麻(リネン)は「理念」 オーガニック化を推進

 綿と並んで無印良品が大切にする天然素材は麻(リネン)だ。麻は世界市場の9割が欧州で生産され、うち8割近くがフランス製だ。無印良品でもノルマンディ地方の麻を使用してきた。だが「ユニクロ」や「グローバルワーク」でもフレンチリネンを使う時代に、どこで無印良品らしさを出すかを徹底的に考え、一足先にオーガニック化を果たした綿に麻も続くことを決意。オーガニックリネンの世界生産量はわずか1100tにすぎず、価格の高騰が見込まれていた。

 そこで生産者を訪ね回り、中国・天山山脈の麓にある新疆を開拓。実は麻は長く連作できないため菜の花や麦などと交代で生産する必要がある。ましてオーガニックにシフトすることは生産者にとっては大きなリスク。途中で取引が打ち切られたら死活問題だ。

 無印良品のスタンスや目指すべき世界を丁寧に説明。自然を守りたいという生産者の思いと合致し、安心して物作りに打ち込めるような長期的なパートナーシップを締結することができた。

「麻(リネン)は『理念』にもつながる」と無印良品は考える。手間はかかるが丁寧に発掘・交渉することで、安定的な供給ルートを開拓。19年春夏から使用する麻の4分の1がオーガニックになった。4~5年間かけて全量オーガニックリネン化を図ることで、また一歩、無印良品がサステイナビリティ(持続可能性)の面でも前進することとなった。

 他にも天然素材で作った機能性インナーを投入。通常はポリエステルやアクリル、レーヨンなど合繊を使うことが多いが、大手メーカーと2年以上研究を重ね、天然のオーガニックコットンで吸放湿性と速乾性を強化した夏インナーを開発。またアウトドア系のインナーの鉄板といわれるウールのインナーも開発。抗菌防臭性のあるウール素材を開発するとともに、通年の定番アイテムへと昇格させた。さらにウールをオーガニックコットンで包んだ糸を使い、吸湿発熱性と高い保温性を持つ商材も生み出している。

 他方、オーガニックコットンを使ったはっ水加工スニーカーや日本の技術を駆使して吸汗速乾やUV(紫外線)カットなどの機能性を持ちながらも人工的・工業的に見えないコットンタッチの素材を使ったアクティブライン「ムジウォーカー」などもヒット。今春夏からは、ASEANに専用工場を開設して量産化を可能にした縦横4ウエーに伸びるジーンズが売れ筋になった。

「文脈商品」で現地の文化や伝統を継承

伝統や暮らしの知恵由来の「文脈商品」。日本の伝統織物や、パジャマの原型になったインドのクルタなどを展開。人と地域をつなぐ「祭り」に欠かせない伝統衣装から作った日常着も。右がインディゴで染めた法被、左が滝流れ織りで作った浴衣。

 さらにこの1年で取り組みを強化しているのが「文脈商品」だ。国内外の地域に根付いた素材、伝統的な織りや生地などの紹介で「文脈を捉え直した商品」という意味だ。

 インド独立運動の資金調達のためガンジーが生産を促した高級テキスタイル「カディ」を量産化した商品もその1つだ。150~160年の歴史がある手紡ぎ、手織りの織物で、上級品ではシャツで数万円の値が付く。

 けれどもこの職人技はごく一部の人しかできず、習得にも年季が要る。織り上がりに時間を要する。傷やむらなどの不良品も発生しやすい。そこで糸の番手を太くして、むらや傷も“味”と捉え、高級品仕様では1日3mの1人当たり織り高を11mに目標を高めた。製品不良にも苦慮したが、4月に開業した銀座店を皮切りに、パンツ2型を販売することができた。

「今のままでは廃れる技術を継承すること」と「インドの綿をインドで紡ぎインドで織り、インドで縫製してインドや世界で売ること」などを通じて、独自性ある商材開発につなげていく。

 日本でもステテコ用だった高島縮をシャツやパンツなどアウターに使用。江戸時代に阿波で生まれた独特の凹凸感を持つ「しじら織り」を使った甚平なども販売。さらにトルコ綿をインディゴ染めしたり、オーガニックデニムで作った法被も生まれたりしている。

 メンズの売場拡大や物流改革による適正在庫化でロスを削減するなど、他にも貢献した要因はある。だが何といっても創意工夫と生活者や生産者とのつながりの見直しなどによって、無印良品の衣料品は「進化」し、独自性が「深化」していることが、衣服・雑貨の大きな好調要因ではないだろうか。

 

 
 

※本記事は『販売革新』2019年6月号の「無印良品の『進化』」という特集の中で掲載されたものです。内容は取材当時のものです。

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