訪日観光振興に取り組む一般社団法人ジャパンショッピングツーリズム協会(Japan Shopping Tourism Organization 以下、JSTO)が5月21日(火)、東北支部設立記念講演会を開催した。講演では、東北観光の課題と現状、方策を語った一般社団法人東北観光推進機構の小縣方樹会長の発言に注目が集まった。

 その発言内容の前に、まずJSTOとはどのような組織なのかを紹介しておきたい。JSTO は、ショッピングを軸とした訪日観光プロモーションを通じて、日本の魅力(おもてなし・こだわり・くらし)が凝縮されたショッピングツーリズムを世界に伝え、世界中を旅するグローバルショッパーに「ショッピングといえば日本」と思い出してもらい、「日本をショッピング大国に!」と掲げた設立6年目の協会である。

 主に、日本でのショッピングの魅力を世界に発信し、より多くの訪日ゲスト(訪日外国人観光客)を迎えて、国内小売事業者に対しての受け入れ環境の向上を図るなど、さまざまな観光プロモーションを展開している。今回は、JSTO東北支部の設立に際し、記念講演会を開催した。

東北への訪日ゲスト数は全国一の伸び率を見せたが……

 2018年、日本の訪日ゲスト数は3119万人を超えて過去最高を記録する中、東北でもその動きは拡大している。2018年の東北6県(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)+新潟県における訪日外国人旅行者数は約149万人で過去最高となり、2010年と比べて約2.5倍にまで増加した。これは全国10ブロックの中で最も大きい伸び率だ。

 

 こうした事情に小縣会長は「高い伸び率になった要因の1つは、仙台空港が民営化されて国際線の直行便が増えたこと。もう1つは仙台を拠点に東北を周遊する旅行者が増えたこと」を挙げた。

 仙台〜台北便は、東日本大震災後はわずか週2便だったが、現在は週13便にまで拡大。その他、青森や花巻など各地の空港にも直行便が就航している。また、国内へ入国してから東北への広域移動の実態を見ると、関東から東北へ移動する訪日ゲストは58.3%、次に東北から東北への移動が33.9%にのぼることが分かった。

 

 しかし、その一方で小縣会長は課題も指摘した。「対前年比でインバウンドの伸び率は東北が最大だが、日本全国のシェアでいうと東北6県+新潟県はわずか1.9%。震災前の2010年の2.4%にも届いていない」という。

 日本を訪れる訪日ゲストは関東(37.9%)、近畿(23.3%)で半数以上のシェアを占めており、以下、北海道(9.5%)、九州(8.8%)、中部(7.3%)、沖縄(5.4%)、北陸(3.3%) 、中国(2.1%)の順で、その次に東北6県+新潟県(1.9%)となっている。

4つの施策で「世界の東北」を目指す!

東北観光推進機構 小縣方樹会長

 前述の要因を小縣会長は「東北は日本全体から見て地理的に埋没してしまう条件の不利がある」と分析した。

 現在、東京〜富士山〜京都・大阪のゴールデンルートを周遊する訪日ゲストは多く、東北への流入が低い傾向がある。

 実際に、1回目の訪問エリアは、最北端の北海道(770万人)、最西端の九州(751万人)、最南端の沖縄(462万人)、首都・東京(1978万人)、古都・京都(556万人)、そして東北6県+新潟県(138万人)となっている。北海道、九州、沖縄、東京、京都、大阪に比べて、東北はどこにあるのか認知されておらず、訪日回数を重ねないと来ないので、豊かな四季など魅力的な観光資源があるにも関わらず、観光スポットや周遊の仕方、楽しみ方が分からないという状況に陥っている。

 

 そうした課題を解決するためにも、「今こそ東北の観光振興に、東北各県の自治体・地域DMO(観光地域づくり法人)・JNTO(日本政府観光局)・民間企業とともに、オール東北で取り組む」と小縣会長は意気込み、2020年までに訪日ゲストの宿泊者数200万人の達成、東北エリアの認知拡大を目指すために4つの施策を挙げた。

①東北各県知事とともに海外でのトップセールスを実施

②戦略的プロモーションとYouTubeなどを活用した情報発信

③都市・観光地単独ではなく、広域で観光周遊するルートや楽しみ方の提案

④データに基づく施策の展開

 
 

東北支部設立で商業者と活動に注力できる体制に

 JSTOでは東北支部設立によって、東北観光推進機構をはじめ、JNTO、東北エリアの百貨店や商業施設、各地の商店街などと一緒に活動する環境を整え、参加する事業者とともに、より一層のおもてなしで訪日ゲストを迎える機運が高まりつつある。

 今年の冬には、ショッピングフェスティバルの実施などを予定しており、東北エリアのネットワークを十分に生かして、組織としての連携を取りつつ、さらに融合した情報発信が可能になる。今後のJSTOの活動により、東北のインバウンドがどのように変わっていくのか注目してもらいたい。