出資はしても口は出さない

——「ミー・エコシステム」は斬新な発想だったと思いますが、最初からうまくいったのでしょうか?

洪:最初は社内ベンチャーができないかと試行錯誤もしました。モバイルバッテリーを製品とした起業チームを作りましたが、うまくいきませんでした。いくつかのチームで失敗した後、たまたま社外のチームにモバイルバッテリー事業を任せてみたら、これが見事に成功。そこからエコシステム構想が一気に実現しました。

——「ミー・エコシステム」の企業には出資のみで買収は行わない点も独特ですね。

洪:最初の企業がそれでうまくいったからです。社内の人間で失敗した原因を探ったところ、それはリーダーのモチベーションにあると判断しました。社内チームのリーダーは会社員であって起業家ではない。起業成功のためには起業家精神が必須です。しかも、筆頭株主でなければこの精神は持ち得ません。「自分の会社だから、自分が先頭に立って努力する」。この意識がポイントです。誰でも一番になりたい、これは人間の本能的欲求。大きな組織の歯車ではこの欲求は満たせません。本当は誰でも「価値ある物」を創造して自分を認めてもらいたいはずです。だから、出資に留めて自主性を持たせたのです。資金やものづくりのノウハウ、販売ルートは提供しますが、経営には口出しはしません。

——企業への投資を決める際の判断基準はなんですか?

洪:主な選定基準は4つあります。1つは、一般市民の生活で広く使われている製品を作っていることです。生活に不可欠であればあるほど、大量に生産でき、会社の売上げも見込めます。

 2つ目には、ユーザーが不便を感じている分野です。エコシステム内には「漢図科技」という企業がありますが、家庭用プリンターを便利にしたいという思いから立ち上げました。

 例えば、中国の学校の宿題は、先生がSNSで生徒の親のスマホに送ります。これを親はスマホからPCにダウンロードして、PCとプリンターをつないでやっと印刷できます。プリンターとスマホが直接つながればこんな面倒ありませんよね。ここからヒントを得て、スマホで撮った写真を直接印刷できるプリンターを作り、ヒットしました。

 3つ目には、組織の持つ能力を見ています。例えば、もともとiPadやPCなど複雑な電子機器を作っている会社に、モバイルバッテリーを作ってもらいます。能力に余裕がないと高品質な製品はできないのです。

 4つ目は、価値観の一致です。われわれはこれを最も重視しています。人に喜ばれる製品をリーズナブルな価格で提供する。価値観の合わない企業はパートナーにしません。