事業承継はAEO社にもメリットが大きい

 18年度末でAEO社は「アメリカンイーグル」934店(うち米国内800店)、「Aerie」独立店115店(うち米国内97店)、同「アメリカンイーグル」併設店舗147店を直営で展開しているが、他に世界24カ国でフランチャイズ店舗を231店展開している。その中でイーグルリテイリングの34店舗はイスラエルの47店舗に続く規模だ。

 AEO社の直営海外店舗は カナダの104店舗(うち「Aerie」18店舗)を除けばメキシコが38店舗、中国が4店舗、香港が6店舗にすぎず、日本でイーグルリテイリングが展開する34店舗(現33店舗)を入手するメリットは決して小さくない。低迷しているとはいえ、少なからぬ投資をして顧客がついた店舗群をペナルティを払ってまで閉店させるのは合理的でないし、ゼロからそれだけの投資をすることを思えば割安に店舗網と顧客を入手できる。イーグルリテイリングの事業承継はAEO社にとってもメリットが大きいのだ。

 AEO社はECを81カ国で展開しており、直営店舗網を布陣しているマーケットではECサイトでの店舗在庫検索と取り置き、店舗での受け取りや返品、店在庫引き当てによる店出荷というC&Cを実践している。イーグルリテイリングが運用する日本のECサイトは店舗との連携がほとんどなく、サイトから店舗在庫の検索もできないし、EC商品の店受け取りも返品もできない。EC受注への店在庫引き当てや店出荷も行われていない。イーグルリテイリングの店舗網を承継すれば、米国同様なC&C体制を構築して短期で業績を回復できると目論んでいるのかもしれない。

「アメリカンイーグル」は日本で復調するか

12年4月、開設時の1号店(東急プラザ表参道原宿)。

 人種のるつぼといわれる米国市場で成長したアメカジ系SPAは、アングロサクソン系やラテン系の欧州SPAに比べると日本市場とのフィットの乖離が小さい。「ZARA」のメンズなど、明らかにフィットが乖離している。「アメリカンイーグル」もアメリカンサイズだが、もとより多様なエスニックに対応する多サイズ展開で、フィットが壁になっているとは思えない。「GAP」はジャパンフィットに注力しても苦戦しているから、アメカジ系SPAにとってフィットは大きな壁ではないようだ。

 アメカジだからテイストのギャップも小さいが、米国AEO社から指示される?コンサバなスタイリング(トミー・ヒルフィガーも同様)はオワコン臭がするし、ジャストフィットでは抜けた着崩しも楽しめない。日本市場にマッチするリミックスの効いたゆる抜けスタイリングを訴求していけば、もっと顧客を広げられるはずだ。

 ドームウエア感覚のアスレカジュアルも「Aerie」とつなげていけばウィメンズではカバーできるが、メンズではストリートブランドやスポーツ/アウトドアブランドとのコラボによるスポーツミックスを加える必要がある。メンズはウィメンズよりオーバーサイジングで、リミックスもスポーツ/アウトドアアイテムを外せない。加えて、「Aerie」を独立展開すれば、日本市場でも米国同様なブレイクが期待される。

 価格も「GAP」のように大きな日米価格差があるわけでなく、ローカル(日本)のカジュアルチェーンとも大差ない。課題となるのは品質感で、縫製仕様は価格相応としても、素材のクオリティは「ユニクロ」がデファクトスタンダードとなった日本市場の“大衆品”水準とは格差がある。堅牢度もともかく、密度感とか着た時の物性感がややチープなのだ。

東急プラザ表参道原宿の1号店の店内(12年4月の開設時)。

 ジャパンフィットにはスタイリング訴求で対応できても、ジャパンクオリティは素材から変えていかないと実現できない。フランチャイズと直営、どっちが柔軟なローカル対応ができるのだろうか。

 日本市場に適応しやすいアメカジ系SPAさえ音を上げるのだから、もとより乖離が大きいファストファッションSPAなど人気が剥げ落ちれば採算のめどが立たなくなる。次はどこが旗艦店を閉めるのか、全面撤退するのか、外資SPAの撤退ラッシュはもう止まらない。