前回は、日本で個店経営が言われる理由を明らかにしました。今回のテーマは「チェーンストが目指すビジョン」。江口大雅君(小売業への就職を希望している男子学生、大学4年生)と一緒に、チェーンストアの「ご利益」について話を進めていきます

 編集部:前回、わが国で個店経営が言われる理由が明らかになりました。それは「日本では卸価格の8~10%の流通費で、個店にバラで商品を届ける卸が発達していること」。米国では、チェーンストアの発達により、医療用の医薬品以外では、その卸がなくなり、チェーンストアは、DC(ディストリビューションセンター:集配センター)を起点とするセントラル・バイイングをしていることも示しました。

 メーカーから店舗までの商品流通の違いを見ると、重要なのは、今後の見通しに思えます。日本でもチェーンストアが発達し、卸が消え、米国のようなセントラル・バイイングに向かうのでしょうか。卸売業に非常に関心が深い点でしょう。

 吉田:現在、各業界の大手チェーンでは、衣食住のナショナルブランド(NB)商品では、DCやTC(トランスファーセンター:移送センター)起点の補充取引をしているところが多いのです。DCは、店舗に定番補充をする商品在庫の約2週間分を保管し、個店に配送しています。

TCとDCではセンター・フィーが発生

 吉田:TCは在庫を持たず、店舗の発注商品をまとめて卸やメーカーに発注し、入荷した商品を、店舗に配送する、物流の仕分け機能を持つものです。

 DCやTCには、個店配送費として、メーカーや卸から、3~5%のセンター・フィーが支払われています。チェーン型小売業の営業利益の50%や60%以上を占めているのがこのセンター・フィーです。

チェーンストアでは商品開発が鍵

 吉田:わが国で卸がなくなっていくかどうかを判断する鍵は、DCやTC取引が増加傾向にあるかではなく、チェーンストアが海外を含む最適コストの工場で行う商品開発が増えるかどうかです。

 単にセントラル・バイイングの額が増えるかではなく、小売業の商品開発が主流になるように増えるかどうかです。以前、大手卸の顧問をしていたこともありますが、小売業の海外開発商品では、卸が関与するのはコスト的に難しいことが分かりました。

 これに対して、単にDCやTCの場合は、卸または卸から営業機能をカットした物流業が委託を受けることも多いわけです。

今後、わが国の卸はどうなる?

 吉田:他方、チェーンストアの開発商品が増えていくと、米国や欧州のように日本型の個店へのバラ配送機能を持つ卸も、業容縮小を迫られるでしょう。

 今後、卸がなくなるかどうかとの問いには、私は「わが国では、小売りPBが主流になる業界以外では、個店バラ配送の卸はなくならない」と答えています。

 つまり、卸経由のNB商品の仕入れ価格の高さが許容される競争環境の業界では、卸が活躍できるのです。

 江口:とすると、チェーンストア経営か、個店経営かという問題は、どうなるのでしょう。個店経営のままでもいいとなりませんか? 私や矢内さん(第1回で登場した女子大生)の就職先の選択にも関係して来ます。

 吉田:チェーンストア経営か、個店経営かという問題は、どちらをとればいいかという選択肢の問題ではありません。多店舗経営による流通のコストダウンを追求すると、自然とチェーンストア経営になっていくからです。