ワクワク系(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を、われわれはそう呼んでいる)では、顧客との絆作りを必須の活動としている。その際、「絆をどのようにして計測するのか?」という質問を頂くことがある。絆づくり活動をしていく中で、顧客との絆ができてきているかどうか、できてきているとしたらどの程度できているのかを、どうすれば測れるかというものだ。このコラムでお話ししているように、絆作りの「測れる」成果は、計測可能なものとして現れる。それは、顧客の流出率や、顧客1人当たりの年間購入金額、さらには荒利益率といったものだが、そういう数字が見えてくるまでには少し時間が掛かる。では、それまでは何を頼りにすればいいか。その参考になる実践のご報告を頂いた。

 報告は、ワクワク系のある通販会社からのものだ。同社では絆作り活動の1つとして、14年にも渡って、顧客とのコミュニケーションツールであるニューズレターを発行してきた。新たにその編集長となった彼女は、今までより一層顧客との絆を深めるべく、紙面に新たにスタッフ全員の「お話コーナー」を設け、リニューアルした。このコーナーは2つのトピックでできていて、1つは、スタッフたちの最近あった出来事の中の良かったことや新しかったことを、もう1つは、「みんなの○○話」として、読書好きなスタッフは「本の話」を、食通なスタッフは「おいしい話」を語るというものだ。ちなみに、こういうものを専門的には「自己開示情報」というが、人と人の精神的距離を縮めるのに大いに役に立つ。

 さて彼女はこれらのリニューアルを行った上で、顧客との絆が深まったかどうかも把握しようとした。そこで注目したのが、顧客からのお便りの内容の変化だ。

 そこに着目してみると、目に見えた変化があった。今までは、同社が販売している商品に関するお便りが多かったが、スタッフに対するお声が増えてきた。また、さらに目を見張ったのは、特定の顧客らのお便りの変化だ。

 例えば、Aさんは、最初のお便りは同様に商品の使用感だったのが、次のお便りでは「編集の○○さん」と自分に声を掛け、自分がコーナーに書いた話題に触れ、さらにその次にはコーナーに書いた話題に触れた上で「うちの娘は~」と、お客さんの側も自分のことを話し、会話しているようなものに変わってきた。こういう変化をしっかり確認でき、彼女は絆作り活動の手応えを改めて感じ、さらに絆を深めるべく、ニューズレターの改良を考えている。

「変化」というものには、「量の変化」と「質の変化」がある。そして、量の変化は目に見えやすいが、質の変化は見落としやすい。しかし質の変化が、売上げ・収益・顧客流出数など量の変化をもたらすので、質の変化はキャッチすべき重要な事象だ。「絆」はどう測ればいいか。その答えの1つは、「質の変化」に着目することなのである。

※小阪裕司先生の連載最新回は、毎週金曜日の午前5時に公開します。「これまで公開した記事」と併せてお読みください