3月「イオンスタイル上麻生」(川崎市麻生区)、4月「イオンスタイル幕張ベイパーク」(千葉市美浜区)、「イオンスタイル美園三丁目」(さいたま市緑区)、そして7月には「イオンスタイル新井宿駅前」(埼玉県川口市)までと、イオンリテールは首都圏でスーパーマーケットを相次いで出店した。本来は大型店の総合スーパーが主体であったが、大型店の出店余地が狭まったことから、既存の大型店の隙間を埋め、スーパーマーケットで地域内シェアを拡大する狙いが、これにはある。

 イオンは、首都圏ではダイエー、マルエツ、カスミなど、グループのスーパーマーケット企業も店舗を展開しているが、それぞれの持ち味を生かしてお互いに切磋琢磨し、店舗網を広げていこうとしている。例えば、イオンリテールは総合スーパーを手掛けているので、総合的な品揃えが強みで、その中からスーパーマーケットに必要なカテゴリーをアレンジして導入。これは新井宿駅前では文具コーナーに反映されている。

 イオンリテールのスーパーマーケットとはどのようなものか、そしてどこに向かっていくのか、最新店舗の新井宿駅前で考えてみる。

「30代、40代ファミリー」にフォーカスし、取り込みを図る

 新井宿駅前の売場面積は964㎡、いわゆる300坪タイプの小型スーパーマーケットである。今春オープンした店舗は上麻生が1228㎡、美園三丁目が1574㎡、幕張ベイパークが2400㎡なので、この中では最も小さいが、これは敷地の大きさによるものである。上麻生はコープの退店跡だが、他は全て新設、標準化した売場レイアウトにするため、今後も新規物件での店舗展開を考えているが、いずれ撤退物件も手がける可能性も否定できない。

 新井宿駅前は埼玉高速鉄道 新井宿駅の出入り口とバスロータリーの近くに位置し、周辺には30代、40代が多く住む。立地は店舗によってそれぞれ異なるが、イオンリテールのこの4店舗に共通するのは「一定程度若いファミリーが居住し、今後も人口増が見込めるエリア」であることだ。

 総合スーパーは顧客の更新が進まずシニアが主体で、若年層の取り込みを図っているが、新設のスーパーマーケットは最初から30代、40代ファミリーにフォーカスし、取り込みを図ろうとしている。

 そのため、商品構成やサービス機能も有職女性、子育てファミリーを意識。簡便調理、安全・安心、ヘルシーなどにこだわり、利便性を高めてショートタイムショッピングができるようにしている。

 買って食べて帰る即食対応の「ここdeデリ」もイートインスペースで展開。新井宿駅前では30席を用意し、美園三丁目と同じく、ごちそう惣菜の「リワードキッチン」で温惣菜もそろえ、最大14種類を対面販売。温惣菜と冷惣菜の中から3品を選べる「よくばりごはんセット」も提供、弁当タイプも投入し、ランチや仕事帰りの夕食など店内での飲食、テイクアウトに対応する。

 これに対し、上麻生と幕張ベイパークはバイオーダーのステーキの「ガブリングステーキ」と生パスタの「ペルゴリーノ」の2ショップを導入、食事メニューを提供している。

 幕張ベイパークではサンドイッチショップ「deli Sand(デリサンド)」も投入(厨房は他のショップと共通で使用)。売場面積が広いことから輸入食品専門店「カフェランテ」で、初となるカフェも設けた。

 

 新井宿駅前ではイートインで需要の高いベーカリー(4店舗ともある)は朝7時30分から11時までモーニングセットを用意する。

 

 惣菜売場では、店内加工の「魚屋の握り寿司」や「魚屋自慢の海鮮丼」も取り扱い、弁当も充実。

 

 簡便調理では、12尺5段の壁面で魚惣菜30弱を含めて約50種類のレトルトアイテムを集積して展開・畜産では味付肉やミートデリカ強化するなど、それぞれのカテゴリーで対応を強めている。

 

 デリカで20%、生鮮(デリカを含む)で売上げの50%を見込んでおり、生鮮はデイリーユースにしっかり対応し、価格も打ち出していく。

 

 一方で売場面積が限られているため、グロサリーとデイリーではヨーグルトなど縮小するカテゴリーを決めて、取り扱いSKUを3割削減、総SKUは約9000とした。

 

 イオンリテールはこれまで、この両分野で品揃えを充実させて幅広いニーズに対応してきたが、今後、スーパーマーケットでは面積により、品数を絞り込む傾向が顕著になりそうだ。

地域対応は「限定オリジナルメニュー」や「地場野菜」で 

 地域対応は課題として取り組んできたが、ここでは限定オリジナルメニューとして、地元で愛されているご当地グルメ「鳩ケ谷ソース焼うどん」を惣菜で提供、ベーカリーでも関連商品を取り扱う(美園三丁目でも、浦和レッズの本拠地である埼玉スタジアムが近いことから、レッズ飯を展開するなど、惣菜とベーカリーで地域特性を考え商品を開発している)。

 生鮮3品では地域産品の取り組みも行っているが、地場野菜としてブランド化を目指す川口市神根地区の生産者と組んで「かねみ野菜」のコーナーを設けた(幕張ベイパークではエリアを広げて千葉市、千葉県産を取り扱っている)。

 

 こうしてマーチャンダイジング(MD)を地域に合ったものにする一方、今回は売場の空間づくりも少し手を入れ、変え、壁面と天井は色を変えてより明るいイメージに。

 さらに来店する楽しさを打ち出すため、新井宿駅前では、ぬいぐるみを置いたり、LEDで電飾したり、売場にちょっとした工夫を施している。

「ここdeデリ」が差別化の大きな武器になる

 新井宿駅前の商圏(車5分圏)には9300世帯、人口2万人が住む。この小さな商圏で毎日の食を提供し、駅前で便利なショートタイムショッピングを実現、購入頻度の高いアイテムの購入を促し、来店頻度を高めていく。

 その中で新たな需要も喚起していく役割を担うのが、人が集い、気軽に食事をし、語り合うスーペースを提供する「ここdeデリ」。ここ数年、イオンリテールはフードショップを開発し、立地や商圏、売場面積に応じて展開してきたが、これは差別化の武器という位置付け。サービス事業の黒字化のめどが立ったという中、今後も、新たなショップの登場が予定されている。

 今春から夏にかけての新店でイオンリテールのスーパーマーケットの方向性は見えてきた。今はさらにコンテンツをブラッシュアップさせ、必要な機能やMDを物件ごとにさらに付加していくこと段階。そうすることで、地域の生活者のニーズに対応し、メインに利用される店舗への道が開かれていく。