訪日外国人客、いわゆるインバウンドは2018年3119万人に及び、今年も過去最高人数で推移している。そのインバウンドの日本における消費額は4.5兆円(18年)。そのうち34.9%が買物での消費だ。こうした状況をから免税店は急増しており、19年4月1日現在、全国で5万198店を数える。

 少子高齢化で国内の消費が先細りの中、目の前のインバウンドという宝の山を見逃す手はない。こうした考えのもと、地元商店街と連携して免税店化を進めて成果を上げているのが、浅草六区の商業施設「まるごとにっぽん」だ。

免税店とは?

 まず、免税店について簡単に説明する。免税店には空港の出国エリアなどに並んでいる関税などを免税する「DUTY FREE SHOP」と、国税庁から免税店の承認を得た小売店が、外国人旅行者などの国内非居住者に消費税を免除して商品を販売できる「TAX FREE SHOP」の2種類がある。

 ここで取り上げるのは後者で、14年に免税対象商品が家電、衣類、かばんなどの一般品だけでなく、食料品、薬品、化粧品などの消耗品にも拡大し、免税店のハードルが下がった。

 また、TAX FREEの免税店には一般型と委託型がある。一般型は、個店ごとに店内で免税の手続きを行うもの。委託型は、商店街や商業施設などが一体となって免税カウンターを設けて所属する免税店の免税手続きを一括して行うもの。共に免税店の申請は、各店舗が所轄の政務署に行う必要がある。

免税の詳しい説明はこちら

近隣商店街とタッグを組み免税店化

 今回紹介する「まるごとにっぽん」は、「地方紹介のポータルサイト」をコンセプトとして15年12月にオープンした。地上1階から4階が「まるごとにっぽん」のフロアで、総売場面積3732㎡の大型施設だ。1階には、直営の食のセレクトショップ「蔵」をはじめ、全国各地の食の専門店が集結。2階は、伝統技術や風土が息づく地方発の生活用品と雑貨のフロア。3階は、公募した各地の自治体が名産品を出展する「おすすめふるさと」や体験コーナー。4階が飲食フロアという構成だ。

食のセレクトショップ「蔵」

 もともとは国内のお客がターゲットだったが、免税店化に踏み切ったのは2つの理由がある。

まるごとにっぽん 営業部営業課営業係 田中想人氏

「1つ目が1年目は開業景気でにぎわいましたが、2年目に入って客足が落ち、何らかの施策が必要だったこと。2つ目は、浅草はインバウンドが爆発的に増えており、積極的に誘客すべきだと感じたことです」と、まるごとにっぽん 営業部営業課営業係の田中想人氏は語る。

 しかし、免税店に関する知識はなかったので、一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会(JSTO)に相談をした。すると、周辺の商店街と組んで委託型免税店という形を取ることを勧められたので、隣接する「六区ブロードウェイ商店街」と「奥山おまいりまち商店街」に声を掛けたところ話はスムーズに進んだ。

 浅草で訪日外国人に人気が高いのは、雷門、仲見世、浅草寺のエリアで、かつて興行街としてにぎわった六区まで足を伸ばすインバウンドはまだ少ない。六区の商店街でも、インバウンドを取り込みたいという思いがあったからだ。

 同施設は17年に直営の「蔵」と3階の「おすすめふるさと」の免税店の認可を取った。そして、JSTOの協力を得て施設内のテナントと商店街の店舗に免税店のシステムやメリットを説明して免税店化を勧めて回ったが、これが難航した。

「施設内の店舗でも商品が免税店になじまないところもありますし、商店街の昔ながらの店舗は税務署に申告することに対して敷居が高いと感じてしまい、今のままでいいと言われてしまう」とJSTOの吉澤勉氏は語る。それでも地道に説明を続けることで、メリットを前向きに捉えて免税店を選択する店舗が少しずつ出てきた。

訪日客対応を進め、受け入れ態勢を整えた

免税カウンター

 免税店化と並行してインフラの整備も進めた。委託型に必要な一括処理を行う免税カウンターは同施設の3階に設置。ここは免税手続きだけでなく、商品の梱包、ホテルや空港への配送受付も行う。その他、直営店にはPOCKETALK(ポケトーク)、他の免税店にはタブレットで外部の委託先と多言語会話ができるシステムを導入した。そして、当初から入れていた銀聯カードに加えてウィーチャットペイ、アリペイにも対応できるようにするなどキャッシュレス化も図った。

 そして「蔵」では、夕食をホテルの自室でとるインバウンドが多いことを考慮して、即食系の食品を購入した人に紙皿や紙コップを無料で提供するサービスも始めた。

入り口前に免税店の看板を掲げている。

 こうして訪日外国人の受け入れ態勢を整えた後、施設の入口に免税店の大きな看板を掲げてシンボルマークも掲出したところ、足を踏み入れる人が増えてインバウンドの客数が倍増。売上げもアップした。

「委託型は、各店舗で購入した免税対象商品とレシート、免税カウンターを案内するプリントを渡すだけでいいので、人員を増やす必要はなく販売時の手間もない。カウンター業務の委託料も当施設と商店街で負担しており、店舗の負担はゼロです。それでいて売上げが増える。特に委託型では、複数店舗での購入金額の合算で5000円を超えれば免税になるので、少額の買物でも免税扱いができると免税店には喜ばれています」と田中氏は語る。

 一括処理をする免税カウンターでは、同じフロアの「おすすめふるさと」のスタッフが兼務で免税手続きを担当。商品とレシートを持った免税のお客が来ると、順番に受け付けて処理が終了したら呼び出す。また、合算額が5000円に満たない場合、すぐに買い増しができる棚を免税カウンター近くに設けて案内をするといった細かい配慮も怠らない。

 

 免税品で人気が高いのは、食品ではお茶とわさび。比較的高単価の商品を扱う2階のフロアでは調理道具の「つきじ常陸屋」など、免税品で客単価1万2000円~1万3000円の店舗も出ている。

「浅草」を1日中遊べる街へ変えていく

 現在は六区の魅力を伝えることに力を入れており、免税店にはインバウンドの目を引く棚を作ることを提案。そして、外国語が話せなくても、積極的にアプローチすることも各店舗にお願いしている。

 また、SNSやWebで情報を発信する他、中国の口コミサイト「大衆点評」には全店の案内を掲載。浅草の飲食店やホテルには同施設のパンフレットや周辺のマップを置いてもらい、集客を図っている。

 

 今後については、安倍政権が推進する経済特別区域構想、国家戦略特区を申請中だ。承認されれば、道路を封鎖してさまざまなイベントができるので、六区エリアマネジメントを立ち上げて対応できる。

 さらに、六区に隣接するテーマパーク「花屋敷」では、夜間の公演が可能なシアター「花劇場」を今年の4月にオープンした他、人気が高いお化け屋敷の夜間営業を企画中だ。商店街も、シャッターに歌舞伎絵を描くなど、閉店後の街並みを意識した演出を行っている。

「<滞在時間×消費>で売上げが立つので、ホテルが増えている六区を、終日楽しめる街にすることで、六区インバウンドを呼びたい」と吉澤氏は語る。

 まるごとにっぽんはその核となり、商店街や周辺施設と協力して盛り上げることで六区が今後どのように変わっていくのか注目したい。