「爆買い」が終ったは間違い、流通の仕組みが変わっただけ

 あちらこちらで「爆買いは終わった」と聞こえてきますが、それは明らかな間違いです。企業トップや店長が、ここを見誤ると会社の経営方針や店舗での品揃えで大きくミスリードしてしまう可能性があるので十分注意してほしいのです。

 そして、もう1つ、間違えてはいけないのが、代購やソーシャルバイヤーの仕組みが大きく変革している現状。今年初めに中国で施行された電子商取引法の影響をしっかりとらえて、販売戦略を組む必要があるのです。

 絶対に見誤ってほしくないのが、中国市場における消費者の購入意欲は決して衰えていないということです。特に「海淘(ハイタオ)」と呼ばれている、海外商品をよく購入する消費者層は、所得も高く、トレンドに敏感で、ITリテラシーも高いのが特徴です。彼らは主に1980~90年代生まれで、中国消費のけん引役であるといえるのです。

 つまり、今、中国インバウンド市場攻略で必要なのは、出来つつある新たな流通の仕組みを理解した上で、20~30歳代の中国消費者をターゲットにした商品戦略を組み、中国にも届くプロモーション戦略を実行していくことになります。

「爆買い」が起こった2015年ごろの背景を再認識

 3~4年前の「爆買い」の正体は、中国の伝統的な流通の仕組み「代購or代理購買」によるものでした。

「代購」とは、国土が広い中国では都市部と地方では品揃えに相当な格差があり、信頼できる親戚や知人が都市部に行ったときに欲しい商品を買ってきてもらう、かつての習慣のこと。急激に伸びたスマホの普及とともにSNSでのコミュニケーションが浸透し、見知らぬ者同士が結び付いた国境も超えるこの代購の仕組みが広がったのです。その結果、海淘(本土消費者)と結び付いた在日中国人や訪日旅行者が日本の家電量販店やドラッグストアで転売目的で人気商品を大量購入し、中国の買物(モノ)消費金額が一気に伸びたのです。この背景には、“中国本土での偽物の横行”と“信頼度の高い日本商品”という構図がありました。

 ここで、もう1つ説明が必要になるのが、商品供給側の「ソーシャルバイヤー」です。

「ソーシャルバイヤー」とは、代購で日本側の購入・仕入れを担当する者を指します。数年前までは、日本の小売店(ドラッグストアや量販店など)で商品を大量に買い、SNSでつながっている顧客に紹介して転売、郵送する在日中国人を指し、一時は45万人程度いたとされていますが、電子商取引法の影響で、今年に入り激減しているといわれています。

人気の限定キャラクター商品発売日は行列、まだ転売目的バイヤーも

ソーシャルバイヤーが組織化した中華系商社に転身

 代購やソーシャルバイヤーの仕組みの急速な変革は、今年から始まった電子商取引法の施行の影響ですが、この中国政府の目的は、ずばり “個人輸入商品における輸入関税化の強化”です。

 これまでは主に国際郵便(EMS)を使い、商用でなく贈り物として個人発送した場合、中国側で関税をほぼ免除され、受け取ることができました(通常、9~15%以上かかる関税なしで人気の日本商品が手に入る代購システムやそれを取り仕切るソーシャルバイヤーが生まれたのは当然といえました)。

 日用雑貨だけでも4000億~5000億円以上あったと推測される個人輸出です。高級ブランドや家電など含めると間違いなく1兆円を超える輸入があったわけで、中国側が課税強化を図るのは当然といえるでしょう。

 電子商取引法は、ソーシャルバイヤーの脱税規制というのが実態だったわけです。

 これに対して、ソーシャルバイヤーたちは2つの対策をとりました。

(1)組織化による購買力強化を進め、川上で仕入れ

 ソーシャルバイヤーたちがとる道は「やめるか、本業としてやるか」しかありませんでした。

 現在、本業で取り組んでいるかつてのソーシャルバイヤーたちは、組織化を進め、年商200億円を超える輸出企業も出てきています。在日中華系商社です。彼らのバイイングパワーは拡大し、より安い仕入先を模索し、「小売店⇒2次問屋⇒1次問屋⇒メーカー直」と川上へ移行していったのは当然の流れといえます。個人バイヤーが小売店から購入し、アリババやタオバオサイトで海淘(中国人消費者)に販売していたBtoCtoCのビジネスモデルから、個人バイヤーが中華系商社に置き換わったBtoBtoCに代わってきているのです。

(2)関税を支払う保税区モデルが主流に

 越境ECで約9%、一般貿易では約15%の関税がかかりますが、中華系商社はこの関税を支払って輸出しています。その輸出については、大きく分けて「在庫を日本で持つか、中国で持つか」の2パターンがあります。

 日本で在庫を持った場合は、海淘(中国消費者)から受注してから、「日本⇒中国個人宅へ輸出」します。受注ごとに数種類の商品をアソート梱包し、Invoice(納品伝票)にそれぞれアイテム名、サイズ、構成物質とそれぞれの税率を算出しての輸出物流作業の手間は想像を絶するものです。

 そこで、人気の日本商品を一括で輸出して、中国の保税倉庫にストックして、中国倉庫から個人宅へ発送するビジネスモデルが生まれました。その際、重要なポイントが一般貿易可能な商品の選定です。殺虫剤や一部禁止物質の入った化粧品などでは、保税区モデルは事実上不可能。そのため、一般貿易の可否が商品選定の基準になってくるという流れの理解が必要です。

1発注ごとにピッキング・梱包・関税申告書・伝票添付・発送は相当の手間
 

最新トレンドは中国向けオリジナル日本製商品

 中華系商社は既に、次の手も打ってきています。日本メーカーにオリジナル商品を発注し出しているのです。つまり、日本製の中国向け商品です。

『日本メーカーの技術を使って高品質な商品を開発して、自分たちの費用とリスクで中国市場に向けてプロモーションを行い、価格戦略も自分たちでコントロールし始めている』。これは従来の卸売業も小売店も介在しないビジネスモデルです。

 われわれ流通事業者はこの事実に早く気付き、対策を打たなければ、以前、海外SPAが日本アパレル市場を席巻し、日本のアパレルメーカーも従来の小売店もあっという間に市場を失ったことの再現になりかねません。

 では、どうやって対策を打てばよいでしょうか。

 幸い、中国は巨大なマーケットです。また、中華系商社の従業員も若くて、意欲がある人たちがほとんどです。まずは彼らと手を組み、商品開発・生産を日本側が担当し、流通開拓と中国向けプロモーションを中華系商社が担当するのが現実的でしょう。

 既に、健康食品などからこのモデルは始まっていますが、次々とトレンドが変わる中国市場に向けての商品開発の幅は広がっていくはずです。まず自分たちの商品が輸出可能なアイテムであれば参入は可能です。ぜひ、チャレンジしてください。 

 

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