放送、映画、音楽、漫画、アニメ、ゲームも含めた知的生産物を取り扱うことを「コンテンツ・ビジネス」と呼ぶ。店頭ではさまざまなコンテンツを取り入れたプリントTシャツの品揃えが華盛りだ。定番キャラクーに加え、ロードショーに合わせたプロモーション、企業コラボ、周年企画とアパレル小売りにとってコンテンツ・ビジネスへの取り組みは年々重要度を増しているように感じる。

半袖Tシャツの着用が急増している!

 ココベイ(株)が毎月行っている定点観測資料をまとめたグラフに注目してほしい。この表はヤングメンズ(推定年齢20代前半~30代)を対象に、渋谷から原宿の中間くらいの地点で着用実態調査をまとめたもの。各年度の6~8月にかけて夏のスタイリングを計900~1000人分がサンプル数となる。

 

 目を見張るべきは「半袖Tシャツの着用率の高さ」。特に3年前の2016年ごろからの急速な伸びは、トレンド発信者としての役割を担っている若者市場を中心に夏のTシャツスタイルが急激に増えていることを示している。2016年はお洒落な若者を中心に原宿エリアの古着店等の人気が再燃し始めた頃で、大阪の「サントニブンノイチ」が原宿にオープンしたり、タレントのりゅうちぇるの個性的なファッションが注目されたりした頃にあたる。 

 もう1つ、注目したいのが「プリントTシャツの着用率」。ファッショントレンドの変化パターンの1つに「無地→色→柄」の順でトレンド変化が生まれるケースがある。そのパターンに従えば11年前の水準にまで至っていないものの、半袖Tシャツ全体の着用率上昇とともに、これからのプリントTシャツの伸長度に期待がかかるのも必然的と考えられる。

 だから、Tシャツとの親和性が高いコンテンツ・ビジネスが重要だと思っているのだ。

日本発のディズニーの新キャラクターも登場

 日本のコンテンツ・ビジネス史の中で、大成したモデルケースの1つに東京ディズニーランドが挙げられる。1983年の開園から今日まで来園者数を順調に伸ばし続け、2001年のディズニーシー開園以降、その数は2施設合わせて年間で3200万人を数えるほど。そんなコンテンツ・ビジネスの老舗・東京ディズニーランドで今年、完売御礼のキャラクター商品が産まれた。

 その名は『うさピヨ』。春先に行われるイースターイベントに関連して作られた新キャラクターだ。この新キャラクターは米国ではなく日本発のディズニーキャラクターとなる。老舗コンテンツ・ビジネス企業でさえ、イベントを盛り上げる起爆剤の1つとして新キャラクターを開発したわけだが、これは「新規性」とディズニーランド内でしか販売されない「希少性」が組み合わされたケースといえる。

ユニクロUT『KAWS』では争奪戦が繰り広げられた

 

 先日、テレビのワイドショーも賑わしたユニクロUTの『KAWS』コラボTシャツ。中国本土で繰り広げられた激しい争奪戦の模様や日本の銀座店にオープン前に列を作っている人たちの様子がテレビでも取り上げられていた。日本国内では中国のようなパニックは見られなかったが、それでもインバウンド客が多く訪れる店舗では発売当日か2日目でこのTシャツが完売した店舗が多数出たようだ。

 ユニクロ側もここまでの反響は想定していなかったようで、全国のユニクロ店舗で展開している『KAWS』商品を主要店舗に集結させて再販して完売させるよう。中国人を中心にここまで人気が集まった背景には『KAWS』とのコラボレーションが今シーズン限りといった「希少性」が刺激されたと考えられる。

『愛は地球を救う』のチャリティTシャツは今年も人気

 そして、イオン。毎年取り組んでいる日本テレビ主催のチャリティ番組『愛は地球を救う』のチャリティTシャツの販売をしている。今年のチャリティTシャツのデザインを手掛けたのは嵐の大野智さん。前評判も上々で発売当日の6月15日から売り切れ店舗が続出し、オンラインストアでも完売状態。売り切れ店舗では、次回入荷予定日(6月27、28日)を告知して対応している。収益金はチャリティにまわるので喜ばしいことではあるが、衣料品不振の続くイオンにとってチャリティイベントであってもTシャツ目当てに来店が見込まれる訳で、こうした嗜好属性のはっきりとしたお客に向けた品揃えを、逃さず提案すべきだろう。

しまむらはターゲットを絞った取り組みを進める

 しまむらもコンテンツ商品への取り組みは積極的。周年イベントでは『ももクロ』や『YouTuber』とのコラボレーション、そして世界に3億人のユーザー数を誇るバトルロイヤルゲームの『荒野行動』をはじめとした『艦これ』『アイドルマスター』『刀剣乱舞』などだ。その中でも根強い人気があるのは『新日本プロレス』コラボで、他社での取り扱いの少なさも影響しているのかもしれない。

 なかなかモノが売れない時代にあって、こうしたターゲットを絞ったアプローチは、ある程度の売上げが見込めるものの、ファン以外からは見向きもされないことから需要分母が限定的というデメリットもある。そのため、一時的な特需を取り込むだけではなく、継続性のあるファン作りを目指すような取り組みが必要になる。

広島東洋カープのグッズは球団経営の柱になった

 面白いところでは、ファンの心酔度が高いことで有名な広島東洋カープ。特にグッズの品揃えのバリエーションは他球団と比較にならないほどに充実している。2019年カタログを見ても人気キャラクターとのコラボレーションやアパレルブランドとのコラボレーション、往年の選手をあしらった商品やグッズデザインに特徴を持たせたシリーズなど実に豊富。こうしたカープグッズの売上げは約54億円に上り、今や入場収入と並ぶ球団経営の柱となっているそうだ。

 親会社を持たない市民球団として創設された経緯もあって、昔から地元からの熱烈な支援はあった。それが2013年に初めてクライマックスシリーズに進出、2015年の黒田博樹投手、新井貴浩選手の復帰を引き金に、今や地元民でさえ観戦チケットがなかなか手に入れ難くなるほどの人気球団に成長した。リーグ3連覇という強い球団になったことも大いに影響していると思うが、それ以上に球団関係者がファン層の拡大と継続性のあるファン作りに取り組んだケースとして参考にしたい事例だ。