無印良品の衣料品の綿は再生コットンを含めて全てオーガニックコットンを使用している。

「無印良品」の衣服・雑貨が好調だ。2017年度の売上げは前期比13.6%増で、18年度も11.9%増と2桁の伸びを続けている。その理由は生活者の暮らしや生産者と向き合い、価格、素材などを含めて「無印良品らしさを突き詰めていること」に尽きる。

 良品計画の松﨑曉社長はこの2年間「衣服・雑貨は極めて好調だ」「靴下から先行した価格見直しが奏功した。リピーターの多い靴下や下着類、パジャマなどの価格を下げたことで買上点数が伸び、全体の客数増にも寄与した」「ウールシルクやヤクウールといった天然素材を使ったアイテムが好調」「店舗を500坪型へと大型化する中核商品が食品と衣服・雑貨だ」などと語ってきた。

価格の見直しが絶好調の引き金になった

 衣服・雑貨が好調に転じるきっかけとなったのは価格の見直しだった。

 実は同社は原材料や人件費の高騰から14年秋と15年秋に値上げしたのだが、その結果、お客が離れた。支出を抑えるシビアな消費者は増えており「品質を上げて価格も上げる」施策は通じなかったのだ。

 そこで16年秋に方針を転換。17年春には「豊かな低価格。」と銘打って衣服・雑貨や家電、布団など200品目を値下げし、17年秋には衣服・雑貨110品目を値下げした。

 さらに「新価格宣言。」を昨年3月に実施した。これは標準店で展開する約5600品目のうち約2400品目の価格を見直したもので、実質的な主役は衣服・雑貨であり、靴下の主力商品である「えらべる3足」シリーズなど125品目を値下げした。

足なり直角靴下の「えらべる3足」シリーズ。かつて1000円だった売価を15年12月に円高対応で 1200円に値上げしたが苦戦し、16年8月に990円に値下げ。18年2月からはさらに890円へと引き下げた。今年8月30日からは何と790円へとさらに値下げする。

 効果はすぐに表れた。18年度上期の既存店の客数は8.2%増え、中でも衣服・雑貨の客数は13.5%増と急増。衣服・雑貨の販売点数は13年度に比べると約2倍に増加した。

 松﨑社長は「生活の基本領域を極め、お客さまともっとつながりたいと考えた。けれども靴下のシェアを調べたらわずか1%台だった。生活の基本の商品ならばマーケットシェアで2、3%、できれば5%取りたい。そこで16年に靴下の価格を見直し、その後も段階的に価格を引き下げていった」と明かす。

 単に荒利益を削ったのではない。代替素材の開発やスケールメリットの創出、デザインや製法の改良・合理化をはじめ、安価な人件費や関税措置などを求めて中国からASEAN(東南アジア諸国連合)地域に生産拠点を移管、取引工場も集約し、品質を維持・向上させながら無駄な生産工程を省くなど合理化によって値下げを実現したのだ。

 靴下の物作りでは素材や製造方法をちょっと良くする「改良」ではなく「改革」を目指して編み方自体を刷新。締め付け過ぎず、ずり落ちにくく、しかも低コストで製造することを可能にした。「足なり直角靴下」は耐久性を高めるため強度を向上。紳士は綿の混紡率を下げて摩擦に強いポリエステルの割合を上げると同時に、爪先とかかとにナイロンの補強糸を使って編み立てた。ナイロンの補強糸は婦人のスニーカーインソックスの爪先部分にも使用。値下げと品質向上を両立させることで、販売数量を飛躍的に伸ばした。

 他の衣服でもシャツの前立てを2枚仕立てから1枚仕立てにして生地を節約したり、ボタンを薄くした。パジャマやインナーではステッチを減らして、着心地の向上と工数の削減を同時実現するなど、価格引き下げのためのデザインの工夫をしてきた。

ヤクを独自開発 綿は全量オーガニック化

 特にこの3年で強化してきたのが天然素材だ。14年から商品開発者が世界の産地を訪問し、シーズンにより種付けや収穫を経験。生産過程を知り、原料の大切さに思いを深め、生産者とつながりながら物作りをしてきた。

 17年に販売を開始し、18年秋冬のヒット商品に浮上したのがヤクウールだ。高地に生息する体調2~3mのウシ科の動物で、カシミヤヤギに比べるとワイルドな風貌で剛毛のように見える。だが内側の毛はカシミヤと遜色がないくらい滑らかで保湿性、保温性がある。カシミヤの原毛価格が高騰する中、高品質なヤクの原毛を調達するルートを開拓、商品開発に乗り出した。

 調達先はチベット。標高3000m以上の高地でヤクを放牧する人々と直接取引。現地を訪れ、日本人を初めて見たという人々と白酒(パイチュウ)の杯を交わしながら親睦を深め、安心して生産できるように全量買い取り契約を交わした。

 防縮加工を施したメリノウールとミックスし、風合いの良さと手入れのしやすさを兼ね合わせたセーターや手摘みで収穫したオーガニックコットンとヤクをブレンドしたシャツやブラウス、ワンピース、ソックスなどを開発。

 18年秋冬からは繊維の太さのバリエーションを広げ、無駄なく使用できる商品群を開発。ハイゲージのきれいめなセーターやケープからざっくりとしたミドルゲージのセーター、さらにはすいた際に分別される太い毛をラグなどに使用し、ヒット商品となった。

 無印良品にとって最も大切な天然素材が綿(コットン)だ。最も身近な素材だが世界の農薬使用量の約4分の1が使用されるなど農薬や化学肥料などが大量に使われ、地球環境や綿の生産者への影響が問題視されてきた。

 無印良品では20年以上オーガニックコットンの割合を増やしてきたが、18年からは使用する綿の全てをオーガニックコットンに切り替えた。しかもそれを言い立てず、当たり前のこととして19年からは商品名「オーガニックコットン」の表記を外したりもしている。無印良品の思想の「深化」と商品の「進化」を実現した象徴的な出来事だ。

 定番のブロードシャツについては、手摘みで収穫した新疆(しんきょう)の超長綿のオーガニックコットンを採用。通常、農薬を使わず遺伝子組み換えもしないオーガニックコットンは世界の綿花生産量の0.5%といわれている。そのうち繊維が長くて光沢のある超長綿はわずか数%という希少性の高さだ。これを無印良品価格で実現するために新疆の生産者と長期計画を立て、種まきから協業したという。