これまで伸びが著しいとさかんに話題になっていたスーパードラッグチェーンが、今度はその伸びが止まったともっぱらの話題である。

 だが伸びがなぜ止まったかを考える前に、なぜスーパードラッグチェーンが、「コンビニ」を上回るほど好調であるか、その戦略的意味を考えてみたい。それはスーパードラッグチェーンではない、他の企業にとっても、参考になるはずである。

 実はスーパードラッグチェーンが「コンビニ」を上回るほど好調と伝えられた昨年秋と、まだ伸びが止まったと報じられていなかった今年の冬、私はその「戦略提案セミナー」で2度にわたって、好調といわれる理由とその理由の危険さを指摘している。

 第1に、スーパードラッグは、その主力商品部門である調剤・薬品・化粧品の3大部門が、強力なメーカーのナショナルブランドで支えられている。そのことは、連日コマーシャルを流す強力な後ろ盾に支えられているという利点と、安売りができない、といってストアブランドの開拓もできない、ピービーの開拓も難しい、という難点?を抱えていることを意味する。

 それは、チェーン同士が商勢圏を分けあっている間は、利点として大いに発揮される。だがチェーン同士の商勢圏が交わってくると、それは差別化の困難という難点になる。

 第2にそこで多くのスーパードラッグチェーンが取った手は、2つある。1つは、主力部門を維持しつつ、副部門を開拓すること、である。それが食品雑貨の取り扱いであり、その本質は再度のセミナーで指摘した通り、「ラインロビング」であった。

 2つは、販促・安売りをやること。販促の主な手はポイント制であり、そのポイント倍増作戦である。同時に「安売り」の対象になったのが、「ラインロビング」された副部門である。副部門は、広い意味での販促のため導入された、といってもいい。

 だから大雑把にいえば、スーパードラッグチェーンが、かつて好調な伸びを見せ、今、逆にその停滞が見られるというのは、主力部門である、調剤・薬品・化粧品の動向によるものではない。これら主力部門は、差別化できない、安売りができない、という難点?と同時に、売上げと利益を支えるという不動の利点も今も併せ持っている。

 スーパードラッグ問題は、ひたすらこの「ラインロビング」した副部門にある、と思われる。それを象徴するのが、かつてその伸びが指摘された時にいわれた「コンビニをしのぐ」という形容詞である。

 元々「コンビニ」は、調剤も薬品も化粧品も売っていない。スーパードラッグが「ラインロビング」した部門群こそ、「コンビニをしのぐ」と対比された部門群である。であるとすれば、今、その伸びが止まった、と指摘されるのも主力部門の停滞ではなく、この「コンビニをしのぐ」「ラインロビング」された部門群の停滞だ、いうことである。

 そこで第3に、私がセミナーで再度その危険を指摘したのは、それら副部門が「ラインロビング」された、という事実そのものである。なぜならそもそも「ラインロビング」というコトバが用いられたきっかけは、「業種」に代わって「業態」が躍り出たとき、何よりも支持されたのがその「品揃え」の幅の広さであったからであり、「買物の便利さ」であったことに始まる。最初はスーパーマーケットから始まった「業態品揃え」は、部門品種をどんどん「ラインロビング」して、遂に「ビッグストア」に到った。 

 その過程こそ、最も典型的な「ラインロビング」の実行であり、そう考えたとき、この「ラインロビング」という手法が、代表的な過去の「業態発想」の産物であり、従って「コンビニ」、特にセブン-イレブンのその後の戦略を見れば、完全に時代遅れな発想だった、ということが了解できるはずである。

 スーパードラッグチェーンは、この過去の発想である「ラインロビング」の手法で、しばらく伸び、当然にこの手法の限界に突き当たり、今、伸びが止まっている、というにすぎない。私がセミナーで指摘したのも、以上の常識論でしかない。「ラインロビング」というコトバを聞いただけで、それが使い古された過去の発想であり、従って、今、参考にすべきではない手法であり、こんな言葉は二度と用いるべきでない、ということをただちに了解できるのが、本当の「経営感覚」である。

 さて第4に、では私はスーパードラッグの未来を暗いものと考えているか、というと、そうではない。なぜならまず1つに、強力かつ不可欠な調剤・薬品・化粧品がある。これら部門について、ナショナルブランドであり・安売りできないから、「差別化」困難だと難点ばかり見るのは、間違いである。

 どんな店も、全てのナショナルブランドを扱えるわけではない。幸か不幸か、調剤・薬品・化粧品ほど、品種品目が多様にわたる部門群はない。その品揃えの巧拙は売上げと利益と、そして何よりカスタマーのデスティネーションを決定する重要な要因である。

 逆である。価格競争ができないからこそ、安心して「品揃え技術」の競争ができるのである。「ラインロビング」された部門で、便利さと安さの競争することで、どんな技術が育つか、どんな技術も育つことはない。それは過去において既に実証済みである。「ラインロビング」で成立した「ビッグストア」がどうなったか、それを見れば一目瞭然である。ユニーはドン・キホーテに転換することで、辛うじてこの過去の遺物ともいうべき「ラインロビング業態病」から脱出することができた。

 スーパードラッグにとって、「ラインロビング」部門の伸びの停滞こそ、むしろ本業回帰の絶好のチャンスである。同時に「ラインロビング」などという「邪念」を払ってみれば、食品雑貨部門にも開拓の可能性は十分にある。

 私はバカの1つ覚えに「ストアブランド」を開拓せよ、といいたいのではない。ここで取るべき手は「ストアブランドの開拓」ではなく、副部門を扱うのは、決して「販促・安売り」のためではない、という基本を知ることである。

 そして主力部門と同じように副部門においても、どのような品種品目をそろえることが、わが社わが店のカスタマーのデスティネーション強化に役に立つか、という視点で品揃えを立て直すことである。それは言い換えれば安直な販促という手法を捨てて、店舗要員の「品揃え技術」を養うこと、に他ならない。

 これまで販促に依存せざるを得なかった真の理由は、品揃え技術の不足あるいは不在にあった。そこで販促依存、品揃え技術育成不在、販促依存という悪循環に陥った。今こそ、この「構造」からの決定的転換のチャンスである。この悪循環からドコが早く切り替えることができるか、外野にいる私はそれを楽しみにしている。

※この原稿は島田陽介先生のアドレス宛に、メールアドレスを送付した方に毎月不定期に送られる「今月の提言」から抜粋したものです。