著者の松田真紀先生が「スーパーマーケットの健康ツアー」を行いました。売場を回り、販売する商品の栄養素などについて解説。

 昭和45年に静岡市で食肉小売店として創業した(株)タカラ・エムシーは、静岡県内を中心に神奈川県、愛知県に「フードマーケット マム」を46店舗、展開している。そのうちの「フードマーケット マム桃里店」は近くには沼津市の基幹病院である市立病院や小中学校、特養ホームなどが並ぶ静かな住宅街の側にあり、平屋建てのホームセンター「カインズ沼津店」にテナント出店。両店は店舗内でつながっており、買物に訪れた人たちには便利で、かつバリアフリー的観点でも優しい店舗、車いすで買物をするお客さんも多い。

 その店舗で7月7日(日曜日)、「スーパーマーケットの健康ツアー」が行われた。

始まりは「連載記事の内容をPOPにしたい」

 これは売っている食材を使って、店内に調理実演&試食ブースを設け、「食材が健康にどうつながっていくのか?」などを、本サイトでもおなじみの“走る管理栄養士”こと、管理栄養士・抗加齢医学会認定指導士の松田真紀先生が分かりやすく解説して店内を巡回するという新しい試みだ。

 元々は(株)タカラ・エムシーの総合戦略部の朝比奈好美さんが、本サイトにある松田先生の連載記事を気に入り、「これを使ってPOPを作り、店内に掲示してもいいでしょうか?」と本サイト編集長にメールを送ったのがきっかけ。

このPOPを最初につけたとき、売場欠品が起こるほど、蒸し豆が売れたという。
松田先生の原稿をもとに作成されたPOPはスーパーマーケットの主力商品にも。

 朝比奈さんが作ったPOPは桃里店の商品棚のあちこちに掲示され、それを付けると、売上げがグ~ンと伸びるようになった。そこから「では取材を」「せっかくならイベントを」「それなら松田先生ご本人にご登場願って」と、トントン拍子に話が進んで、今回の開催の運びとなったのだ。

POPは持ち帰れるものを店舗出入り口のそばに置いている。

 7日当日は、明け方まで降っていた雨が上がって、曇りのち晴れ。家に閉じこもっていた人たちが次々繰り出し始めた午前11時に、いよいよ第1回の「スーパーマーケットの健康ツアー」がスタート!

1つ目の調理&試食は「ズッキーニ」

「皆さん、こんにちは。管理栄養士の松田真紀です。今日はこちらで健康ツアーを行います。まずはこちらズッキーニを紹介します。ズッキーニはウリ科の一種、カボチャの仲間で、生食もオッケーです。皮ごと食べられて夏にうってつけの野菜なんですよ」

 
 

 松田先生がマイク片手に話を始めるや、買物に訪れたお客さんたちが「何だ何だ?」と、ちょっとビックリしたようにのぞき込んでいく。その視線の先には、お店入り口に設置された1つ目の食材紹介(試食)ブースがあり、ズッキーニがぎっしりと積まれていた。その横で生のズッキーニをしょうゆとショウガに漬けた「ズッキーニのしょうゆ漬け」と、ズッキーニと豚肉を炒めてショウガとポン酢で味付けした「ズッキーニと豚肉のしょうがポン酢」の2品の調理&試食が行われ、プ~ンとポン酢のいい匂いが漂う。

試食の調理は総合戦略部の朝比奈好美さんが担当。
調理に使うホットプレートは隣のカインズで購入。

新しい発見にワクワク、数本買い求める人も!

 最初は見るだけだったのが、タカラ・エムシーの社員の声掛けで足を止めて試食に手を伸ばすお客さんも徐々に増えて、話を聞いてみると、

「これ、生なの? おいしいわ! おしょうゆとショウガだけなの? 家でもやってみるわ」

「ズッキーニって生で食べられるの? さわやか! いい!」と、興奮気味に言い、そのままズッキーニを2本、3本と買物かごに入れていく。『ズッキーニ=イタリアン=火を通してパスタに』といったイメージが強いだけに、生で食べる食感の良さや爽やかな味わいに、試食をした人たちは新しい発見にワクワクした様子。豚肉炒めの方も「簡単でおいしい! ポン酢と相性がいい」「手軽で子供でも作れる!」と大好評だった。

 さらには、「初めて食べるよ、ズッキーニっての、おいしいね」と、生まれて初めてズッキーニを食べたという70代男性も! 若い方でもやはり「生まれて初めてズッキーニ食べた」とおっしゃる方が何人もいて、試食が食の初体験の場になり、食の世界が広がるきっかけになっていることに、タカラ・エムシーのイベントスタッフ、そして松田先生ご自身も感動していた。

