作業服・作業用品のフランチャイズチェーン(FC)をロードサイド立地で展開するワークマン(群馬県伊勢崎市)の快進撃が続いている。昨年秋に立ち上げたアウトドア・スポーツウエアなど一般客も意識した新業態「ワークマンプラス」が絶好調で、既存店にも波及効果を及ぼしているためだ。そんなさなかの4月に新社長に就任した小濱英之氏にこれからの成長戦略について聞いた。

(聞き手/『販売革新』編集長・西岡 克)

PROFILE こはま ひでゆき:1969年7月8日群馬県沼田市生まれ。高崎商科短期大学商学科卒業後、90年3月ワークマンに入社。2009年5月商事部長、10年1月商品部第二部長兼セーフティグッズ担当、11年1月商品部海外商品部長、14年6月役員待遇商品部海外商品部長、15年1月役員待遇商品部長、16年6月執行役員商品部長、17年3月執行役員スーパーバイズ部長、17年6月取締役スーパーバイズ部長。19年4月社長に就任。趣味は釣り。
photo/杉田容子

――新社長としての抱負は。

 小濱:「ワークマンプラス」が非常に好調なので、これを確実なものとするために「新たな標準づくり」をしていきたいと思います。今までは1店当たり年間1億円を売る仕組みでしたが、今は1.5億円、最終的には2億円を目指して、陳列の方法も商品の持ち方も店舗オペレーションも変え、新たな標準化をつくっていこうと。そして新しい土台づくりをすることが私に与えられた仕事だと思っています。

最初から新業態の開発ありきではなかった

――前期の2019年3月期は新業態「ワークマンプラス」を開発し、低価格・高機能の真空マーケットを開拓した。既存店の売上げは14.0%伸び、この5月も好調で20カ月連続で前年を上回った。地域による差は。

 小濱:多少はあります。西日本はすごく好調です。特に好調なのは九州など新たに店舗展開を始めた地域です。お客さまに昔のイメージがあまり強く付いていない地域であり、一般のお客さまが増えています。

――新業態の開発経緯は。

 小濱:日本はプロのお客さま、技能労働者が減ってきているので、5~10年後を見たときに、作業服の「ワークマン」では出店にも限界があり、客数増加にも限界があります。だから新業態や新フォーマットを開発しようと。そこで5年前から「中期業態変革ビジョン」をスタートしました。

 ただ最初から新業態を開発しようとしたのではなく、当初はプライベートブランド(PB)を開発して、競合店と差別化し、客数を増やそうと考えました。しかしさらに売上げを上げるには、客層を拡大していくしかないという結論に至ったのです。

 まずはプロのお客さまが休日に買えるように、作業服に加えてアウトドアやスポーツの商品を開発していったのです。同時に一緒に来店される女性客の商品を増やしました。

 作業服は会社支給ではなく個人の購入も増え、若い方を中心にスタイリッシュ化が進み、カジュアルとワークの垣根がなくなりつつあります。

 またSNS(交流サイト)で防水防寒のPB「イージス」のかっぱを「冬にバイクに乗るときに着るとすごく暖かくていい」と発信をしてくれる人が増え、サラリーマン客も増えてきたので、作業以外で使えるものをブランド化しようということになりました。

 そこでアウトドアの「フィールドコア」、スポーツの「ファインドアウト」、レインスーツの「イージス」という3つのPBを柱に立てました。

 作業服のイメージを変えて客層を広げるために、銀座に旗艦店を出店する案もありましたが、銀座はブランドを目当てに来る方が多い。だったら集客力が高く、家族連れや女性客が多いショッピングセンター(SC)にしようと。それが「ワークマンプラス」の出店につながっていったのです。

――そして昨年9月にららぽーと立川立飛に「ワークマンプラス」の1号店を出店した。新業態の現状は。

 小濱:5月末現在で21店になりましたが、売れ行きは想像よりはるかにいいです。立川立飛店の当初目標は1.2億円でした。18年3月期の既存店1店当たりの平均年商は9991万円だったので、そう予測したのですが、ふたを開けたら大成功で、結局目標を3億円に上方修正しました。効果は他の店にも波及し、19年3月期の既存店年商は1億1251万円になりました。

――タイプ別の内訳は。

 小濱:5月末現在でSC出店は4店、ロードサイドへの出店が9店、既存店のスクラップ&ビルドで「ワークマン」から業態転換したのが8店です。

 スクラップ&ビルドは1億円に届かず伸び悩んでいる店を対象にしています。「ワークマンプラス」に改装した店の品揃えは現在、店の左半分が一般のお客さまでも購入してもらえるような商品、右側はプロのお客さま向けの商品で固めています。このスタイルが全国全地区で有効なのかを分析しながら新しい標準化を進めています。

――般客の割合は。

 小濱:SC店は一般客がすごく多く、半分以上が女性客です。既存店でも4割近くが女性客です。

主力の国内ベンダーは発注なしで納品する

――世界最大のスポーツ用品のSPA(製造小売業)チェーンでフランス本社のデカトロンを意識している。

 小濱:PB開発の過程で中国で参考になる店を探していたところ、現地の社員から「デカトロンという店の商品がデザインやカラーリングがおしゃれだ」と聞いたので、まずは商品部が中国出張時に店を視察しました。

――デカトロンが3月に阪急西宮ガーデンズ(兵庫県)に1号店を開いたとき、ワークマンは「デカトロンを迎え撃つ」「西宮戦争」と気勢を上げていたが、実際に店を見るとそんなにバッティングはしないと感じた。あれはワークマンの情報戦略なのでは。

