ロックバンドのファンがカンパを呼び掛けたのが最初

 クラウドファンディングは、群衆を意味するクラウドと、資金調達を意味するファンディングを組み合わせた造語である。1997年にイギリスのロックバンドMarillionがアメリカツアーを実施するにあたり、ファンがインターネット上でカンパを呼び掛けるキャンペーンを独自に企画したところ、約6万ドルの寄付が集まったのが最初の成功事例とされている。当時は、クラウドファンディングという言葉はまだなかった。クラウドファンディングという言葉が認知されだしたのは、2006年ごろと言われている。

 クラウドファンディングは、「Indiegogo」が2008年に、「Kickstarter」が2009年にサービスを開始してから急速に認知度を高めていった。この2つは現在では世界の2大クラウドファンディングサイトとされている。

 クラウドファンディングサイトの基本的な役割は、何かをするための資金を集める場を提供することである。何か新しいことを形にしたい人や企業がプロジェクトと呼ばれる企画書を提示して、賛同者からの支援を募集する。その際、支援する金額に応じてプロジェクト完成後に渡されるお礼(リワード)が明記される。新製品の開発を行うプロジェクトであれば、完成した製品がリワードとして提供されるケースが多い。

 クラウドファンディングが短期間で急成長しているのは、ソーシャルメディアの普及により、モノやサービスを共有するシェアリングエコノミーの大きな波に乗ったことが挙げられる。情報通信総合研究所は、シェアリングサービスの種類を「スペースのシェア」「モノのシェア」「移動のシェア」「スキルのシェア」「お金のシェア」の5つに分類している。スペースのシェアでは民泊仲介のAirbnb、移動のシェアでは配車サービスのUberやLyftなどが有名だが、お金のシェアではKickstarterやIndiegogoが代表的なサービスといえるだろう。

「寄付型」「購入型」「投資型」の3つに分類できる

 アメリカやイギリスを中心にクラウドファンディングは進化を遂げ、今ではさまざまなタイプのプラットフォームが登場している。クラウドファンディングは、見返りを求めない「寄付型」、プロジェクトで開発された新製品や新サービスをリワードとして受け取る「購入型」、拠出した資金に応じて金銭的なリターンがある「投資型」の大きく3つに分類できる。

 KickstarterとIndiegogoは、いずれも購入型に分類される。購入型とはいっても製品の売買契約ではなく、あくまでもプロジェクトに対する支援であり、プロジェクト完了後に支援に対するリワードとして製品を受け取る契約になる。よって、何らかの理由でプロジェクトが頓挫したり、仕様変更を余儀なくされたりした場合は、当初提示されたリワードが受け取れない可能性もある。

 寄付型に特化したサイトとしては、2010年に誕生したアメリカの「GoFundMe」などが有名である。Kickstarterではプロジェクトに賛同した人がリワードを受け取らずに任意の金額を支援できるほか、Indiegogoには寄付やチャリティを対象とするカテゴリーが用意されており、購入型は寄付型の機能を一部兼ねている。

 東洋経済新報社は、投資型クラウドファンディングをさらに「融資(貸付)型」「ファンド型」「株式(エクイティ)型」の3つに区分している。

 融資型のクラウドファンディングは当初、イギリスで盛んに行われるようになり、日本でも2008年ごろからソーシャルレンディングという名称で提供されるようになった。仕組みは比較的簡単で、個人が小口の資金を貸し付けて、その資金に対する利息を受け取る。貸金業法の規制により、融資先の名称などは分からないようになっているため、共感できるプロジェクトや企業を支援したいという本来のクラウドファンディングの趣旨からは少し外れているかもしれない。

 ファンド型は、小口の資金を出資したい個人と出資先企業が匿名組合契約を結び、1年から数年後に一定比率の分配金を受け取る形が一般的である。この場合は、出資する企業を選んで投資できるので、出資する側から見れば市場で取引されている投資信託や社債に投資するのに近い。

 株式型は、2015年5月の改正金融商品取引法によって実現した新しいタイプのクラウドファンディングで、未公開のベンチャー企業の株式に投資できる。出資できるのは1社当たり年間50万円という上限があるが、投資先の株式が上場されれば大きなリターンが期待できるため早くも人気を集めている。ただし、投資回収時期が不透明な上に、投資先の倒産という大きなリスクがあるので、出資を行うには慎重な判断が求められる。

Kickstarter日本版が2017年9月にスタート

 購入型クラウドファンディングサイトとして、圧倒的に世界一の規模を誇るKickstarterが2017年9月13日に日本語サイトの運用を開始した。以前から英語版サイトに会員登録することで、日本からの参加も可能だったが、プロジェクトを主宰するには現地の住所や銀行口座などが必要で、日本企業やクリエーターが資金調達を行うにはハードルが高かった。このたび、日本の住所や銀行口座でもプロジェクトを主宰できるようになり、日本からの参加が一気に身近になった。

 日本でも既に独自の商慣習を取り入れて日本流にアレンジされたクラウドファンディングが数多くサービスを提供している。Kickstarterの日本での本格的な展開が開始されたことで、クラウドファンディングに関心を持つ個人が急増することが予想される。

 さまざまなタイプのクラウドファンディングが登場したことで、共感できる社会事業に寄付したり、これから開発される新製品を購入予約したり、リターンが見込める案件に投資したりと、「お金のシェア」ができる機会が増える。一方、新製品開発や新事業展開のための資金が必要な企業にとっては、資金調達の選択肢が増えたことを意味する。

 企業が事業のための資金を調達するという視点で見た場合、よほど社会貢献的な要素がないと寄付型は現実的ではないので、基本的には購入型か投資型が対象になる。よりハードルが低いのは、有利子負債や新株発行などを伴わない購入型の活用である。購入型のプロジェクトを上手に企画することで、資金の調達に加えて新規顧客やファンの獲得ができる可能性がある。

 小売業者がクラウドファンディングを活用して資金調達するのは、現実的な手段なのだろうか。ゲームソフトや映画作品、ARやVRなどの最新テクノロジーを使った製品の開発などは、日本人クリエーターや日本企業が多額の資金調達に成功した過去の事例もあるので、イメージしやすいかもしれない。しかし、何か新しいモノやサービスを創造することが前提になっているため、プロジェクトを発表する企業の業種や業態は偏っているようにも見える。

 次回以降、アメリカや日本の現状を見ながら、日本の小売業者がクラウドファンディングを活用できる方法を模索していきたい。