地元でも多く作られている野菜、皆さんに食べてもらいたい

入谷英二青果部部長は試食コーナーを1つ担当するなど大活躍。

 今回のイベントにズッキーニを選んだのは、タカラ・エムシーの入谷英二青果部部長で、「ズッキーニはここ2、3年で知名度は上がりましたが、まだまだなじみのない野菜です。地元の静岡や近隣の長野でも多く作られていますから、ぜひ皆さんに食べてもらいたいと思って選びました。今日は食べ方を知って、実際に味わってもらえたのがいいです。次に、こうしたイベントをやるとしたら、ケールやパクチーといった野菜を取り上げてみたいですね」と、手応えを感じていた。

 さて、松田先生はマイク片手に軽やかに店内の青果売場を回り、小玉スイカが4つくくられて980円!なんていう産地ならではの売り方に感激したり、スーパーマーケットには珍しい水槽に伊勢海老が泳ぐのに驚いたり、太刀魚やヒラマサといったお魚が1尾そのまま「丸で」売られている沼津ならではの“家で魚をさばくのが当たり前”な「魚の国」ぶりに驚嘆したりしながら、そうした食材にも健康効果の解説をしつつ、次の試食ブースへ。

試食への手がなかなか伸びなかったが……

 今度はゆでたそうめんを冷やしてクルクルっと丸め、その上にカツオのタタキとミョウガ、ショウガの甘酢漬けなどを乗せた「春カツオの一口そうめん」だ。

「カツオはマグロに負けないくらいのタンパク質の王様で、ダイエットビタミンのB群が豊富。低脂肪でダイエットにもいいんです。特に春カツオは脂肪が少ないんですよ。それをゆでて冷やしたそうめんの上に乗せています。そうめんは冷やすと血糖値の上昇を抑えるレジスタントスターチが増えるんです。晩酌のお供にもいいですし、お酒の締めにラーメンよりも、お薦めしますよ!」

 

 先生がブース前で話し始めると、お客さんたちはチラチラと目をやりながら、おいしそうな「春カツオの一口そうめん」にはなかなか手を伸ばさない。店舗の従業員の方に伺うと、このお店に来るお客さんは試食など手を取らない方が多いんだとか。ところが、小学生の男の子の兄弟2人がやって来て手を伸ばして試食。「おいしい! 僕、魚が大好きなんです!」とニコニコ高らかに宣言すると、そこからはズッキーニのブースと同じ、次々お客さんが手を伸ばし、春カツオそうめんに舌鼓を打つ。「そうめんとカツオって合うんですね!」と、ここでも皆さん、新しい発見に目を輝かせていた。

鮮魚の部門チーフの方にもインタビュー。その様子を見守る桜井敏樹沼津営業部営業部長(右)。

七夕の日曜日なので、お酒とのマリアージュも提案

 

 また今回は食材の料理法だけでなく、それに合うお酒も紹介し、カツオには「甲州ハイボール」とスパークリングの日本酒「澪」を組み合わせ。「健康の話をしながら、お酒なんてと言われそうですが」と前置きをしつつ、七夕の夜の晩酌を楽しんでストレス解消を!と『居酒屋ダイエット』という本を出版する松田先生ならではの、体だけじゃなくて心にも優しくおいしいマリアージュを提案した。

ごま油のいい香りに食欲が刺激され……

 

 続いては精肉売場へ。元々は食肉小売店としてスタートしたタカラ・エムシー。「うちは元々肉屋ですから、お肉には力を入れています。特に桃里店ではお肉の売上げはいいんですよ」と店長の伊藤貴之さん。今回の調理&試食メニューは豚バラ肉のしゃぶしゃぶをそうめんに乗せ、熱々のごま油を上からジューッとかけるもの。たちまち店内にごま油のいい香りが漂い、食欲アップ! 次々お客さんが手に取り、皆さん「おいしい!」を連発する。

売場に良い香りがした理由は……
これで温めたごま油をかけたから!

「これだけ足を止めて試食を手に取ってくれるのは珍しいです。普段は人が流れてしまうので、気にしてくれているのがうれしいです」と伊藤店長。さらに、この店舗ではPOPの内容をお客が持ち帰れるカードにしているが、「松田先生の食材の健康メモとレシピ紹介のカードを置いた商品は売上げがいいんですけど、今日はそれがもっと顕著に表れていますね。カードは2日に一遍ぐらい入り口のスタンドのところにも入れているんですが、どんどんなくなっていくんですよ」と教えてくれた。

このイベントに合わせて、国産豚バラ肉しゃぶしゃぶ用を100g99円で販売したら……
売り行きが非常によく、夕方の段階で売り切れ(売場ではカナダ産の肉も販売している)

