バーニーズNYのマディソンアベニュー旗艦店

 あのバーニーズNYがまたもチャプター11(民事再生法)を申請かというニュースが流れているが、同社は96年にもチャプター11を申請して以降、幾度も転売されてきた札付きの“オワコン”でありながら、なぜ今日まで生き永らえてきたのだろうか。70年代から米国ファッションビジネスをウォッチしてきた小島健輔の評価は厳しい。

引き金は旗艦店家賃の大幅値上げ

 今回のチャプター11が本気かどうか眉唾という見方があるのはマンハッタン・マディソンアベニュー旗艦店の家賃交渉の駆け引きが背景にあるからだが、既に年家賃1600万ドルの10年契約から19年2月1日付で同3000万ドルの契約に改定されている。

 表面家賃の3000万ドルに固定資産税の負担などを加えると4400万ドル以上になるとアナウンスされているから、1ドル108円換算で47億5200万円。賃貸面積がメンズ館(1〜9F)とウィメンズ館(B1〜9F)合わせて27万5000sqf(2万5575平米/7750坪)だから、月坪5万1000円ということになる。

 多層階の大型2館店舗とはいえ、マディソンアベニユーの一等立地で高いか安いかといえば、この家賃ならオフィスに貸した方がもっと稼げる。同じマンハッタンでも超一等地の5th.Ave. 711のラルフローレン旗艦店は5万3000sqf(1493.6坪)で年間2500万ドルを払っていたから、月坪家賃にすれば15万円強になる。アバークロンビー&フィッチの銀座旗艦店が11フロア計2121平米(642.7坪)で年間14億4000万円、月坪家賃18万6700円であるのと比較すれば、倍近く値上げしても法外に安いとしか思えない。

 その格別に安い家賃にも耐えられないバーニーズNYはよほど売れていないということで、あの巨艦店舗にして年間6000万ドル(年坪83.6万円!)しか売れていないという証言もある。事実、この3月には4階までに圧縮することを検討していると報道されているし、大家としても上層階は改装してオフィスかホテルに貸した方が家賃の総収入は確実に多くなる。いっそ退店してもらって全館をホテルかオフィスにしてしまうのが合理的だが、ビバリーヒルズ店もバーニーズNYに貸している大家のアシュケナージ・アクイジション社は友好的な交渉に務めていると米紙は伝えている。

旗艦店の撤退は世界的トレンド

 バーニーズNYが格別に売れていないにしても、ファッションブランドが世界各都市の旗艦店を次々に撤退しているのは疑いようのない事実だ。東京の一等地からブランドの旗艦店が次々に撤退しているのは本サイト6月5日の『採算度外視ももう限界! ブランド旗艦店が消えていく』でも詳説したが、それはNYでも香港でも同様だ。

 NYでは17年4月のラルフローレン五番街旗艦店の撤退を皮切りに、今年1月には5th.Ave. 425の老舗デパート、ロード&テーラー、Liberty St.225のサックスフィフスアベニュー・ウイメンズストア、5th.Ave. 712のヘンリ・ベンデル、5th.Ave. 680のGapが閉店し、3月末には5th.Ave. 681のトミーヒルフィガーも閉店、Madison Ave.645のカルバンクラインも閉店した。

 ブランド旗艦店は家賃負担が売上げの半分に収まればブランディング効果で赤字が容認されてきたが、それは地方や郊外への有利な出店を前提としたもので、ブランド人気が頭を打ったり、EC軸のC&Cに転換したりで新規出店が限られてくれば採算度外視で旗艦店を維持する意味もなくなる。家賃負担が売上げの半分以下に収まるとは限らず、中には家賃が売上げを上回るケースさえあり、デジタル投資と店舗の採算改善を急ぐブランドビジネスにとって役割を終えた旗艦店の撤収は避けては通れない課題となっている。