ハマチ1尾を高齢女性にどのように売る?

鈴木:「木村君が精肉バイヤーなら僕は鮮魚チーフだ。こちらも料理のイメージをしっかり持っていることが豚肉スライスの事例と似ている」

木村:「負けず嫌いな鈴木君。で、どんな話?」

鈴木:「ハマチって知ってるだろ、出世魚の!」

木村:「フクラギ、イナダ、ハマチ、ブリと魚体が大きくなるにつれて、呼び名が変わってくる魚でしょ?」

鈴木:「フクラギって何? 初めて聞いた!」

木村:「ブリの一番小さいヤツ、地方によって言い方が違うみたいだ。北陸ではそう呼ぶらしい」

鈴木:「木村君はまた知識をひけらかして! そのハマチの話。ある時、非常に鮮度が良いハマチを仕入れることができた」

木村:「どんな売り方をしたの?」

鈴木:「超特価1尾480円で裸売りをしたんだ」

木村:「それじゃあ、売れないんじゃないの? 三枚におろさなければいけないし、量が多過ぎるのでは?」

鈴木:「これからがいい話なのだ。鮮魚チーフが売場でハマチの前で考え込んでいる高齢の女性を発見した。そこで『奥さん、お買い得ですよ』と声を掛けた、ところが『大きな魚だし、2人では食べ切れない』と残念そうに答えが返ってきた」

木村:「そりゃあ、そうだ!」

鈴木:「そこで、この鮮魚チーフは『2人で3日間飽きずに、おいしく食べられるメニューを提案しましょう』と切り返した」

木村:「へぇ、興味あるな。どんなメニュー提案したの?」

鈴木:「1日目、新鮮なので、半身を今日中に刺身にしてお召し上がりください。2日目は塩、コショウ、パン粉にまぶして香草焼き、最後の3日目はハマチの混ぜご飯はいかがでしょう? こんな感じ!」

木村:「その鮮魚チーフの料理の知識、大したもんだ!」

鈴木:「このチーフ、メニューレシピと保存方法を教えただけでなく、ハマチを三枚におろして、刺身の部分は切り分けてお渡しした」

木村:「そりゃあ、ファンができるね、この店舗には!」

勉強をしていたので、良い提案ができた

 この鮮魚チーフもお客さまをキチンと見ていたから、良い行動を取ることができました。また、自分の仕入れた商品に自信があり、勉強していたから、お客さまが満足できる提案もできたのです。

注文した刺身の盛り合わせを見て……

木村:「鈴木君、何かおつまみを頼もうよ。ハマチの刺身があるみたいだから、刺身の盛り合わせを頼んでみる?」

鈴木:「うん、そうだね。それと、揚げだし豆腐、ホッケも」

 最初にテーブルの届いたのが刺身の盛り合わせでした。その魚種ごとの量を見て2人は顔を見合せました。2人前を頼んだのですが、ハマチが10枚、マグロ赤身が10枚、甘エビが8尾と多過ぎるのです。学生がコンパで頼んだかの量でした。