国道から店舗を臨む。木目の方向をランダムに切り替えた外装。左手奥に見えるのがアルビス明倫通り店。

 広域型ショッピングセンター(SC)への出店を中心に成長を続けてきた無印良品。従来250坪前後だった標準店をアップスケールしようと、500坪級の店を2022年までに100店に増やす計画で大型店の出店を進めている。

 だが、そのSCを軸にした出店戦略にも変化の兆しが表れてきた。駅ビルなどに出店し日常の便利な買物を支える小型店「MUJI com」はその一例だ。09年に業態を立ち上げたが、じわじわと着実に店数を増やす。7月には武蔵野美術大学の市ヶ谷キャンパス(東京)内に初の大学構内店を開く。

 それだけではない。4月には石川県の国道沿いに無印良品としては初めてロードサイド立地の路面店をオープンしたのだ。これは出店戦略の「進化」なのだろうか。実際に店を訪れてみた。

国道沿いのSMの敷地内に600坪の大型店

店舗入り口には地元石川県産のスギ材を、風除室には能登ヒバを用いるなど北陸地方の木材をあちこちで使用。店舗正面の巨大な板や什器の一部、ベンチには黒部ダムなどに流れ込んだ流木材を再利用。

 石川県中部に位置する金沢市のベッドタウンである野々市市の郊外。DCMカーマやユニクロ、ヤマダ電機が立ち並ぶ幹線道路である国道8号線・金沢バイパスと接続する国道157号線沿いにその店はあった。

 木目張りなど天然素材を使った外観で平屋建てのこの店は「無印良品 野々市明倫通り」。北陸3県でスーパーマーケット(SM)を展開するアルビス(富山県射水市)の明倫通り店の敷地内に4月20日にオープンした。

 売場面積は北陸最大級の600坪。同社24店目の500坪級の大型店である。このため同社の標準的な7000アイテムのほぼ全てがそろう。

店に入ると正面に婦人ウエアとそのシーズンの戦略商品(写真)、左にヘルス&ビューティ、右に家具やインテリアなど住空間の売場が目に入る。
ヘルス&ビューティ売場。整然と並んだ大量陳列が美しい。
リビング、ファブリック売場。天井付近の柱は流木材の再利用。この店は自然との調和や自然の持つ力強さを店舗デザインや内装で表現している。

 特徴的なのは店舗のやや左奥に四角い中庭を設けていることだ。野々市市の人口は約5万人で増加基調。特に子育て世代の伸びが高い。中庭の周りに子供服や遊べるスペース、子供向けの本など配置。親子が居心地良く滞在できるベンチやソファをしつらえた。

店舗内に中庭を設けた。店内に外光が入り、自然を感じさせる他、中庭にもシンボルツリーとして福井県産のヤマボウシの木を植えた。
子供服に隣接して小さな子供が遊べる木育広場を設置。左に中庭が見える。
オープンMUJIではタオルを使ってテディベアを作るワークショップやジェラート職人を招いたトークイベントを開いた。くつろげるように100円コーヒーも用意。MUJIブックスでは5000冊を扱う。

 迷路のような導線も特徴だ。「大型店は奥まで歩いてもらえないのが課題。だからあえて不規則な導線と什器配列を採用してお客さまの視線を遮り、わくわく感を高めた」と良品計画の松橋衆売場開発・VMD部部長は話す。

松橋衆売場開発・VMD部部長。

 さらにレジを店奥に配置し、購買頻度が高い食品をレジに隣接させる形でお客の回遊性を高めている。

 サービス機能も充実させた。例えば、中庭や同社17店目となるイベントスペース「オープンMUJI」を利用して「食」「子育て世代」「地域活性化」をテーマにイベントやワークショップを定期的に開催。地域住民が集うコミュニティスペースを目指している。

 同社がロードサイド店の展開に乗り出した背景には、金井政明前社長時代に決めた「大戦略」=「役に立つ」の存在がある。この下で出店戦略の面でもあえて近年衰退してきている地域や地方の商業施設に出店し、その活性化や再生に取り組もうというのが狙いだ。

 地域の役に立つ店を開き、情報を発信。町のコミュニティ拠点になることで地方創生に一役買う。このため「生活の基本」の中でも最も基本的な「食」の領域で活躍する地域のSMと組んで出店することを選んだという。

オープンMUJIの裏では「ノノイチ to GO」と題して周辺の観光スポットや見どころを大きな地図で紹介。
レジのそばにある食品売場。人気商品のレトルトカレーやバウムなどが並ぶ。近くには北陸初となる冷凍食品がケース3台で展開。
紳士インナーと紳士ウエア売場も中庭沿いに配置されている。

 開店後は絶好調。当初10日間の売上額が全店でベスト10に入るなど予算と比べても2桁以上の伸び。開店時はレジ前に50人が並ぶなど圧倒的な客数を集めた。特に食品が好調だが、大型の家具類はいまひとつだという。

 では今後の展開は――。物件は幾つか挙がっているというが、2号店など今後の展開は「検討中」(同社)。

 ただ今回のSM隣接型の出店は食品だけでなく小物類や靴下・肌着類まで波及し、ロードサイドで売れる可能性を示した。松橋部長は「これが出店戦略の一パターンとして確立できれば、広域型SCよりも販売効率が上がるかもしれない」と話している。

  • 無印良品 野々市明倫通り
  • 所在地/石川県野々市市堀内4-95
  • 敷地面積/約2万4132㎡
  • 売場面積/約2000㎡
  • 営業時間/10時~21時
  • 駐車台数/403台
  • 開店日/2019年4月20日

 

 
 

※本記事は『販売革新』2019年6月号の「無印良品の『進化』」という特集の中で掲載されたものです。内容は取材当時のものです。

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