5月26日、北海道佐呂間町で、5月としては全国観測史上最高気温となる39.5℃を記録した。この時、皆さんは昨年の猛暑を思い出し、「もうあの暑さが間近に来てしまったのか!」と思われたことだろう。私は暑いのがとにかく苦手で、この先の数カ月の過ごし方を少し想像するだけでぞっとしてしまった。

 昨年の夏は猛暑だったが、今年はどうなるのだろうか。気象庁が5月24日に発表した6月~8月の3カ月予報では、気温はほぼ平年並みで、降水量は平年並みか多い見込みとされている。特に7、8月は東日本・西日本では平年に比べ、曇りや雨の日が多い見込みとなっている。

 とはいえ、地球規模の温暖化は進み、日本でも1990年代以降は年を追うごとに年平均との気温差は広がっており、“暑さ”と向き合った暮らし方を私たちは考えていく必要がある。

 そこで、今回は猛暑だった昨年の食生活実態から、生活者の行動変化を理解し、小売業として支援すべきことは何かを見つけていきたいと考えている。

 食生活実態を把握するために、弊社の食卓データベース『キッチンダイアリー』を活用していく。『キッチンダイアリー』は京浜・京阪神・東海エリアにお住いの20歳~79歳の主家事担当女性から、毎日の食卓のメニューや使った食材のデータを継続的に収集しているデータベースである。

夏の食事シーン(朝・昼・夕)は気温によっても変わる

 今回は猛暑日(平均気温が35℃以上の日)でのメニューや食材の特徴を把握するため、平均気温が30℃を超え始めた6月25日から、30℃を下回り始めた9月1日までの69日間を対象に、猛暑日と猛暑日以外でのTI値(1000食卓あたりの出現回数)を食事シーン(朝・昼・夕)別に比較してみる。また、京浜地区と京阪神地区では気温の状況も異なるため(図表①、②参照)、それぞれを対比して見ていくこととする。

図表① 最高気温の推移(大阪 2018/6/16~9/14)

 

図表② 最高気温の推移(東京 2018/6/16~9/14)

 

忙しい朝は効率的な栄養補給がキーワード

 まずは朝食シーン(図表③参照)から見てみると、京阪神では桃やスイカといった水分量の多い果物が伸びていることが分かる。『朝の果物は金。昼の果物は銀。夜の果物は銅』というヨーロッパのことわざがあるように、果物は猛暑で疲れた体にひんやり感、さっぱり感を与え、かつエネルギーや水分を効率よく補給するには、まさにうってつけの食材であるといえる。

 また、調理になるべく火を使わないものとして、シリアルや食パンをそのまま食べているシーンが多くなっている。京浜でも同様に梨やブドウの果物と洋朝食メニューが伸びている。

 こう見てくると、「猛暑時の朝食提案」は売場提案の1つの切り口になるといえるだろう。例えば、時間がないため、調理いらずですぐに食べられるカットフルーツをしっかり訴求したり、また京阪神では桃、京浜では梨が上位にきていることから、それらを近場の産地からフレッシュな状態で品揃えしていることなどを前面に出すことも有効といえる。

図表③ 猛暑日にTI値が高まったメニュー・材料(朝食シーン)

 

暑い昼時は「麺類」つけ合わせの薬味がポイントに

 昼食シーン(図表④参照)はおよそ皆さんの想像通り、そうめん・冷麦といった冷たい麺が多くなっている。夕食シーンでも同様に伸びており、食材ではミョウガ・ショウガ・ワサビ・シソ・ノリ等の薬味が増えている。調理に手間を掛けずにサッと食べたい時に、味にアクセントを加えてくれる香味野菜の薬味セットはとても重宝するものだが、少し遅い時間に買物に行くと既に売切れていることが多く、非常に残念な気持ちになるもの。

 暑い中で買物に来たときにこそ、しっかりと品揃えをしてくれるスーパーマーケットだと好感が持てるし、信頼度もアップする。気温に合わせた品揃えの大事なポイントとして、是非検討してみていただきたい。

図表④ 猛暑日にTI値が高まったメニュー・材料(昼食シーン)

 

多くの食材を試してもらえる「夕食」どう訴求するか?

 夕食シーン(図表⑤参照)に目を移すと、東西ともに冷ややっこの伸びが顕著になる。豆腐は各店舗の売り方が凝縮されている売場の代表選手でもあり、豆腐に注目が集まる時期。商品訴求や食べ方のアドバイスなどを売場で行うことで、普段は食べないワンランク上の商品を、いかに試していただけるかが、腕の見せ所となる。

 また、火を使わない代表格として刺身が挙げられる。こちらは夕食に向けた夕方の品揃え・鮮度管理がポイントとなる。他にもナスやトマト、ゴーヤといった夏野菜も伸びているが、いずれも調理加工は多くなく、素材の味を楽しむのが猛暑時の食生活の要点であると考えられる。一つ一つの食材のおいしさや鮮度がより一層お客さまに求められ、各店舗の実力が試されるのが、“暑い夏”といえる。

図表⑤ 猛暑日にTI値が高まったメニュー・材料(夕食シーン)

 

生活に寄り添う売場提案で新たな発見を

 体調の変化も大きくなるため、塩分やクエン酸といった夏の体に必要な栄養素をうまく取り込むための売場提案も、お客さまとの関係強化には大事なポイントとなる。暑い中、お客さまの移動距離も自然と短くなり、その環境下で来店いただいたお客さまに新しい発見と感動を与えられるよう、生活者の行動に基づいた売場提案を進めていきたいものである。