お客さまが突然クレーマーになる可能性も?

「新聞は軽減税率が採用されて消費税率は8%なのに、生理用品やオムツはどうして軽減税率の対象外なのか?」という疑問の声がネット上で話題になりました。「今ごろ何言ってるんだ!そんなことは何年も前に決まっていたじゃないか」と言う人もいるでしょうが、小売業はそうはいきません。

 ネットの世界のように「それはおかしい」とか「そんなこと知らなかったのか」で済めばいいのですが、これが店舗で起きると、このお客さまは突然クレーマーに変身しかねません。しかも、こうした勘違いの理由に「生活必需品は軽減税率の対象のはずだ」という思い込みがあります。

「お客さま、これは法律で決まっていることですから」で納得してもらえるなら、単なる質問に答えただけで事は収まります。ところが「生活必需品が対象じゃないか、お宅(店)が間違っているんじゃないか」となるとやっかいです。

 そうなると「軽減税率の対象は生活必需品ではなく、食品表示法で飲食料品と規定されているものです」といったことから説明しなければなりません。「食品表示法ってなんだ?」となってしまうと、もう店にとっては非常にやっかいなクレーマーです。

「生理用品やオムツなら簡単に説明できるから、たいしたことにはならない」かもしれませんが、例えばみりんの場合はどうでしょう。こんなやり取りも考えられます。

お客さま:どうしてみりんが10%なんだ。

店側:お酒は、軽減税率の対象外なので10%になります。

お客さま:いや、みりんは調味料じゃないか。

店側:いえ、法律で、みりんは酒類に分類されています。

お客さま:みりんもみりん風調味料も、調味料じゃないか。

店側:みりん風調味料は直接飲めないのですが、みりんは飲むことができます。

お客さま:だけど、みりんなんか飲まないぞ。うちは調味料として使っている。

店側:飲むか飲まないかの問題ではないのです。ワインも飲むだけでなく調味料として料理に使うこともありますが、酒類なので10%の税率になります。

お客さま:だったらみりんも、ワインと同じように酒コーナーに置くべきじゃないか。調味料のコーナーに置くから分からなくなるんだ。

 さあ、どうしたらよいのでしょう。どちらに陳列するにしても、分かりやすく目立つようにPOPなどで知らせるしかありません。もちろん、みりんとみりん風調味料だけの問題ではありませんよね。何が8%で、何が10%なのか、お客さまに分かりやすい掲示や説明が必要になります。

 こうしたお客さまは、ほんの一握りでしょうが、100人に1人、1000人に1人であっても対応しなければなりません。

 いよいよ消費税増税・軽減税率制度がスタートします。おそらく数カ月、長くて1年ほど経てば、こうしたお客さまはほとんどいなくなるでしょう。

 しかし、飲食料品は増税対象ではないといっても、当然買い控えも起きるでしょう。食品業界・流通業界にとっては、これから1年で一番稼げる時期を迎えます。売るのに全精力をつぎ込みたいのに、お客さまに軽減税率の説明もしなければなりません。

 小売店の場合、多くがPOSレジを採用しているので、レジ段階でのクレームはほとんどないでしょう。レシートを見た後か売場でのやりとりになるはずです。どちらにしても法律の話なので、パートタイマーやアルバイトに説明させるのは酷でしょう。

 クレーマー対応に正解はありません。お客さまは、みんな違います。どんな言い方をすれば納得してもらえるのかは分かりません。納得しない方もいるでしょう。1つだけ言えるのは、誠心誠意、丁寧に説明することです。