(右)オイシックス・ラ・大地(株)取締役 経営企画本部 本部長の松本浩平さん

 安心・安全な食材やミールキッドなどの宅配と販売を行うオイシックス・ラ・大地。「Oisix(おいしっくす)」「らでぃっしゅぼーや」「大地を守る会」の3ブランドのうち、「Oisix」の定期宅配「おいしっくすくらぶ」の会員数は20万5976人(2019年3月末現在)を誇る。その「Oisix」では、ECサイト内に食領域のスタートアップ企業を支援するコーナー「Oisix クラフトマーケット」をオープンしている。

革新的な食品と意識が高い消費者との出会いの場を提供

「Oisixクラフトマーケット」は、「独自の技術や製法を持つ国内外のスタートアップ企業や小規模の生産者・メーカーの他にはない食材を集めたコーナー」だ。

 こうしたコーナーを作った経緯について、取締役 経営企画本部 本部長の松本浩平氏は、「アメリカでは新発想の食品や革新的な食品を生み出すスタートアップ企業が増え、それを大手がM&AやIPOで支援し、その資金がまたスタートアップに使われるというサイクルができています。日本は素晴らしい食文化はあるものの、食に関わるアイデアがあっても、スタートアップできる環境が整っていません。『これからの食卓、これからの畑』という企業理念を持つ当社が、社会的課題の解決や、お客さまの生活がより豊かになるようなこれまでにない食品と、トレンドに敏感な当社の会員との出会いの場を作って販売することで、スタートアップ企業を後押ししたいと考えたのです」と話す。

 日本にもIT系企業で働いていた若者が食生活に課題を感じて起こした『BASE FOOD』(「1食で1日に必要な栄養素の3分の1がとれる、世界初の完全栄養の主食」の宅配)はIT×食品で主食のイノベーションを図ったものだが、現状の事例はアメリカのものが多い。

 その例として、「『Beyond Meat』は、牛や豚を育てて肉にするまでに大量に水を消費し、大量のCO2を排出することから植物由来のベジミートを開発。ベンチャーキャピタルや大手企業から資金を調達して製造量を増やし、販路を広げています。この他にも栄養価が高くて環境負荷の少ない昆虫食やオーガニックなどのサスティナブルな食品も増えています」(松本氏)。

 続けて松本氏は「当社と提携している『KITCHEN TOWN社』は食領域のスタートアップ企業のためのシェアオフィスを運営する他、レンタルできる食品製造工場を併設し、起業したいが設備を持たない人が借りられます。さらに、投資家や大手企業、大学などとのネットワーク作りも手伝っています」と、アメリカのスタートアップ企業に対する支援の充実を熱く話す。

安全基準を満たし、おいしくて、ストーリーがあることが条件

 

「Oisixクラフトマーケット」で扱う商品は、「国の内外を問わず、付加価値が高い、コンセプトが新しい、食の課題を解決する、世界初あるいは日本初といった食品を取り上げていきたい」と松本氏。

 ただし、Oisixは『つくった人が自分の子供に安心して食べさせることのできる食品』という理念を体現すべく、『Oisix安全基準』を設けており、これを満たすことが求められる。加えて、おいしいこと、開発経緯や付加価値などのストーリーがあることも条件だ。

 取り扱い候補の食品については、商品を取り寄せ、同社の品質管理部門で基準に合っているかチェックをする。何回かやりとりを重ねるので、掲載決定までには約1カ月を要するという。

 そのため当面は「取引のあるアメリカの企業やKITCHEN TOWN社から紹介を受けた食品などのアメリカ産と、oisix.comに掲載の国内産から選んだ食品を順次アップし、1週間単位で見直しをかけていく」と松本氏。

 現在掲載中、あるいは今後掲載予定の食品では、食事制限が多い自分の子供のために母親が作ったおやつのレシピが開発のきっかけになった「THE YES BAR」のグルテンフリーのスナックバーの他、コオロギ(食用)を使ったお菓子、小麦粉を使わないひよこ豆のパスタなどがある。

 国産の商品でも、先にも話が出た「BASE FOOD」の商品や、東日本大震災で被災した東北で生まれた岩手缶詰のサバ缶(「Cava?」)だ。サバをオリーブオイルに漬けるという新発想と斬新なパッケージで、Oisix掲載を契機にヒットし、チェーンストアでも販売されるようになった。

「Oisixクラフトマーケット」のコーナーでは、いずれも、商品の特徴だけでなく、開発スト-リーなども詳しく紹介されている。

「Granola Dip」:乳製品を使わない“代替バター”として料理に使える。サンフランシスコのスタートアップ企業「Kween Foods LLC」が製造
「Banza Pasta」:小麦を使わず、ひよこ豆を使って作ったパスタ。ニューヨークのスタートアップ企業「Banza LLC」が製造
「DON BUGITO」:コオロギを使った菓子。食虫文化が盛んなメキシコの文化をアメリカで紹介したいとの考えから、サンフランシスコのスタートアップ企業「DON BUGITO」が製造
「The Yes Bar」:プラントベース(植物由来)、グルテンフリーのスナックバー。サンフランシスコのスタートアップ企業「The Yes Bar Co.」が開発
「常陸野ネストビール」:木内酒造が酒造りの技術をもとにつくるクラフトビール。世界35カ国で販売されている

今後、商品を増やし支援体制も拡充。売り込みも大歓迎

「今後は売り込みや紹介、食品の展示会での出会いの他、こちらから出向くこともあります」と松本氏。小ロットでの買い取りが基本で、ニーズが高ければ追加で入れていく。

 さらに「資金的援助が必要ならば、ファイナンス面で支援することも考えていますし、ラインを借りられる工場や原料の紹介もしていきたい」と、松本氏は支援体制の拡充を構想する。

 現在はスタート間もないので、売上げ実績はこれからだが、「コーナーを訪れる会員は多く、期待値を感じています。もっと商品を増やしたいので、売り込みは大歓迎。サバ缶のように、このコーナーをきっかけに大手量販店との取引が始まればうれしい」と松本氏。

 商品に自信はあるが世に送り出す手段がない、もっと販路を広げたいといった中小の企業や生産者にとって、「Oisixクラフトマーケット」は、願ってもないステージになりそうだ。

「商品を世に送り出したい」「もっと販路を広げたい」という中小の企業や生産者は、オイシックス・ラ・大地のホームページから売り込みを!