購入頻度が高いものに共通すること

 さて問題。図表①に『食品部門で購入頻度が高い品目 Top10』を表示したが、このうち「牛乳」「ヨーグルト」「液体茶」「冷凍調理」「スナック」に共通することは、一体なにか?

図表① 食品部門で購入頻度の高い品目 Top10(年間購入回数)

(データソース:SCI 集計期間:2018/7 - 2019/6)

 これらは2019年3月以降に値上げをした品目である。19年10月の消費税増税を前に、食品を中心にメーカー各社がこの春、値上げを敢行した。

 19年3月前後の価格変動実態を、スーパーマーケット(SM)、コンビニエンスストア(CVS)、ドラッグストア(Dg.S)、大型小売店(GMS)をカバーした全国約4000店舗のPOSデータに基づき算出した経済指標「SRI一橋消費者購買指数」(注1)で確認すると、確かに2019年3月から7月にかけて急激に上昇していることが分かる(図表②)。また指数上昇への寄与度を分析してみると「牛乳」「液体茶」「ヨーグルト」の影響が上位(図表③)であり、多くの消費者が、価格に敏感になってきていることもうかがえる。

 この値上げの主な理由は「原材料の高騰」「物流費の高騰」「人件費の高騰」とされる。メーカーを取り巻く環境も厳しく、今後も「高騰」の流れ、それに伴う「値上げ」の流れを変えられそうにない。ではそんな中、お客さまに選ばれる店・売場にしていくには、SMとしてどのような手を打てば良いのだろうか。今回は、値上げ前後の消費者の行動から解決の糸口を見つけていきたい。

図表②「消費者購買単価指数」の推移

(データソース:SRI一橋消費者購買指数  集計期間:2017/8 - 2019/7)

図表③「消費者購買単価指数」品目別寄与度

(データソース:SRI一橋消費者購買指数  集計期間:2019年7月22週)

消費者がドラッグストアに流れているわけ

 消費者の行動変化を把握するために、弊社の消費者パネルデータベース「SCI」を見ていく。「SCI」は、全国15歳~79歳の男女5万2500人の消費者から継続的に収集している日々の買物データであり、食品、飲料、日用雑貨品、化粧品、医薬品、タバコなど、バーコードが付与された商品について、「誰が・いつ・どこで・何を・いくつ・いくらで、購入したのか」という消費者の購買実態を捉えることができる。

 19年1月から6月までのSM、CVS、Dg.Sの買上回数・点数の推移を見る(図表④)と、Dg.Sは前年を上回り好調に推移。一方、SMは3月を除き回数・点数ともに前年を下回り、特に点数での落ち込みが4月以降大きくなってきている。果たしてこのSMにおける落ち込みは、食品の値上げの影響によるものだろうか?

 そこで、単価指数への影響が大きかった「牛乳」「ヨーグルト」での動向を見てみる(図表⑤)。「牛乳」は、CVS、Dg.Sでは1-3月、4-6月ともに回数・点数で前年を上回っているが、SMでは1-3月、4-6月ともに前年を下回っており、4-6月ではさらに落ち込んでいる。「ヨーグルト」は、Dg.Sでは1-3月、4-6月ともに回数・点数で前年を上回っているものの、SMでは回数・点数ともに、1-3月こそ前年を上回ったものの、4-6月では前年を下回る状況となっている。単価の変化をSMはもろに受けていることが分かる。

 次に、SMとDg.Sでは、販売価格帯にどういう違いがあるか(図表⑥)を見てみると、基本的にSMよりDg.Sの方が安い。品揃えの違いもあるが、Dg.Sの方が牛乳では20円程度、ヨーグルトでは10円程度ほど安くなっているなど、消費者にとってのこの販売価格帯の差は、SMの使い方に少なからず影響を与えていると考えた方がいい。

図表④ 買物全体での買上回数・買上点数の前年比

(データソース:SCI  集計期間:2019/1 - 2019/6)

図表⑤ 牛乳、ヨーグルトでのレシート枚数・買上げ点数の前年比

(データソース:SCI  集計期間:2019/1 - 2019/6)

図表⑥ 牛乳、ヨーグルトの値上げ後のSMとDg.Sの販売価格帯比較

【牛乳 値上げ後のSMとDg.Sの比較】

【ヨーグルト 値上げ後のSMとDg.sの比較】

(データソース:SRI 集計期間:2019/4 - 2019/6)

 次に、SMの使い方に変化があったかを弊社SCIを使って業態間のシェア流出入という視点から確認する。SCIは同一モニターが「いつ」「どこで」「何を」「いくつ」「いくらで買ったか」を日々記録しているため、同じ人の業態間の買い回り変化を見ることが可能だ。

 図表⑦はヨーグルトにおける購入回数の業態別シェア推移を示している。2019年4-6月期では、SMからDg.Sへ対前年同期で0.7ポイント流出。つまり値上げ後、ヨーグルトを買う場合は、SMではなくDg.Sを選択していることが分かる。そしてこの傾向は、牛乳でも同じであった。

