部下:「○○カテゴリーの売上げが下がってきています」「女性40代のリピート来店が落ちてきています」「××店の業績が好調です」

 上司:「……それで?」

 小売業の現場では、このような会話がよく交わされているのではないだろうか。

 POSデータやID-POSデータの登場により、小売企業は店舗運営やお客さま理解のために必要な情報を得られるようなった。しかし、その情報を活用し切れている企業は少ない。多くは活用どころか、膨大なデータを前にそれをさばくことで手一杯になり、いつの間にか分析自体が目的となっているのが実情だ。

 今回は、POS/ID-POSデータの登場で、どのようなことができるようになったのかを、基礎的な部分を中心に、その分析の手法や結果の利活用方法を交えながら紹介していく。

POS、ID-POSで買物動向が把握できるようになった!

 かつての小売企業は家族経営のような小規模なものがほとんどで、店主の勘や経験で品揃えが決められ、商品が販売されていた。小規模だったため、帳簿による仕入れと売上げ管理でも、店舗経営に大きな負担はなかった。

 高度経済成長期に入るとダイエーなど総合スーパーの登場に象徴されるように店舗が大型化し、チェーン展開を始め、企業規模が拡大。各社はチェーンストア理論を学び、さまざまな業務の合理化を進めていった。

 そうした中、生まれたのがPOSレジである。POSとは「Point of Sales(販売時点情報管理)」の頭文字をとったもので、「いつ、何が、何個、いくらで」売れたかのデータを管理するシステムである。POSレジの導入で売上げ管理業務が飛躍的に向上した。

 1984年に大手コンビニが本格的にPOSレジを導入した。多くの店舗を持ち、1店舗当たりの売場面積が狭いコンビニにとって、効率的に限られた品揃えを行うのにPOSレジは必須であった。POSレジは単品単位で売上げが管理できるため、売上げが落ちてきた商品をいち早く見極めて商品棚から排除し、その分を売上げ好調な商品の販売スペースにあてることで、品切れといった機会ロスを減らすことに貢献した。

最近では「商品DNA」を自動付与できるように

 バブル崩壊で店舗の売上げが低迷すると、小売業の中でも顧客囲い込みを目的としポイントカードを使ったFSP(Frequent Shoppers Program)の導入が加速した。そして2000年に入る頃から、FSPを通じて得られる会員情報とPOSデータをひも付けたID-POSデータをマーケティング施策に生かそうという動きが出始めてきた。

 ID-POSデータとはPOSデータで得られる「いつ、何が、何個、いくらで」という情報に加えて「誰が」購買したのかが分かるデータである。それにより、POSデータだけでは見えなかったお客さま一人一人の買物動向を把握できるようになった。

図表1 ID-POSデータで明らかとなるお客さま一人一人の買物動向

 例えば、POSデータだけでは、売上げの好不調の要因も「客数」「客単価」の変化を見るだけだったが、ID-POSデータの登場により、「どういうお客さまが増減したのか」「お客さまの来店回数が増減したのか」「買物1回当たりの購入単価が増減したのか」など、より詳細な要因を把握できるようになった。 (図表1)。

 ID-POSデータを利活用していく中で、ポイントカード入会時の属性(性、年代など)を使う以外にもお客さまの買物動向からライフステージや価値観を推測し、利活用しようとする企業も出てきた。

 日本ではオギノ(山梨県甲府市)の事例が有名で、人があらかじめ商品に対し“健康志向な商品である”などの商品特性(「商品DNA」)を付与し、どの商品を購買しているかによってお客さまのライフステージや価値観を推測する。そして、推測したライフステージや価値観を基に、品揃えや販促を行っていくのである。

 最近では人が恣意的に商品特性を付与するのではなく、その商品を購入している消費者の特性から商品DNAを自動付与する企業も登場。昨今の多様化するニーズにいかにキメ細やかに効率的に対応していくかという視点で、取り組みがより高度化している。