2018年の訪日外国人客は3119万人(前年比8.7%増)を超えて過去最高値を記録した。内訳は中国、韓国、香港、台湾の東アジアが73.4%で、東南アジア、インドで11.4%、欧米・豪で11.6%となった。

 1人当たりの旅行支出は15万3029円。これは2030年に想定している想定額よりも約10万円も低い数値となっている。では、どうにすればこの差額を埋められるのだろうか。

 解決策の1つとなり得るお土産部門の話と、訪日外国人客のこれからについて、6月19日(水)に札幌で開催された「インバウンド需要をつかむ!お土産開発」セミナーでの解説を紹介しよう。

>前回の記事「日本のお土産が訪日外国人にウケない理由」はこちらから!

訪日外国人の消費動向は常に変化している!

 現在、訪日外国人の増加とは裏腹に1人当たりの消費額が伸び悩んでいる。その理由は、日本製品の輸出拡大により、訪日して買っていたものが現地で買えるようになったことや、リピーターが増えて大型出費がなくなったことなどが挙げられる。

 そして、中国のインバウンド消費の変調だ。これまで伸びてきたショッピングの減速が先行した代わりに、旅行期間が長期化している。中国を中心としたアジア人旅行客は繰り返し日本を訪れて、ベテラン旅行者として成熟してきた結果、ショッピングに対する基準が厳しくなってきているわけだ。

 また、欧米の訪日客も極東の日本に来るようになっている。世界で一番高いお金を掛けて、一番遠い所へ行くこともあり長期滞在が多く、超過手荷物料金も高額なのでショッピングでは重いものを嫌う傾向にある。

訪日外国人にはワサビなどの辛い食べ物が人気

 そうした結果、お土産のインバウンド消費は日本ならではのモノで、賞味期限が長くかさばらばらないものが好まれるようになっている。具体的には、食品ではワサビなどの辛い食べ物、非食品では絵葉書が非常に人気だ。

 今後は、賞味期限や持ち運びの負担を考え、レトルトパウチの活用や収納しやすい筒状の容器、フリーズドライ商品などが主流になっていくと考えられる。もちろん、魅力ある商品であることが大前提だが、ここでしか買えないことをしっかりと訴求し、ストレスを感じずに自国へ持ち帰ることまでを考えてお土産の開発をする必要がある。

Wi-Fi環境の不備と商品の写真NGという問題

 魅力あるお土産の開発と同時に必要なことは、Wi-Fi環境の整備だ。日本の小売店ではWi-Fi環境のない所や、商品の写真NGというお店が多い。この時点で商品を売るチャンスを逃している。

 では、なぜ、そうしたことが必要なのか。

 海外では、日本の場合よりも流れてくるSNSの情報から購買意欲を高めて、購入に至るケースが多く、普段の生活とSNSが密接な関係となっている。

 気に入ったものや写真映えする商品をSNSにアップするだけで不特定多数の人々が見ることになるわけだが、このプロモーションには一切お金が掛からないため、お店の最強のプロモーションになるのだ。訪日客が撮る写真の画角に入るよう、店舗宣伝のステッカーを貼れば、どんなお店なのか分かりやすくなり、さらに宣伝効果が上がる。

 特にアジアからのリピーターは欧米人がSNSでアップしたものを買う傾向が強いので、これまで以上に欧米からの訪日客を取り込む必要があるが、実はまだ欧米の訪日客が少ないという問題を日本は抱えている。特に少ない欧州では、全体で年間6.7億人が海外旅行をしているが、その8割が自分の住んでいる欧州の域内の旅行で、残りの2割の1.4億人が域外を旅行。欧州からの訪日客(18年)は約100万人と圧倒的に少ない数値となっている。

 

 そうした欧米からの訪日客を獲得するチャンスが今年のラグビーワールドカップだ。

 既存インバウンド重点国(中国、韓国、香港、台湾など)以外の国が出場するため、普段は日本にあまり来ない欧米の国々からの訪日が予想される。ラグビーワールドカップは9月20日~11月2日まで全国の会場で開催されるので、長期滞在して日本各地を回るという人も多いだろう。

 欧米人がSNSを通じて日本の魅力を拡散することで欧米だけでなく、アジアからの訪日客の増加も見込め、今後4~5年でインバンドの数字が大きく変わる可能性もある。

 だから、Wi-Fi環境の整備は消費を促すためにも急務となるわけだが、これ以外にも、訪日外国人の困り事対応の事業化、キャッシュレス対応といった、モノを買う時のストレスの軽減も消費額の増加には必要だ。現在、検疫代行、空港配送、海外別送、受け取り代行といった事業も行われているが、今後は宿泊先やお土産店でそのサービスを紹介することで、今までなかった消費が増えるかもしれない。

 そして、お土産のインバウンド消費は、訪日外国人の特性を理解した上で開発されたものが人気商品となってくるだろう。日本のここでしか買えない、持ち運びも便利という点をしっかりと訴求することが消費の底上げにつながる。

 モノを売るための環境整備を整えば、小売店側も日本の魅力を伝えるお土産を売ることに集中できる。そうした点でも、まずはWi-Fi環境を整えることがお土産「インバウンド」消費拡大のカギになっているといえるだろう。