図表⑦【ヨーグルト】購入回数シェアの業態間の変動実態(SCI)

(データソース:SCI  集計期間:2019/1 - 2019/6)

 Dg.Sの中には、売上げの約6割を食品が占めるチェーンもあり、各社食品の取り扱いを強化してきている。また最近は品揃えや利便性を価値として提供する企業も増えてきてはいるが、やはり食品の価格の安さはDg.Sの魅力的な要素の1つである。そして今回のような値上げは、ますます業態間の垣根を低くし、業態間競争を激しくしていることが分かる。

 では、このような厳しい状況下でSMはどう戦うべきか? 対抗価格でギリギリの値付けで勝負することも1つの方法ではあるが、価格だけでは体力勝負。人口減によるマーケット縮小が確実な中、価格だけによらないお客さまをつかまえる施策をぜひ考えたい。ここからは、「お客さまの特徴」に焦点をあてて、SMにとってどのようにお客さまをつかまえ離さないか、そのための施策のヒントをご紹介したい。

価格に左右されにくいお客とは?

 弊社SCIでは、買物・買い回りの履歴に限らず、モニターの性・年代などのデモグラフィック属性、買物の背景にある価値観やライフスタイルといった情報も収集しており、購買実績と紐づけて活用することができる。また、これらのモニターに紐づくさまざまな情報を元にして、食や健康や購買行動に対する志向性から、同じ傾向の人たちをグルーピングしたセグメントを作成している。

 今回は購買行動セグメント(アーリーアダプター/イメージ先行/マイチョイス/愛着保守/安物買い/口コミ/衝動買い/特売の8セグメント)を使って、「牛乳」と「ヨーグルト」でのSMにおける購買実態の違いを見てみる。

図表⑧【牛乳・ヨーグルト】SMにおける購買行動セグメント別個数前年比

(データソース:SCI  集計期間:2019/1 - 2019/6)

 図表⑧でセグメント別の購買個数の変化を見てみると、値上げか起きた4月以降において、“アーリーアダプター”と“愛着保守”セグメントの方々は購買個数前年比が全体を上回っており、価格変動の影響をあまり受けていない人たちとみることができる。では、これらの人たちにどうアプローチすると良いか。

 まず“アーリーアダプター”に属する人たちは、メディアへの接触頻度が多く、情報感度が高い。新商品は手に取り、早く試してみるといった志向性がある。このセグメントに対しては、売場で新商品や新しい価値訴求をしている商品にどれだけ気付いてもらえるか、また来店前にどれだけ知ってもらえるかが非常に重要となってくる。情報感度が高いことからも、スマホアプリやデジタル広告を活用して、来店前にどれだけコミュニケーションを取れるかがキーになってくると考えられる。

 一方、“愛着保守”に属する人たちは、自分が気に入った銘柄をよく買う傾向が強い一方で、商品検討にあたっては、品質やおいしさ、機能をよく比較する特徴がある。値上げにより価格に敏感な今、NBよりも価格が手軽なPBを再度検討してもらえるタイミングをチャンスと捉え、PB商品の持つおいしさや機能を改めて知ってもらう施策(例えば、店頭での試食など)を打つことで、“愛着保守”のお客さまにファンになってもらうことが有効な手段の1つであると考えられる。

 今回は価格の影響をあまり受けないセグメントを中心に分析したが、価格の影響を受けやすいセグメントであっても、お客さまという視点から値上げへの対策を考えていくと、必ずしも価格だけによらない施策アイデアは出てくる。しかも、それはお客さまを十分に理解してのことなので、お客さまにとっては、心地が良い。あなたが1人のお客さまとしたら、“心地が良いお店“と”心地が悪いお店“のどちらを選ぶだろうか。

「原材料の高騰」「物流費の高騰」「人件費の高騰」による値上げ、さらに10月には消費税増税も控えている。消費者の負担は増えるばかりである。今、SMにとって、かつてないほどの非常に難しい局面である。この状況を甘んじて受けるか、チャンスとして生かすか。価格競争に乗ることも必要条件の1つではあるが、ぜひ今後を見据え、改めて自分たちのお客さまのことをしっかり見詰め直してもらいたい。そこには、お客さまに伝えるべき、価格だけではない要素がたくさんあるはずだ。

(注1)一橋大学経済研究所、一般社団法人全国スーパーマーケット協会、株式会社インテージの三者が協働し、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア、大型小売店もカバーした日本全国4000店舗のPOSデータに基づき、消費者の購買支出変化の価格、数量、新商品効果への分解を行う「消費者購買支出指数」、消費者購買の価格の変化をみる「消費者購買価格指数」、消費者購買の数量の変化をみる「消費者購買数量指数」、消費者購買の新旧商品交代の効果をみる「消費者購買商品入替効果指数」および、商品の容量変化や新商品と旧商品の交代が物価に及ぼす影響を反映する「消費者購買単価指数」を算出。サイトから最新データを確認することが可能。