茨城県石岡市にあるユニオンファームの農場。JGAPの導入にかかるコストは団体認証などの手法を使えば数万円程度で済むという。

 2020年に行われる東京オリンピック・パラリンピック競技大会。その選手村で使用する食材の調達基準に「GAP(Good Agricultural Practice、農業生産工程管理)」認証制度が採用され、一躍脚光を浴びている。

 GAPとは、農業における食品安全、環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の取り組みのこと。欧州ではグローバルGAPがメジャーであり、日本ではJGAPの他、各都道府県やJAが運営するものなどがある。

 JGAPの管理基準、栽培方法、そして導入によってどのような効果が得られるのか。JGAPを取得後、野菜の売上げが前年比150%増という農業生産法人ユニオンファームの農場がある茨城県小美玉市を訪れた。

JGAP取得で食品安全と労働安全を実現するユニオンファーム

ハウスの中での収穫作業。異物混入を防ぐために手袋は青色。

 ユニオンファームは茨城県小美玉市の農業法人。2000年に企業参入として農業を開始。出身母体は農業資材販売のアイアグリ。主力は創業時から取り組んでいる有機野菜。全ての農場をJGAPで管理、生産している。有機野菜部門は4.5ヘクタール(ha、2016年現在)、20年には6.5haに広げる予定だ。

 同社の玉造洋祐社長は「持続可能な農業を目指し、環境へも配慮するJGAPを経営の礎として取り入れた。工程管理に関する理解が高まるのがGAPの最大の成果」と語る。GAPの導入で、生産における多くの課題解決、業務改善が図れるメリットがあるという。

イオン、コストコでもGAP取得農産物の取り扱いを拡大

 同社の第三農場には14棟のビニールハウスがある。農産物の安全のうち、残留農薬の基準値違反が一番大きな事故につながる。化学農薬は使わないため、栽培中にそれらの事故は起きにくい。しかし、道路を挟んですぐに別の生産者の農場がある。化学農薬はミストで撒くと風と共に飛んでくることがある。「農薬のドリフト(飛散)が日本で起きている残留農薬基準違反の原因の第一位」とは、GAPの指導を担当するアジアGAP総合研究所の武田泰明専務理事。

 JGAPにはそれを防ぐ項目がある。ユニオンファームでは隣の農場の管理者とコミュニケーションを取り、風がある時に農薬を散布しない、散布するときはビニールハウスの窓を閉めるなどの対策を取っている。

 GAPの導入に際しては、まずリスクアセスメント(リスクの評価)作業から開始する。農場に現在ある課題を精査し、それに対してどのような対策を取り、継続的に改善していくのか。リスクアセスメントの表は60ページ近くにわたる。こうした基準を日々守り、改善していくことが農作物の安全性を担保する。

5度で管理された収穫物の保管庫。出荷記録(出荷・販売先、出荷日、品名、数量、ロット)、収穫記録(ロット、品名、収穫日、数量、圃場)などを残しトレサビリティを万全にしている。

 農産物の安全・安心に対する消費者の意識は高まる一方だ。流通業でも大手を中心にGAP認証を取得した野菜の取り扱いを拡大する傾向が見られる。

 イオンではプライベートブランドの農産物の調達基準について、2020年にGFSI(※)ベースの適正農業規範(GAP)管理の100%実施を目指す。

 コストコホールセールジャパンでも21年以降、全ての青果物にJGAPまたはGFSI承認スキーム認証を取得した農場からの供給を目指す。

 安全・安心と言葉で言うのはたやすいが、その根拠をどこに求めるのか。JGAP認証等、明らかな担保を得ることが信頼の証左となる。

(※ GFSI(Global Food Safety Initiative):世界食品安全イニシアチブ…グローバルに展開する小売業、食品メーカーで構成するTCGF(The Consumer Goods Forum)傘下の食品安全の推進団体。

 

〈コラム〉備品コストも低減

 例えば作業に使うハサミの管理。当初は個人で管理していたが、休日前などに家に持ち帰ると管理が及ばないリスクがあった。その際に家族が家庭菜園で使う農薬の袋を切るのに使ったりすれば高濃度の農薬が付着、検出される危険がある。そこで社内の従業員から見える場所で個人の名前を付けて管理するように変更。結果、各自がハサミをきれいに扱うようになり、支給するハサミの数が減少。結果、コストも削減できた。GAP取得を通じて経営改善に結びついた一例だ。