あるワクワク系(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を、われわれはそう呼んでいる)のサービス業の社長からのご報告。今回は、同社が提供している中の、ご家庭のお掃除サービスに関する実践事例だ。

 依頼してくれたご家庭での作業が終わると、お客さんは予想以上にきれいになったと喜び、その後に、「次はいつ頃、お願いすればいいかしら」と聞いてくれることが多い。そんなとき派遣されたスタッフは、そのお客さんごとの使用状況に合わせ、次にうかがった方がよい時期をアドバイスする。例えば、エアコンクリーニングなら1年後から3年後くらい、キッチンやお風呂の水回りなら数カ月後から1年後くらいといった具合だ。するとお客さんはまた喜んで、「その頃、また電話するわね」と言ってくださり、スタッフも「また、お願いします」と言って帰ってくる。それがずっと続いていた。

「でも、これ何かおかしいよね」と、ある日、社内ミーティングで話題となった。お客さんが、「また、お願いするわ」と言ってくださっているのに、こちらは待っているだけで、その時期にまた連絡することはほとんどないのが実情だったからだ。

 そこで、派遣先でお客さんと次回の作業時期の話ができたら、帰社後その情報を記録して、次はその時期に適確にご連絡できるよう、ファイリングボックスを活用して仕組みを作ってみた。そしてそのボックスを『未来の売上ボックス』と名付け、運用してみたのだった。

 そうして3年が経過、今では、時期が来てご連絡したお客さんの成約率は何と70%。同社ではお客さんとの関係性を切らさないための他のさまざまな手立てもあるし、そもそも前回のサービス提供時の仕上がりや対応の良さにも左右されるので、全てがこの仕組みによる受注とはいえないのだが、担当者の話などを聞くと、「少なく見ても、成約になったお客さまの半分は、電話しなければ注文はこなかったと思う」とのこと。

 この実践で重要なことは、それまで特に気にならずずっと続けてきたことに対し、今回は「これ何かおかしいよね」と思えたことだ。その疑問から解決策が生まれ、それがなければ失い続けていたであろう売上げは守られた。そして、『未来の売上ボックス』というネーミングも秀逸だ。そのボックスにファイルされている書類は単に「書類」ではない。仕組みをきちんと動かせば未来の売上げとなるものだ。商売をこのようにとらえ、これまでの営みにも良い疑問を持ち、具体的な仕組みを作れること。それが今日、売上げを失わない力、売上げを作り出せる力なのである。

※小阪裕司先生の連載最新回は、毎週金曜日の午前5時に公開します。「これまで公開した記事」と併せてお読みください