さまざまな商品やサービスが世の中にあふれ、デジタル武装した消費者は自ら信頼できる情報を取捨選択する時代。新規顧客の獲得にかかるコストは既存顧客のリピート率を高めるためのコストの5倍から10倍もかかるといわれている今、企業にとっては経営基盤安定のためにも顧客を囲い込み、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を引き上げる打ち手を追求する必要があります。しかし、既存顧客のリピート利用を勝ち取ることも決して容易ではありません。これからの時代を生き抜く店舗は、どのようにして顧客を囲い込んでいくべきなのでしょうか?

 今回は「デジタル店舗と顧客の囲い込み」をテーマに、これからの時代を生き抜く店舗のあるべき姿を考察していきたいと思います。

そのDXはどこへ向かっているのか?

 今回のテーマは、デジタルトランスフォーメーション(以下DX)と切っても切れない関係にあります。

 DXの必要性は至る所で叫ばれていますし、何かしらの形で経営課題の1つとして議論の俎上に上がっているのではないでしょうか。

 それでは店舗のDXの目的とは何でしょうか。それは「ウェブで簡単に物が買えるようになった時代に、どうしてお客さまは店舗で買う必要があるのか」という店舗の価値を再定義し、その価値をテクノロジーによって最大化することに他なりません。

 しかし、現実には店舗のDXの多くが、人手不足やECの登場による集客力の低下で危機に瀕している店舗を生かすために、どうテクノロジーで補完できるかという発想になっているように感じます。例えば、無人店舗が話題ですが、Amazonの無人店舗が顧客の購買体験の最適化を目指すのに対し、日本企業の無人店舗では省人化・省力化のためであることが多く、同じ無人店舗でもその設計思想は大きく異なっているのです。

 特に顧客囲い込みを念頭に置いた場合、店舗におけるDX施策は顧客の体験価値向上に向かうべきです。もっというと、店舗におけるDXのゴールは、売上げを引き上げることではありません。「売れればいい、売って終わり」ではなく、「顧客が来店することや商品を買うことでそれに紐づいた行動データを蓄積し、そのデータを活用して体験価値を改善する。その結果、さらに顧客が集まり商品が売れていく」という『正のループ』を生み出すこと。ここまで設計できて、初めて本質的なDXを推進できている状態といえるのです。

 では、何をどうすればデジタル店舗で顧客の体験価値が上がって囲い込みにつながるのか。具体的にイメージするために今、世の中で起きていることを見ていきましょう。