増加につながる。

 では、天然素材を使用したアパレル商品はどうか。衣料品の中でも多く使用されている綿素材等は化学繊維とは異なるデメリットがあり、それは綿素材の素材となる綿花を栽培するのには多量の”水”が必要となっていることである。水不足は中東や北アフリカを中心に人口増加を前提として世界的な問題となっているのは周知の事実であり、アパレル商品の廃棄はこのように環境問題につながる深い問題といえる。

「スローファッション」を後押しするようなサービスの拡充が必要

 

 さて、アパレル業界におけるこのような廃棄問題をクリアするには、在庫を残さないための方法論が必要となる。ファッションが故に感覚に頼り切った需要予測や販売計画からの脱却を図り、定量的な販売計画の作成と仕入れ手法の導入を行う必要があることはもちろんのこと、今後はAIやBI(ビジネスインテリジェンス)の活用はMustとなり需要予測や販売計画の精度は数段上昇するものと見込まれる。

 とはいえ、マーケット全体の需給バランスはどうかといえば、ここ数年は依然として供給過多なアンバランスな状況が続くと考えている。外資系アパレルの日本撤退や国内アパレル企業の法的整理などにより市場からの退場は一定程度発生するものと推測されるが、これらの市場からの退場は非常に緩やかなスピードで行われるため、やはり一定の過剰在庫は発生するものと言わざるを得ない。

 こうなれば、いかに過剰在庫を「早期」に「高く」一定の販路内で消費者に届けていくか、という二次流通ならではのノウハウが必要となり、この業務には通常販路での販売と同様に人的・時間的な負荷がかかるために、外部のプロフェッショナルとの協業が必要といえる。

 今後5年もしくは10年のスパンで見れば、現在の欧米のように、ハイエンドのブランドとファストファッションのブランドの二極化が進み、ブランドの幾つかが日本市場から姿を消す可能性も全く否定できない。

 そのような事態に陥らないためにも、そして生き残りをかける意味でもアパレル業界は構造的な変革を行う必要が出てきていると考える。過剰在庫を生み出さない方法論は何も需要予測や販売計画の精度だけではなく、在庫での売上比率を下げてサービス売上げの比重を上げることでも成し得る。

 顧客が購入したその一着に対して、修繕やカスタマイズを行うようなサービス、またはそのブランドの次シーズンの商品政策に顧客が参加でき、購入した一着に愛着を感じて着てもらえるサービスなど、いわゆる”スローファッション”を後押しするようなサービスは一部では始まっているが、このようなサービスに資本を投下し充実させることで、物販に頼らず過剰在庫を生まない仕組みや価値観というものが出来上がってくるであろう。

 一見すれば右肩上がりでの成長が見込めない同業界ではあるが、ファッションを扱ってきた歴史の中で人々の憧れを物として提案・表現してきたノウハウがあるからこそ、このような新しいサービスの展開についても、比較的早く実行できる業界であると筆者は考える。