米国のGMSとは異なる独自の進化を遂げた総合スーパー(日本型GMS)。この業態はなぜ食品が主力になったのか。この点を「日本と米国の生鮮流通の違い」から解説していきます。

生鮮は日本では規模が有利にならない

 吉田:日本型GMSは食品が主力ですが、その食品のうち60%は、個店に毎日少量補充されている生鮮です。

 各地の市場で仕入れるものが多い生鮮では、開発調達での仕入れ価格の有利さはありません。日本型GMSが行っているように、ニンジンを200本仕入れても1000本でも、市場(いちば)で買う限りは、その時点の全国同一の価格になります。

 市場では量を仕入れる有利さはゼロとは言えずとも、ほとんどありません。これはわが国の野菜、鮮魚、精肉の市場流通の全般について同じことがいえます。魚も獲れる量が一定ではなく、工業品のように量を買うと、量産で安くなるということはないのです。

米国では生鮮をグロサリー化している

 米国の大手スーパーマーケット(SM)チェーンでは、青果を除く生鮮をグロサリー化のために冷凍して保管し、店頭でも冷凍のまま販売しているものが多いのです。米国の大手SMでは、生鮮のグロサリー化を行っているわけです。

 仕入れは開発型であり、契約した大農法の農家からになりますが、ウォルマートと店舗数が少ないSMでは契約農家が違う点にも注意が必要です。

 最も多く売れる肉では、米国の家庭では「半年間は鮮度を保つ冷凍ブロックや真空パック」で買い、冷凍庫に保管し、その日の調理分だけを、解凍して、使っています。米国で肉を 解凍して売っているのは、ディーン・アンド・デルーカのような総需要の5%以下しかない大都市の高級SMだけなのです。

生食が多い日本の食文化

 ところが、わが国の世帯には魚の冷凍、肉の冷凍ブロックを買う食文化は多くありません。わが国の食文化の基本は、「鮮魚のように生のまま食べる」ことです。

 米国では、グルメ食として増えている寿司屋以外、魚を生で食べる文化はありません。レヴィ=ストロースの文化人類学では、生は原始的とし、調理とは火を加えることとしています(料理の三角形)。

 わが国でも冷凍技術は活用されていますが、市場や工場では冷凍していたものを流通段階で解凍し、少量を店舗別に毎日補充して、販売しています。

生鮮の仕入れは価格差が付きにくい

 わが国の生鮮三品の青果、鮮魚、食肉は全国ベースでの「セントラル・バイイング」による量の仕入れの有利さが発揮しにくい流通と販売方法を持つ商品です。

 日本型GMSで、食品の成績が衣料や住関連よりもましなのは、日本型GMSとSMでの生鮮の仕入れ価格での差が作りにくいためなのです。

 生鮮食品では、種類ごとに、日経新聞に「ほぼ10%の幅で、今日の全国市場(いちば)価格」が出るくらい一律です。これはわが国の生鮮流通特有の特徴です。

 米国では、全国一律の生鮮の卸価格はありません。契約農園と先物買いの契約量ごとに、出荷価格が違うからです。

米国の生鮮仕入れは収穫前に契約

 米国ではSMの生鮮仕入れに先物買いが多いのですが、これは半年後の収穫になる生産物の量と価格を先に契約する方法のことをいいます。収穫後のバイイングより、価格は下がるのが一般的です。

 これに対して、わが国の場合、自然の生産物の生鮮ではとれる量が不定であり、高くなってしまうことすらあるのです。野菜は2倍、3倍の幅で常時、価格変動しています。普通は1本18円のキュウリが天候の悪かった週は1本60円(店頭では90円)のときもあります。

 農園との契約と開発の関与度が低い生鮮三品では、県内に店舗数が2店や3店しかない日本型GMSは、市場の中間流通を担う仲卸から仕入れる方法をとっています。このため、SMとの価格差は付かないのです。

衣料と住関連では勝負にならない

 吉田:衣料と住関連の商品でも、店舗数が100店舗台では、店舗数が1000店や2000店を超えている開発輸入の専門店チェーンに対して、開発量は1/10や1/20以下と少なくなります。専門店チェーンが、1品目で10万枚仕入れるとき、日本型GMSがその1/20の5000枚では勝負にならないのは明白です。

 1990年代に世界からバイヤーが集まっていた中国の広州交易会に行ったとき、こう言われたことを思い出します。

「日本からはたくさん来るね。最初は管理職、最後は役員と社長。アメリカと違う点は、日本人は社長でも買う量を言わず、説明を聞いて、商品を見るだけ。買う数を言わないと、価格を示す商談にはならないよ」