ポイント2倍デーやセールなどお得な日には、「どうせ買うなら」と、店舗にいつもよりも多くのお客さまが詰め掛け、行列を成します。

 2、3組でもレジに行列ができていると「まだかな」と最近は思ってしまうのですが、そうしたとき、レジ付近に並んでいる商品を見ると「こうした見せ方は、店頭でなければできないな」と感じます。

 ネット通販には、そもそも「決済を待つ」という時間はほとんどありません。カード情報や送付先を入力して「購入する」ボタンを押せばすぐに商品が購入できます。

 ところが店舗では他のお客さまが会計を済ませるのを待つ時間、商品を目の前で包装してもらう時間がどうしてもかかります。そのため、多くの店ではレジ付近に待ち時間を感じさせないよう、商品を置いて興味を引く工夫がされています。

 もちろん、電子決済サービスなど、商品に関わらない部分は効率良くスピーディーな対応にすべきです。今後も人手不足になることは自明なので、デジタル技術導入の施策は推し進められていくべきだと思います。

 その一方で、こうした一見無駄に見えるようなレジ待ち時間を活用できるのは、「リアル店舗ならではだなぁ」とも感じるのです。並んで会計の順番を待っているだけでは「退屈な待ち時間」ですが、他の商品を見てもらえるならば「買物時間の延長」と捉えることもできます。

レジでの「一瞬の葛藤」を待てるか

 

 ところが、せっかくレジ付近に商品が並べてあって「これも買おうかな」とお客さまが思い始めたにもかかわらず、今のリアル店舗ではその変化に気付かず「お待たせいたしました、こちらにどうぞ」と会計を促すようなシーンが増えた気がします。

 良くも悪くも、ネット決済のスピード感ある対応に慣れてしまっているのかもしれません。もちろん、長い行列があれば当然早く対処しなければいけないでしょう。

 しかし、目の前で新しい商品を買おうとしている人がいるときにまで会計を促すことは、果たして正しいのでしょうか。

 リアル店舗では、相手を見て「待てる」店や人が、今求められている気がします。

お客さまが買物に求めているのは何か

 

 買おうかどうしようか悩む時間、どれにしようかと商品を選ぶ買物という行為は、本来楽しいものであるはずです。必要だからと半ば義務的に買う商品ではなく、比較的高単価で価値ある商品こそ、リアル店舗で購入してほしい商品なのではないでしょうか?

 買う買わないの決断は、本当にそんなに早くしなければいけないものでしょうか。わざわざリアル店舗まで足を運んで買物をしているお客さまは、そんなに焦っている人ばかりなのでしょうか。

 むしろ、大切なもの、高価なもの、新しいものに関しては、時間をかけても自分の目で実物を確かめ、納得いく形で最良のものを選びたい人も多いように思います。

 ネット通販であれば、決済までは数クリックで済みます。どんなに技術が進歩しても、このスピードにリアル店舗が勝てることは恐らくないでしょう。であれば、店側はそうしたスピードを競うのではなく、違った工夫が必要なのかもしれないと思います。

 商品を重さや手触り、香りなど五感で感じる楽しみ。その場にいなければ得られない体験。相談や人との会話。リアル店舗でなければできないこと、分からないことはたくさんあります。ネットショップもリアル店舗もどちらにも優れた点があり、消費者は言語化できなくとも何となくその良さを感じ取り、うまく使い分けています。

 実際にリアル店舗で働いていると、商品を手に取れる、実物を見ることができる、お試しできるなどの購買価値は、どの店舗でも当たり前で忘れがちです。しかし本当は、そうしたものこそとても大切なことなのです。その利点をもっとお客さまに体感してもらいましょう。

 リアル店舗では「商品を選ぶ部分」に、時短を求めてはならないのではないでしょうか。最初の声掛けであるファーストアプローチのタイミングも、お客さまが悩んでいる間にどんどんマシンガントークを仕掛けるのも、根底の問題は同じところにあるように思います。