東急プラザ表参道原宿にある1号店(2019年6月10日撮影)。

 幾度か指摘してきた外資SPAの撤退が、また1つ現実となった。青山商事が米社のフランチャイジーとして展開する「アメリカンイーグルアウトフィッターズ」事業から撤退することを決めた。

青山商事がアメリカンイーグル事業から撤退

 青山商事は6月7日、米国アメリカンイーグルアウトフィッターズ社(以下AEO社)とのフランチャイズ契約を2022年2月の期限を待たず解消し、「アメリカンイーグル」事業から撤退すると発表した。

 

「アメリカンイーグル」は2010年に青山商事90%、住金物産10%の合弁で設立したイーグルリテイリングが米AEO社のフランチャイジーとなり、12年4月に東急プラザ表参道原宿の明治通り路面に1号店を開設。ピークの17年3月期には34店舗を展開して148億円を売り上げたが、国内カジュアルチェーンとの競合やファストファッションの退潮で既存店売上高が84.6と失速し、15億円の営業損失に転落した。

 翌18年3月期は持ち越した在庫の処分や投入の抑制で期末在庫を3割圧縮し、AEO社へのロイヤリテイ減額など販管費を8億円圧縮したものの既存店売上高の2桁減が続き、店舗数が変わらないまま売上高は136億円に減少して8億円の営業損失を計上。直近の19年3月期も、下期こそ既存店売上高が97.9と回復したものの上期の83.5が響いて通期では89.8と2桁減を脱せず、売上高は123億円に減少し営業赤字も13億円に肥大。もはや黒字回復は困難と見て、事業の撤退を決断したと思われる。

 17年3月期に売上げが失速して赤字転落し、同年5月にイーグルリテイリングの株式評価損8900万円、同社への貸付金貸し倒れ引当金37億2100万円、計38億1000万円の特別損失を計上した段階で業界では撤退は時間の問題との見方が広がり、私を含め早期の撤退を進言する専門家もいたはずだ。それでも復調を期待して事業を継続したのは、『採算度外視ももう限界!ブランド旗艦店が消えていく』で指摘したような旗艦店撤退やAEO社との違約による巨額の損失を懸念したからだろう。

 5月15日に開催された19年3月期決算説明会では20年3月期計画にアメリカンイーグル事業の売上高128億円/営業損失10億円が計上されていたし、5月29日に開催された定時株主総会でも撤退の発表はなかったから、6月7日の撤退発表までに事態が急転したと思われる。それは米国AEO社への事業譲渡交渉が進展したことに他なるまい。フランチャイザーへの事業譲渡なら全店舗を閉めて膨大な撤退損失を被ることもないし、フランチャイズ契約の中途解約ペナルティも回避できる。

米国AEO社は本格復活

 日本では低迷しているとはいえ、米国AEO社の業績は復活基調を継続している。18年度(19年2月2日終了)決算では「アメリカンイーグル」、カジュアルインティメイトの「Aerie」とも過去最高の売上高を記録。「アメリカンイーグル」は既存店売上高が16四半期連続して増加、「Aerie」は同じく17四半期連続して2桁増を続けている。

 

 AEO社のピークは00年代で、リーマンショックを契機としたファストファッションの台頭に押され、「アメカジ御三家」と言われたアバークロンビー&フィッチ社とAEO社、エアロポステール社の業績は急落したが、17年頃からファストファッションが失速するのと交代するように「アメカジとジーンズ」という米国のローカルカジュアルが復調。御三家のうちエアロポステール社は16年5月に連邦破産法を申請して破綻、アバークロンビー&フィッチ社も路線転換を余儀なくされたが、AEO社は「Aerie」の大ブレイクもあって「アメリカンキャンパスカジュアル」という路線を大きく変えることなく順調に復活してきた(「Aerie」はアメリカンキャンパスガール・ドームカジュアル&ランジェリー)。

 17年以降は世界的にファストファッションが失速して各国のローカルカジュアルが急速に復活しており、米国では当然、アメカジとジーンズが復調しているが、世界でも特異なローカル化が進むわが国では、ゆる抜けなナチュラルカジュアルに続いてマルキューカジュアルが復活し始めても、アメカジとジーンズの復調には勢いがない。カジュアルがオーバーサイズなスポーツミックスやゆるいアスレカジュアルに流れる中、伝統的なアメカジは苦戦しているのが実情だ。伝統的なアメリカンキャンパスカジュアル路線を変えないで済んだ「アメリカンイーグル」が日本市場で苦戦するのは福が転じての災いなのかもしれない。