企業の市場参入が相次ぎ、オーガニックの価格競争が激化しているアメリカの小売業界。

 この10月、「365バイ・ホールフーズ・マーケット」シルバーレイク店を訪れた。

 この店では、今のスーパーマーケット(SM)に必須のキーワード「オーガニック」をあえて前面に出さず、売場にfarm to tableの考え方を導入、「おいしさを体感できる場」を提供していた。また、店舗面積(840坪)の60%以上を占める中食売場(加工食品や日配品も含む)での「旬のおいしさを感じさせる演出」が、お客に自主商品の「365」を手に取らせる流れを構築していることも分かった。

 オーガニックの先駆者 ホールフーズ・マーケットが開発した新業態「365バイ・ホールフーズ・マーケット」は、これからのSMが何を付加価値にすべきかを教えてくれる。

この業態が伝えようとする3つの価値

 今回は、farm to tableの具体的な戦術を分析した。

 この業態が伝える価値とは、(1)「コスパがよい」、(2)「安全で安心な商品が買える」、(3)「便利」だ。体によい生活を求めている来店客は、売場に点在するオーガニックの商品を見ながら、この3つの価値を実感していく。

<エントランスを入った正面>

・コスパ売場に入ってすぐの正面には旬のfarm(生産地)採れたてのオーガニックグレープ(450g1ドル65セント〈通常は2ドル50セント〉)が陳列されていた。

 種無しグレープを旬のオーガニック2種類に絞り、3房ほど入ったビニールパックを各種25袋ずつ計50袋余り陳列。グリーンとレッドのグレープが埋め尽くすカラフルな売場は、この業態がオーガニックでも旬にこだわる鮮度重視の店であることを印象付ける。

・安全で安心グレープが陳列されている左のテーブルには、「ホールキッズクラブ」(ホールフーズ・マーケットが主催する子供の健康を考えるサークル)の案内と体に問題のない歯磨き粉やアーモンドクラッカーのサンプルが置かれていた。特に日々使う非食品や加工食品で、非オーガニックだが安全で安心できる品揃えをセレクトしている点を強調。健康なライフスタイルを完結できる品揃えがあることをアピールしている。

・便利サンプルを展示するテーブル越しに見えるのは、深いグリーンの看板に目立つ黄色で描かれた5ドル、10ドルの文字だ。その下には荒利益率40%はあるガーベラなどの花束が35~40束陳列され、「旬の花で花束を」という用途で提案している。

 5ドル(日本でいうとワンコイン)と10ドルで買えるボリューム感いっぱいの花束は、束を解いて家庭用に使える便利さがあり、「体によいおいしい食事」の時間を楽しむ食卓には最適な商品だ。

2つあるコストダウンを可能にする工夫

 farm to tableの売場には、お客にこうしたおいしさのイメージを伝えつつコストダウンを可能にする工夫が施されている

<エントランス入って左側すぐ>

・ベジタブルアレー店内に入ってすぐ左奥の一角、15坪弱のエリアにオレンジの文字で「COME ON IN」の看板を掲げ、ベジタブルアレー(野菜の路地)を設置している。

 低めの温度で管理された葉物中心の生鮮売場(オーガニック比率は約10%ほど)では、ゴム引きの作業服の従業員がケールやパセリなどの生鮮品をハンドピックしながら並べる。その風景はまるでfarm(生産地)から今、野菜が搬入された卸売市場だ!

 売場も鮮度重視で、農場直販のファーマーズマーケットさながら。お客は縦に立体陳列されている大根やルッコラ、ネギなどをジュースやサラダ、副菜として吟味し、好きなものを自分でスケールにかけ、価格ステッカーを貼っている。

 売場づくりに人時のかかる野菜をこの一角に集めた点がポイントだ。すぐ裏にあるバックヤードから従業員が来て、短時間で売場の手直しや品出しができ、作業時間の短縮につながる。

・レストランクロエベジタブルアレーの横には、ヴィーガンの第一人者クロエのレストランがテナントとして入店。ニューヨーク発ロサンゼルス初出店のレストランで、白黒のストライプが目立つ屋根がおしゃれだ(ビーツケチャップのイラストと、100%ヴィーガンの文字がある)。

 

 ここでお客は、調理されたスーパーフード(キノア)とケールのサラダ、そしてビーツ(さとう大根)のフレンチフライ(油ではなく熱風で調理)などを味わうわけだが、そうした人に、この新業態で同じ(新鮮な)食材を購入すれば、わが家のtable(食卓)も「おいしい」メニューで彩られるに違いないと思ってもらうのが、この狙い。日本のように試食販売をすると人手がかかるが、この機能をテナントのレストランにしてもらうことで、ローコスト化しているわけだ。