 小濱:低価格、高機能という市場は同じですが、デカトロンの方がより専門的なスポーツ志向で、衣料品だけでなくグッズに力を入れているので、正面からバッティングはしないかもしれません。ただ「ベストプライス」と彼らが名付ける核商品は当社とも近く、やはりぶつかるかなと。

――前期からネット販売を始めた。

 小濱:前々期から始めたのですが、今からアマゾンなどに対抗するのは無理なので、ネットに定価で負けない低価格の作業服「G-ネクスト」シリーズという商品を立ち上げて、前期から本格化しました。店舗受け取りもしており、ネット販売の68%を占めています。ネットのお客さまを店舗に送客したいという狙いにも合致します。

――基本的なビジネスモデルは。

 小濱:現在の標準店は敷地面積が300坪、売場面積は100坪で1700アイテムを展開。売上げに応じて収入が増える通常のA契約の場合、初期投資は350万円。平均年商は1億1000万円。1億円の売上げなら店長の年収は1000万~1200万円になります。

 コンビニの場合はオーナーが店を建てる必要がありますが、当社は土地も店も本部で用意します。

――ベンダーは今何社ある。

 小濱:約150社です。主力の31社の国内ベンダーとはオンラインでつながっていて、需要予測に基づいて当社から毎週商品ごとの希望納品数を示し、それを見てベンダーが最終決定、自主納品してもらう仕組みにしています。31社にはセンターからの出荷情報やPOS(販売時点情報管理)データを全て開示しています。

――エブリデーロープライスでチラシは年4回だけしか打たない。また原価率は63%と非常に高い。

 小濱:値下げ率は1~2%くらいでしょうか。低価格が武器なので、例えばボリュームディスカウントで製品原価を下げることができたら、売価にも還元しています。

――PB比率は19年3月期で39.7%。工場との直接取引か。

 小濱:工場との直接取引もあるし、中国の貿易公司や日本の商社を通すこともあります。多いのは中国の貿易公司です。これは中国の繊維商社のようなもので、生地メーカーであり、染色や縫製の協力工場を多く抱えています。

 例えば980円の作業ズボンのように1アイテムで何十万点も売れる商品がある。一工場で生産するのは無理なので、何工場かに分けるのですが、協力工場を擁する貿易公司に品質が一定になるように管理してもらうのです。

――現在の生産国は。

 小濱:70%近くはまだ中国です。最近はミャンマーとカンボジア、ベトナムが増えています。

標準的な売場面積を120坪に拡大する検討も

――今後の経営戦略は。

 小濱:「ワークマンプラス」の出店強化です。新規出店とスクラップ&ビルド、改装の3つを強化します。商品力も強化します。PBの主力3ブランド、そして「G-ネクスト」シリーズの強化です。客層が広がっているので、再度基本に立ち返って品質も強化していきます。それと加盟店支援の強化。需要予測発注や法人営業のバックアップです。

――今後は全て「ワークマンプラス」で出店する。2025年1000店体制を掲げているが、年間出店ペースは。

4月にオープンした「ワークマンプラス」ららぽーと湘南平塚店。同社は高機能・低価格ウエアで市場シェア25%を取ることを長期的な目標に掲げている。

 小濱:年間30~40店ペースになると思いますが、自店競合も考えて出店は吟味します。ただ好調なのでもっと少ない商圏人口で成り立つのではないかと検討しています。

 出店地域は人口が多く、一般客も多い東京や神奈川、千葉、大阪、福岡の地域でドミナント化を進めます。「ワークマンプラス」の効果がまだ薄い北関東と東北にも出店します。立地はロードサイドが中心です。SCへの出店は広告宣伝の役割なので、現在4店あるのを10店程度まで拡大します。

――売場面積についての考え方は。

 小濱:正直難しいところで、将来的にFC加盟店の1店当たりの売上高を2億円に引き上げるのに、現在の100坪の店でいいのかと。6月27日に120坪の新潟山木戸店を改装し「ワークマンプラス」に転換しますが、ここで120坪の店の実験をします。

 一方で、100坪の店でどうやって在庫を持ち、魅力的な見せ方ができるかという実験も進めています。

――フォーマットの小商圏化について。土屋哲雄常務(現専務)は「今基本商圏は10万人だが、一般客を取り込めば5万人に縮小できる。女性客を呼び込めれば3万人で店が成立する。そうすれば国内で3000店を出店できるはずだ」と言っていた。

 小濱:まだ仮説段階です。それができるのは都市部であり、出店スペースは限られてきます。東京を中心とした首都圏は小型の店になる。1店当たり売上げ2億円を目指すとなると限られた店舗内で商品をどう持つか、どう圧縮陳列をするかが問題になります。「ワークマンプラス」では壁面にパネルを置いて、その裏をストック置き場にするという実験も進めています。

――商品力の強化だが、PB比率は今期50%を超えそうだ。

 小濱:PB比率は50%くらいがいいのかなと。ベンダーの商品開発力も十分強いし、PBは商品の改廃をしながら強力にしていこうと考えています。

――品質の強化の具体策は。

 小濱:糸処理や縫製不良のチェックなど仕上げを厳重にしていきたいと考えています。品質管理部は現在5人態勢ですが増強も考えています。

 

 
 
 

※本記事は『販売革新』2019年7月号に掲載されたものです。内容は取材当時のものです。

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