あるワクワク系(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を、われわれはそう呼んでいる)のペットショップからのご報告。

 同店が店のファサードをリニューアルし、これまでなかったセットバックのスペースが少しできた。そこで店主は、このスペースを何かに活用できないか考えた。植木鉢や花壇を置いてきれいにしつらえたり、ワクワク系的にはこういうスペースにA型看板を置いて、道行く人たちの動機付けに使ったり、コミュニケーションのきっかけにする例も多い。

 あれこれ考えた中で店主がやったことは、ここにブルドッグ型のベンチを置くことだった。ある展示会でこのベンチを見つけ、「これだ!」と思い即お店に電話。スペースの寸法を測ってもらうとジャストサイズ! 早速購入した。そして、単にそれを置くだけでなく、どうせならお客さんから名前も募集しようということになった。

 そうしてこのブルドッグくんはお店にやって来た。入り口横のスペースに彼を置き、そこにこう書いた張り紙をした。「俺は座れるブルドッグ。ここのガードを固めて守り神的な役割でここに居るのさ。俺にはまだ名前がない。俺にぴったりな名前をみんなで考えてくれないか。応募用紙に書いて渡してくれ」。そしてその脇に応募用紙を置いておいたのだった。

 店主は、道行く人、すなわち、お店の顧客でもない見知らぬ人たちが関心を持ってくれるものなのか、この張り紙で動機付けができているのか不安だったが、始めてみると40人ほどの応募があり、半数は顧客以外の方だった。また、張り紙をしている期間中この文章を読んでいる人を多数見掛け、朝店の前を掃除していると「名前決まった?」などと声を掛けられ、手応えを感じていた。

 そうして集まった33種類の名前を今度は道行く人たちにも投票してもらい、一番得票数の多かった名前に決めることとし、そこでも投票数は47票。結果、“まもる”という名前に決まったのだった。

 こういう営みが意外と見知らぬ人を巻き込むことは、ワクワク系ではよくあることだ。もちろん、事は店頭においてだけでなく、ネットやさまざまな舞台で起こる。また店主は今回のことで、こんなきっかけでペットを飼っていない人までもが参加してくれ接点ができるのであれば、これをきっかけにペットを飼い始めたり、ペット商品以外のものを商うことができるのではないかと気付いたと言う。このようなささやかな実践を通じて意外と、商いの道は広がっていくものなのである。

※小阪裕司先生の連載最新回は、毎週金曜日の午前5時に公開します。「これまで公開した記事」と併せてお読みください