イラスト/永谷せん

 例えば、私たちが服を買うとき、高価な服を買う場合はなおのこと、できるだけ念入りに選んでより良いものを買おうとしますよね。

 予算を頭に入れつつ、その範囲内で最高のものを買うため比較検討し、用途に合うか、他店にもっとベターなものがないかなども確かめて、ようやく購入に至ります。

 そこまでして最高のものを手にしたはずなのに、私たちはしばしば「思ったより良くなかった」「もっと安く買えたかも」「他の服の方がよかったなぁ」などと思い悩むことがよくあります。

 これは選択肢が多過ぎる現代ならではの悩みかもしれません。選択肢が増えることは良いことですが、その多さ故に現代人は過剰なストレスを抱え、選択肢の呪縛にはまり込んでしまうことがあるようです。

  そんな、自分で決めたことに頭を悩ませてしまう人のことを心理学者バリー・シュワルツは『マキシマイザー』と名付けました。その一方、手にした結果に満足する人のことは『サティスファイアー』と命名しました。

  さて、あなたは自分をマキシマイザータイプだと思いますか? それともサティスファイアータイプの方だと思いますか?

 どちらのタイプが良いというわけではありませんが、ストレスをためにくいのは後者のサティスファイアータイプだと思われます。

  シュワルツ博士も、自著『なぜ選ぶたびに後悔するのか—選択の自由の落とし穴』で、選択肢が多くなり過ぎるとあまり幸せにならないという。意外なようでうなずける事実を、昨今の心理学の成果をもとに明快に示してくれています。

 服選びに限らず、仕事というのはある意味、決断の連続です。そのたび、「ああ、あっちにしておけば良かった」「失敗したぁ」と後悔していては、神経はすり減るばかり。精神衛生上よろしくないことは明らかです。

 この文章を読み、「自分にはマキシマイザーの傾向があるかも」と思われたとしたら、クヨクヨしないためのちょっとしたコツがあるのでご紹介しましょう。

 自分の決断に自信が持てなくてクヨクヨしてしまったり、モヤモヤしたものが取れない場合は、洗面所へ行ってしっかり手を洗いましょう。石鹸の泡と一緒に、モヤモヤも下水口に流れていってくれるはずですから。

「えーっ、そんなことぐらいでクヨクヨしなくなるの?」と、不思議そうに眉をひそめる方がいらっしゃるかもしれませんが、これは心理実験でも確かめられているのです。

 ミシガン大学の心理学グループの研究によるものなのですが、何かの意思決定を行った後に手を洗うと、自分の決断に自信が持てるようになることが実験で証明されたのです。

  そういえば、神道では邪念をはらい、心を清めるために“みそぎ”と称して滝行などを行うことがあります。滝行とまでいかなくても、神社やお寺でも拝む前に手と口を清めます。すると、なんとなく心身共に清められ、気持ちが改まったような気がするものです。

  そうした風習は単なる儀式というだけでなく、私たちの思考や意識に実質的な変化をもたらしてくれるのですね。それと同じような効果が洗面所で手を洗うという行為でも得られるということ。

 もし、自分のした決断に迷いを覚えたときは、一度試してみてはいかがでしょう。