売場で健康情報が分かることの重要性を実感

 想像しているよりもお客さんはずっと健康を気にしていて、健康にいい!という情報を欲しているのが分かる。レシピカードはよく見掛けるが、そこに健康情報をプラスすることで、購買意欲も高まる。もちろん、そうした健康情報は日頃、テレビなどでも幾らでも見掛けるが、いざ買物へ!となると忘れてしまう。やはり、売場でそれが分かることがお客さまにとって有益でプラスになる情報なのだ。

 

「七夕そうめん」でお客さまの無病息災

 

 そして「健康ツアー」で回る4カ所目は「七夕そうめん」。実は七夕にはそうめんを食べる風習があるんだとか。元々、そうめんは中国の「索餅(さくべい)」という小麦粉料理が日本に伝わり、形を変えたといわれている。中国では7月7日に索餅を食べると無病息災で過ごせるという言い伝えがあり、それもまた日本に伝わり、「七夕そうめん」は天の川に見立ててきれいに飾り付けて食べられることが多いのだそう。

 こちらのブースでは錦糸卵やハムでかわいくデコレートされたそうめんが飾られ、松田先生のトークの横でお客さんがそうめんを次々手に取り、買物かごに入れていく。夏はやっぱりそうめん!ですよね。

「いろいろなお客さまと話ができて有意義でした」(松田先生)

 そうして午前の部が終了し、日曜午後の買物客がドッと増える午後には3時から同様に店内を回り、4時過ぎにも3回目の店内ツアーを実施! 松田先生は自らを「私は歩くPOP、生POPなんです」と笑いつつ、今回店内健康ツアーを行っての感想を語ってくれた。

 

「お客さまはお買物を楽しみながら、耳ではしっかりこちらの話を聞いてくださっているのが分かりました。マム桃里店でお買物されている方々は奥ゆかしく遠慮がちな方が多かったですが、少しだけお話をしてみたい、コミュニケーションをとりたいと思われている方も実は大勢いるんではないでしょうか? 少しずつゆっくり近付いて来られて試食をされ、質問をしてこられる。今日は店内を回りましたが、もう少し1つの場所に留まって、そうしたお客さまと話をゆっくりしてみるのもいいかもしれません。それとメニューなんですが、ズッキーニを使ったもののような簡単で、食材の形そのままのものが一番いいと思います。栄養的にも食材はあまりいじらない方がいいですし。実はデパートなどでは15人限定などで店舗内を回りながらこうした健康ツアーを行うことはあるんですが、スーパーマーケットでは初めてでした。しかも不特定多数の方を相手にしたゲリラ的なもので(笑)、いろいろなお客さまと接して話ができて、とても有意義でした」

「楽しんでみんなでできたことが良かった」(朝比奈さん)

 そして午後5時にツアー&試食販売が終了! 自らズッキーニの調理を担当していたタカラ・エムシーの朝比奈さんもまた「お客さまとじかに話ができたことが本当に良かったです。話をしてみないと分からないことがたくさんありますから」と言う。日頃は店頭に立つことの少ない本部社員などが直接にお客さまとふれあい、声を聞ける貴重な機会だったようだ。

 そして、「初めてこうした催しをやってみて、お店が賑やかに盛り上がって良かったと思います。私たちだけではできないことですし、やはりプロの先生が説明してくださると、言葉に断然、説得力があります。ぜひまたやってみたいですね。お客さまも日頃食べない、手を伸ばしにくい食材にも出合え、とても有益だったと考えます。売上げですが、ズッキーニは普段でしたら1日平均16本のところ、17時までに(試食販売終了時間)185本が売れて、カツオのお刺身は32パック、カツオのタタキは20パックが売れました! 売上げにちゃんと反映されているんです。そして、何より私たちが楽しかったです。ワクワクと楽しんでみんなで何かをやる、ということができたのが良かったと思います」と笑顔、笑顔。朝比奈さんの熱意がこのイベントを生み、実施へと導いたのだ。

 

「試食メニューの人気投票」は次回の改善課題に

試食メニューも人気投票には課題が残った。

 唯一、難しかったのが、試食したメニューの中からお気に入りを1つ選んで、その色の短冊を笹に飾ってくれた人に「あまえぎみ」というミニトマトを凍らせた「アイス・トマト」も試食プレゼント!という試み。アイス・トマト、食べると「おいしい!」の声が上がるのだけど、イベントスタッフが促さないと自主的に飾ってもらうのはハードルが高い。七夕らしくと行った取り組みだが、もう少しお客さまが気軽にできる方法が必要かもしれない。

 それでもしかし、タカラ・エムシーの従業員の皆さんが一致団結、イベントを盛り上げようと頑張っているのが、第三者として見ていてとてもよく分かった。スーパーマーケットでは日頃こうしたことが行われることはあまりないが、イベントを通じて従業員が共にお店を作っていく!という意識を抱くことにつながるんではないだろうか。もちろん、売上げもアップしたこの「スーパーマーケットの健康ツアー」、既に次回開催の案も持ち上がっている。