ワクワク系(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を、われわれはそう呼んでいる)のあるカーテンメンテナンス会社の社長からのご報告。今回は、自社サービスの価値化を通じて、社員にとっても仕事の価値が変わっていったお話だ。

 同社での「メンテナンス」は、病院の病室まで行ってカーテンを交換する仕事だが、この仕事、多くの同業他社がアルバイトで賄う中、同社は創業時から正社員にこだわってきた。だが、この仕事は遠方の現場になると早出・残業が多く、体力的にも大変な現場仕事。他の営業・事務等の職種に比べ人気も無く、離職率も高い職種だった。

 同社は10年ほど前から、業界で価格競争が加速する中、ワクワク系の学びと実践を開始。ワクワク系の価値創造活動に踏み込む中で、必然的にメンテナンスの価値創造活動もスタートした。

 顧客にとって、同社が正社員でこのサービスを提供する価値は何か。それは、責任感を持ち、現場で気遣いやコミュニケーションをしながらカーテン交換をしていく“ホスピタリティ”を発揮できることにある。この価値にフォーカスし、顧客に訴求するようにし、このホスピタリティを発揮し、喜んでいただけた事例を社内で集め、評価する等の取り組みを続けていった。

 また、5年ほど前からカーテン交換のスピードを競うイベント「カーテンツリンピック」をスタート。顧客にはニューズレターで発信し、誰が勝つかを投票してもらうことで絆作りを図った。

 結果、顧客もメンテナンスの仕事に興味を持ち、応援してくれるだけでなく、現場でメンテナンスの仕事を見にきてくれたり、積極的に会話をしてくれるようになった。現在、毎年のツリンピックは、メンテナンスメンバーにとって1年に一度の大舞台となっている。

 そうして現在、社長が入社した当初男性8人だったメンテナンス部隊は、男性8人、女性3人の11人となった。昨年4月に新卒入社した女性3人は全員がメンテナンス課を志望するという状況で、メンテナンスという仕事は同社で最も人気のある職種となったのである。

「今年の新卒採用においても、メンテナンスの仕事に興味を持つ人が多いです。実際これ以上は増やせないので、メンテナンススタッフは現在募集していません」と彼は笑う。そして、「なかなか人が来ない、来ても辞めてしまうと言っている会社は、自社の仕事の価値化が足りないんじゃないか」と、かつての自社の反省を込めて言う。

 顧客に自社の商品・サービスの価値を分かってもらい、さらなる価値をも提供するべく行うワクワク系の価値創造活動。それは顧客や業績だけでなく、社員をも変えていくのである。

※小阪裕司先生の連載最新回は、毎週金曜日の午前5時に公開します。「これまで公開した記事」と併せてお読みください