今、コンビニ5.5万店のうち何店に、ATMがあるか、知らない。少なくともセブン-イレブン2.1万店には、どの店にもATMがあるはずだ。だが現金を用いる機会が少なくなれば、すなわちキャッシュレスが当たり前になれば、それらのATMは、そのコストに対し適正な利益を上げられなくなる。ATMがコンビニにあることは、お客がコンビニに行く理由にならなくなる。

 そのとき、何台あるか知らないが、膨大な数のATMを撤去しなければならなくなる。現金を重んじる日本人は、キャッシュレスになじまない、と思うものがいるかもしれない。だが携帯、特にiPhoneに代表されるスマホは、あっという間に普及した。Suicaは、あっという間に切符に取って代わった。

 今、変化は、起きるときにはあっという間に、しかも大規模に起きる。ついこの間まで一部の人にしか普及していなかったビットコインでさえ、テレビCMが流されるまでに至った。ビットコインに比べれば、キャッシュレスという変化こそ、起きるとすれば、あっという間に、しかも大規模に起きる可能性が高い。

 そのときコンビニのATMは、大きな鉄の塊になる。というよりその変化の兆しは、むしろコンビニのレジから、始まるのではないか。というのも第1にコンビニこそ、アマゾンの存在にもかかわらず、全国に徹底的に普及し、変わり身早く、さまざまな日常生活の変化を主導してきたダイナモそのものだからである。

 しかも第2にそのコンビニは、今あらゆる自動化を先導しなければならない存在でもある。アマゾンが完全自動化の実験店を「コンビニ」で始めたのも、そのためである。なぜなら自動化が進めば、フランチャイズチェーンであるコンビニの出店は、今までよりはるかに容易になり、一挙に店数を増やすことができるからである。

 かねがねセミナーでも主張してきたように、コンビニが既に「飽和」であるという説は間違いである。確かに日本におけるコンビニの出店可能店数は、5万~6万店なのかもしれない。だがそれは、セブン-イレブンその他のコンビニチェーンの出店の不可能を意味しない。5万~6万店という許容枠?をドコのチェーンが占拠するか、はまだ決まっていない。例えば、今2.1万店のセブン-イレブンには、まだ3万~4万店出店の余地がある、と考えるべきである。もともと本来出店とは、同業他店をツブして出ること、である。

 そのことが分からないのは、流通業だけ見ているからである。他の業界では既存の企業のシェアを食って成長するのは、ごく当たり前のことである。これまで流通業には、「店舗」によって成長するしかない、というかせが掛けられていた。それをあえてかせというのは、わが国おいて「店舗」は、地価家賃建築コストのかかる、従ってスムーズにあるいはスピーディに増やすことのできない、いわば土地建物に縛られてきたメディアだからである。

 先日のセミナーでも指摘したように、流通業が「勉強熱心」な理由の1つ、しかもほとんどの人が自覚していない理由は、この店舗がスピーディに増やせないため、「勉強する時間の余裕」があったことにある。流通業には「勉強する時間の余裕」がある。いや少なくとも今までは、十分に「あった」。北海道で起きた革新は、九州にまで及ぶのに、時間がかかる。だから九州の店舗は、北海道の店舗を「勉強」することができる。

 私がその著書『流通業の選択』(商業界2015年刊)でつとに指摘したように、アマゾンには「学ぶ」ことができない。「学んで第2のアマゾンを目指す」ことは、アマゾンの好餌になることでしかないからだ。

 だがフランチャイズチェーンであり、かつ店舗規模の小さいコンビニは、「出店の時間」というそのかせの一部を、緩やかにした実例である。他の業態に比べコンビニは出店が容易である。とすれば、出店して同業他店をツブすことは、近いうちに現実になる。いや既に一部エリアでは、そうなっている。そこで例えばセブン-イレブンにとっては、店数が5万~6万店に達し、これ以上日本では出店の余地がなくなったとき、初めて「日本というエリアは、セブン-イレブンという個企業にとって、『飽和』になった」、ということになる。自動化はその出店に、拍車をかける重要な要因である。

 アマゾンの実験店が1つの例を示したように、さまざまな既存の技術を集めれば、店舗の自動化は、今以上に可能である。それは「個店経営」と矛盾するのではなく、むしろそれをより容易にさせる。自動化の徹底こそ、いまだ店舗要員がやっている「作業」を減らし「思考」を促し、「個店」の持つ真の在庫管理・発注能力を高めるからである。

 アマゾンの影響はネットより、むしろ店舗の役割を激変させ、店舗再生をもたらす。ATMのみならず、電車の切符売場がSuicaの発行・補填売場に代わったように、そして「支払い」はカードをかざすことで、自動的に行われているように、キャッシュレスになればレジは消えてなくなる。iPhoneが実現したような顔認証の技術をカスタマーカードと組み合わされれば、個人認証も可能になる。とすればコトはコンビニに限らない。他のあらゆる業態においても、同じことが実現し得る。おそらくかつて「セルフサービス」が始まったときに比すべき変化が今、起きようとしている。

 なぜならここで「自動化」の対象になるのは、人間が関わらなくてもできる部分だからである。キャッシュレスとは、レジとレジ作業とキャッシュ管理作業無用ということである。日本のスーパーマーケットが先に始め、次に米国のスーパーマーケットが追随した、店舗要員による袋詰め作業の廃止、お客自身による買物の袋詰め作業は、それが店舗要員がやらなければならない作業ではなかったことを証明した。今、セルフレジの採用が増えている理由も、それが店舗要員にとって必須の作業ではなかったことを証明しつつある。店舗要員の任務が機械に代わる「作業・労働」から、人間でなければできない、「推理・予測」に代わる。労働の質が激変する。

 誤解されているようだがAIは、人間に取って代わる「万能」の存在などではない。むしろ能力が、あるところに偏った「偏能」な存在である。名人をも打ち負かす将棋を指すことのできるAIは、同じことを囲碁においてもできるわけではない。そのAIは将棋だけ指す「偏能」である。同様に名人をも打ち負かす囲碁のAIは、将棋においても同じことができるわけではない。それは人間によって使役されるもの、である。

 必要なのは、店舗売場の作業自動化に役立つAIなのであって、人間に取って代わる「万能」なAIなどではない。だからこそその実用化は早急に進む、と予測し得る。アマゾンが図らずも付けた火は、店舗販売を激変させる燎原の火になる。

※この原稿は島田陽介先生のアドレス宛に、メールアドレスを送付した方に毎月不定期に送られる「今月の提言」から抜粋したものです。