最大43%のコスト削減を実現したハイアール無灯火工場のオーダーメイド

 従来の流通の「物の流れ」であるサプライチェーンを高効率化する方法は、『事例でわかる新・小売革命』の劉潤によれば、1つはプロセスを短くすること、そしてもう1つはプロセスを逆行(リバース)することである。逆行とは、生産から流通を通して消費者の需要に合わせる従来のマニュファクチャリングモデルではなく、需要が発生してから生産をするサービスモデルになるということだ。

 デジタル化によって消費者のニーズがすぐに得られるようなプラットフォームが一般的になると、今度は作ったものを最適化するのではなく、そもそもの需要に合わせて価値を届けるサービスドミナントロジックに変わってくる。中国の家電メーカーのハイアール(Haier)は、アリババのECサイトであるTモール(天猫)と提携して中国最大のオンラインセール「ダブルイレブン」に合わせて500タイプ以上のカスタマイズ冷蔵庫を販売した。

 ハイアールの工場は「無灯火工場」と呼ばれる完全にロボティックスによるオートメーション工場である。人間がいないので電気をつける必要がなく、暗闇でよいからそう呼ばれている。工場内ではカスタマイズのニーズに応えるために25のモジュールで作業されており、一台一台が顧客のオーダーに沿って生産される。ハイアールが公表したデータによると各プロセスの改善によって最大43%のコスト削減を実現でき、結果的にカスタマイズされた高い付加価値を持ちながら、その削減によって顧客には低価格で製品を提供できるということである。

Tモール内のハイアール公式ショップ。通常時にはオーダーメイド注文は行われていない(天猫TMALLサイトより)

 生産上の無駄を無くそうというのは、小売りでは当然の目的ではあるが、それを実現するのは難しい。なぜなら基本的には生産と需要の発生は時間的な差異が大きいからだ。また生産は量が確保されない限りコスト的にも物流的にもメリットを出せないのに対して、需要は分散しがちで予測しにくい。ハイアールのリバースが成功したのは、オーダーメイドによる注文生産による在庫削減はもちろんだが、「ダブルイレブン」のような需要の集中が予測しやすいタイミングを選んだことも大きい。その意味ではアリババのTモールの役割も重要である。サプライチェーンのプロセスの逆行のためには、こうした顧客と直結した需要を集中させる仕組みが欠かせないだろう。

在庫リスクをゼロにするリバースチェーン

 日本ではZOZOTOWNが昨年からこのリバースチェーンを実現するツールやサービスを次々と展開している。1つは無料配布したZOZOスーツによって体のデータを顧客に測ってもらいZOZOのプライベートブランドのTシャツやジーンズ、そしてスーツの販売をスタートし、今年からはZOZOMATを無料配布し足のサイズの計測を始めている。今後同様の自社製品を靴でもスタートするとうわさされている。

 一般的にはカスタマイズによる製品は通常、既存の大量生産の商品に比べて付加価値があることから、顧客には価格を上乗せして提供されるのが普通である。製造効率的にはどうしても原価が高くなりがちだからである。しかし中国ニューリテールのリバースチェーンは、カスタマイズによって高付加価値を売るのではなく、短絡経済によるコスト削減でより低価格で提供することを目指している。

 米のD2Cブランド、ZOZOのプライベートブランド製品も同じリバースチェーン型の発想で、カスタマイズした上で低価格を実現している。そのために顧客データを集めるツールを無償で提供し、そこからZOZOの利便性のエコシステムに引き入れることで最終的に継続的な収益を得るためだ。

必要商城のレディースシューズ一覧画面(必要商城サイトより)

 中国の必要商城(ビーヤオ.com)はZOZOと同様にリバースチェーンのECプラットフォームだが、多品目を取り扱っている。シューズの場合なら、顧客の足のサイズのデータを活用し、高品質の商品を低価格で提供し、在庫リスクをゼロにする。大量製造による在庫リスクを避け、顧客と直接つながることでニーズと中間プロセスがなくなることによって利益を顧客に還元できるのである。