今年10月1日より、消費税増税に伴う「軽減税率制度」が実施されます。日本初の複数税率導入に伴い、小売業・飲食業・各種サービス業を中心に会計シーンが大きく変化します。これにより店舗では、通常業務に加え、“軽減税率制度に対応したレジの購入や改修”、“価格見直しや税率設定”、“従業員への教育”などを行う必要があります。また、正しい対応ができていないと顧客満足度の低下や売上毀損につながる可能性も懸念されます。

 この連載では、消費税増税に伴う「軽減税率制度」実施の年を迎えた今、店舗の皆さまが混乱することなくスムーズに10月を迎えられるよう、レジの選び方やレシート対応、キャッシュレス活用などについて、分かりやすくお届けしてまいります。

 第5回は、消費税増税による景気対策として実施される「軽減税率制度」と「キャッシュレス・消費者還元事業」の総まとめがテーマです。いよいよ制度実施まで2カ月を切り、全国各地では商工会主催の勉強会やセミナーの開催件数も増え、準備に急ぐ店舗も増えてきています。今回は今、確認しておきたい各制度の要点を、まとめて解説していきます。

「軽減税率制度」総まとめ

 ここでは、「軽減税率制度」のポイントについて紹介します。ポイントは1)制度実施によって変わること、2)よくある間違い、3)店舗が対応すること、4)対象店舗への国からの補助金、5)まずやるべきこと――の5つとなります。

1)制度実施によって変わること

 10月より、消費税の税率が8%から10%へアップし、同時に増税後の景気対策の一環として「軽減税率制度」が実施され、一部の品目については税率が8%据え置きとなります。

 税率8%の対象品目は次の通りです。

(1)酒類および外食を除く飲食料品

(2)週2回以上の日刊新聞の定期購読料

資料:政府広報オンラインより引用

2)よくある間違い ―消費税増税・軽減税率制度は全ての事業者の方に影響ー

 8%(軽減税率)と10%(標準税率)の対象品目を扱っていなければ、つまり8%(軽減税率)や10%(標準税率)しか扱っていなければ、従来通りの会計で対応できるのでは?――そう思われた方も少なくないでしょう。ところが、実際はそうではありません。

 取り扱いがなくとも全ての事業者の方に対し「税率ごとの区分経理」や「仕入れなどに8%(軽減税率)対象項目があれば、帳簿への計算・記載」などが必要となるからです。こうした“よくある間違い”について、3つの事例を紹介します。

・よくある間違い① -商品数が少ない小売店などー

 商品数少ないから会計は簡単。今まで通り、電卓で大丈夫だよね。

【正解】業種や商品数にかかわらず、税率ごとに分けて計算する必要があったり、レシートや請求書に軽減税率の対象品目と税率ごとの合計金額を記載する必要があります。

・よくある間違い② ー八百屋や精肉店・鮮魚店などー

 うちは八百屋でお酒以外の食品しか売らないから、今まで通り、全部8%(軽減税率)でいいよね。

【正解】野菜や果物のみで酒類を扱わないような青果店などの場合、一見8%(軽減税率)適用の商品のみのように見えます。しかし野菜を包むラップ・果物を載せるトレーやレジ袋などは10%(標準税率)であり、 仕入れの税額計算の際には野菜や果物の食品と包装材とで分けて計算する必要があります。

・よくある間違い③ ー美容室・マッサージ店などー

 美容室で軽減税率の対象品目扱わないし、10%(標準税率)だけだから関係ないかな。

【正解】美容室やマッサージ店なども一見10%(標準税率)のみのサービスに思えますが、例えばお客さまに提供するお茶やコーヒー、お菓子など、これらの 飲食料品を経費として計上するときに、税率ごとに分けて管理する必要があります。

3)店舗が対応すること -軽減税率制度に対応したレジの導入が必須にー

 それでは、実際の店舗業務にはどのような影響を及ぼすのでしょうか。大きくは、会計時のオペレーションの変更です。まず、10%(標準税率)と8%(軽減税率)の両方が混在する複数税率の店舗の場合、会計手順が増えることになります。

 ただし、軽減税率制度に対応したレジを導入しているか、していないか、で大きく変わってきます。軽減税率制度に対応したレジを導入しなかった場合、例えば電卓のみで会計を行う場合を例に見てみましょう。

〔電卓で会計を行う青果店の会計手順〕

 

〈現行制度での会計手順〉

① 会計品目の金額を合計

② 8%分の税込額を計算

〈軽減税率制度導入後の会計手順〉

① 税率8%と10%の品目に区分けする

② 税率8%品目の金額を合計

③ 8%分の税込額を計算

④ 税率10%品目の金額合計

⑤ 10%分の税込額を計算

⑥ ③と⑤を合計

 現行制度に比べると、軽減税率制度導入後の会計手順の煩雑さは明白です。煩雑な計算になるほど、会計処理に時間がかかり、お客さまを待たせることになりかねません。

 また、レシートや領収書に税率ごとの内訳金額を明記する必要があり、毎日の売上げや仕入れ(経費)は税率ごとに区分けして帳簿上で管理しなければならなくなります。これらの対応を怠ったり、間違えたりすると、確定申告で“申告漏れ”ということにもなりかねません。

 軽減税率に対応したレジを導入することで、商品を選択すれば税率ごとの集計も自動的にやってくれるため合計を計算する手間が減ってスムーズな会計を実現、レシート表記もルールにのっとった記載になります。そのため、店舗の運営業務において軽減税率対応レジの導入は必須といえます。

 業種別の軽減税率制度対応事項を整理したフローチャートも参考に、ご自分のお店がどこまでの対応が必要なのか確認をしてみてください。

〔業種別の軽減税率対応フローチャート〕

※事業者の影響について詳しくは「政府広報オンライン」をご覧ください。

4)対象店舗への国からの補助金 ―「軽減税率対策補助金」とは―

 国は、複数税率への対応が必要となる中小企業・小規模事業者等に対し、指定する対象レジをスムーズに導入できるよう、「軽減税率対策補助金」制度を実施しています。

 例えば、「Airレジ」は軽減税率対策補助金の対象となっており、iPadは1/2、周辺機器は1/4の価格で購入でき、費用を抑えて導入することができます。

 また、本補助金の対象事業者は「中小企業支援法に規定する中小企業者」かつ、「軽減税率対象の商品を扱うことが前提」となります。

※軽減税率対策補助金に関する詳細は「軽減税率対策補助金事務局ホームページ」をご覧ください。

5)まずやるべきこと ー補助金適用のためには2019年9月末までの対象レジ導入が必須条件―

 まずは、「軽減税率制度」の実施に伴い、店舗ではどのような対応が必要になるのか確認しましょう。

 その上で、自分の店舗が軽減税率対策補助金の対象になるか否かを確認、もし対象になるのであれば補助金対象のレジ導入も検討してみるのも良いでしょう。補助金対象のレジを選ぶ場合は、2019年9月30日までに導入することが条件となっておりますので注意しましょう。