(左)RFルーカス社のプレスリリースより

 流通業界ではAIや無人精算がトレンドとなっているが、アパレル業界の現実は到底そんな段階ではないようだ。当社で集計したICタグなど在庫管理と決済の実態は、それ以前に解決すべき課題が山積していることを露呈している。

バーコードさえ使いこなせていない現実

 今回の集計はクライアントの31社と限られるが、アパレル業界の実態に近いと思われる。ICタグ導入済みは2社(導入準備中が1社)と限られ、いまだバーコードが主流だ。

 入荷検品では導入済みの2社のうち1社がICタグを読み取って全点検品しているが(もう1社は棚卸しのみ)、驚いたのはバーコード活用の30社中、バーコードを読み取って全点検品しているのは3社にすぎなかったこと。単価が低く大量販売する14社はパッキン単位の検品だけで全点検品はせず(出庫段階で全点検品)、残る13社はバーコードを使わずに現物と伝票を突き合わせて検品していた。

 理由は、『バーコードの取り付け位置が商品ごとに異なり、探す手間より商品の外見と伝票を突き合わせた方が速い』『商品の大半が透明なポリ袋に入っており、その外からは読み取れない場合が多い』で、実用化されて久しいのに基本的な課題さえ解決されていない現実に唖然とさせられた。

 ICタグでも入荷検品は金属枠で囲ったスキャナーゲートを通せばミスはないが、売場での棚卸しではスキャナーの感度設定に慣れないとスキャン漏れが発生し得るし、ICタグを防犯タグとして利用する場合も店内商品のICタグを感知してしまうことがある。単品(SKU)管理のバーコードに対してICタグは絶対個品管理で多重の読み込みをサーバーで付き合わせるから二重読み込みはあり得ないが、スキャン漏れは生じ得る。

 長年使われてきたバーコードでも使用にスキルが必要で、ようやく実用化されだしたICタグでもタグの取り付け位置(金属パーツ障害)やスキャナーの感度設定など、使用スキルが安定するまで精度に課題があったが、電波位相時系列情報をAI解析してこれらのミスを回避し、探す商品の位置を瞬時に10cm以下の精度で特定するスキャンシステムがRFルーカス社から発表されているから、使用スキルの壁も早々に解消されそうだ。

棚卸しではバーコードを活用するも低頻度

 棚卸しでは導入企業はもちろんICタグを読み取り、バーコード活用企業は30社中26社がスキャンしているが、残る4社は現物を帳簿と照合している。単品管理のバーコードはスキャン漏れや二重スキャンがあり得るから、手順を踏んでそれらを回避するスキルが必要で、ミスを避けようとすれば相応に手間取る。棚卸しには残業がつきもので、慣れないスタッフではミスも避けられない。故に棚卸し請負の専門業社が必要とされるほどだ。

 神経を使い手間取るバーコード棚卸しは高頻度には実行できず、単価が低い商品を量販するチェーンでは半期ごとや四半期ごとの実施がほとんどで、毎月行う企業は極めて稀だ。それに対して、百貨店などで単価の高い商品を扱うブランドは毎月実施しているケースが多い。年間10回以上、棚卸しを実施している企業群の平均単価1万1170円/年間販売点数1万9750点に対し、年間2回以下の企業群は平均単価6583円/年間販売点数3万5718点と格段に低単価で販売点数も多い。

 本来なら販売点数の多い企業ほど棚卸しの高頻度実施が必要だが、ミスと手間が背中合わせのバーコードタグでは多少?の棚ロスに目をつむって実施頻度を抑えるしかない。長らく使われてきたといってもバーコードはあまりに不完全なツールであり、棚卸しはもちろん生産工場〜DC〜店舗(必要なら顧客まで)と正確に流れを追えるICタグのニーズが高まるのは必然だ。経産省がコンビニを対象に『1円を目指す』とするのはともかく5円を割り込むのは間近だし、無人精算や盗難防止にも活用できるから、爆発的拡大期に入るのは時間の問題ではないか。

フェイシング管理の定期実行は効果が大きい

 コンビニやスーパーマーケットでは日常業務に定着しているフェイシング管理だが、賞味期限管理さえ曖昧なアパレル業界では定期的に実施する企業は限られる。今回の調査でも28社中、定期的に実施しているのは5社に過ぎず、「朝夕2回」が1社、「毎日1回」が3社、「週2回」が1社。

 定期的なフェイシング管理を実施する企業は少数派だが、その効果は小さくない。定期的に実施している5社の平均ロス率は不定期実施の24社より5.6ポイント低く、同じく商品回転は26%も速かった。

 後方ストックのフェイシング管理は毎日行っている9社に対し、随時の実施が18社、棚卸し以外は実施せずが4社。後方ストックの配置ルールは「アイテム別」が28社と大半で、「入荷時期別」が2社、「売場番地別」も2社と限られるが、ユニクロやジーユーのような「パッキンのまま積み上げ」は流石に1社だけだった。

在庫はどこに持つべきか

 店舗在庫に占めるバックヤード在庫率はサプライ手法で大差があるが平均はほぼ3分の1で、前年より1割強上昇している。例外的に高いのが売場面積も陳列点数も限られる百貨店内のショップで、バックヤード在庫率は平均55%にも達する。新規商品でも全SKUが陳列されているわけでなく、旧サイクルの商品はバックヤードに押し込まれている。故に、接客中に在庫探しにバックヤードに走る頻度が異常に高く、人数の限られた販売スタッフが売場から抜けてしまう弊害が大きい。

 フェイシング管理を徹底して営業時間中の欠品を最小化しバックヤード在庫率をミニマムにするのが運営効率でも在庫効率でも正解で、自社ルート便やテザリングで多頻度補給が可能ならゼロにするのが最善だ。

 店頭在庫/バックヤード在庫/DC在庫のバランスは、平均して46:24:30だった。アパレルチェーンの方がアパレルブランドよりDC在庫率が6ポイント高いのは両者の自社EC比率の差を反映したもので、アパレルチェーンが在庫を物理的にも一元化して自社ECを拡大しECモールに預ける在庫を抑えているのに対し、アパレルブランドはいまだECモールに依存して在庫を預ける比率が高いことも影響している。

 EC比率が高まるほど、自社運営EC比率が高まるほど、在庫は後退配備になってDC比率が高まるが、C&Cで店舗在庫を引き当てるようになると前進配備になって店舗在庫の比率が盛り返す。また、ZARAのようなスルーDB方式を採る場合はDC在庫はゼロになり、ユニクロやH&MのようなストックDB方式を採る場合はDC在庫は店舗在庫の1.5倍ほどに膨らむ。どちらが在庫の消化回転が速いかは火を見るよりも明らかだが、消化回転が遅くても売上機会の拡大を追うという選択もあるのだろう。