ビジネスの激しい風雨から守る「温室」

——こうして出資を受けたベンチャー企業が次々と成功している訳ですね。

洪:いいえ、資金面だけでなく、ある程度の力をつけるまで守ってあげることも必要です。

 起業家は植物の種のようなもので、芽を出し、花を咲かせ、実りへとプロセスを経験していくものです。芽を出した途端、強風や豪雨がやってきて一瞬で全てダメになることもあります。それがビジネスの残酷さで、生きるか死ぬかの世界です。

 そこで「ミー・エコシステム」は「温室」となります。資金がなければ提供します。ユーザーがいなければ、シャオミのファンを分け与えます。販売ルートがなければ、シャオミの店舗を利用できます。サプライチェーンがなければ、私たちの取引先を招いて、一緒に交渉することも可能です。

 巨大な「温室」で育て、ある程度大きく成長したら、外の世界でさらに発展させます。そうすると多少の風雨があっても耐えられます。一般的には5億、10億元の売上げがあれば中規模の企業として組織が整備され、ルートやプロセスが安定しているとみなし、自分たちの力で開拓させます。この仕組みがベンチャー育成で高い成功率につながっている最大の理由です。

——エンジェル投資を受けた後に失敗する企業が多いようですが。

洪:余計なプレッシャーによるものだと思います。消費者のことも投資家のことも気にしていると身動きがとれなくなります。投資家は自分の成功体験に基づいて指導もしてきますが、起業という不確定な環境では、アドバイスも柔軟であるべきです。

 そして、じっくりと待つ姿勢も大切です。人材と製品の成長は安定したものではありません。2年間の開発期間を経て、3年目に爆発的に成長するかもしれません。しかし、この2年の時間を待てなければ台無しです。

 だから、回収目的の投資として見るか、インキュベーション(孵化)として見るかで結果は天と地ほど違ってきます。起業家とは共に戦い勝つという意識が不可欠なのです。

 起業家を金儲けのマシンだと思ったらうまくいくものもいきません。またKPIなどの数字を提示するのも完成された大企業のやり方で、ベンチャーには向きません。

 育てたいなら余計なプレッシャーを与えないという当然のことをやるだけで、何も難しいことはないはず。でもこの常識が今の時代、最も欠けていると思います。

 ちなみに私たちはどの出資先に対しても「5億円の売上げを実現しなさい」みたいなノルマは課しません。売上げとは予測不可能なのに、数字だけを突きつけても意味がないからです。方向性に問題がないと判断したら、あとは能力を信じて自由にやりなさいと伝えます。起業とは不確定性のあること。投資の論理を、特に技術領域の起業に当てはめることは問題があると思います。

 

 

(次回予告)第2回「製品に求めるべき価値、IoT製品の魅力とは」