最近各社から発行されているQR・バーコード決済を、実際に「やってみた」人はどれくらいいるでしょうか?

 QR・バーコード決済は、主にスマホに専用アプリをダウンロードし、個人の銀行口座やクレジットカード情報等を登録すると使える仕組みです。実は私は、サービス開始当初はなかなかアプリのダウンロードに踏み切れませんでした。普段の会計ではもっぱらクレジットカードを使用して使用金額を管理していることもあり、「種類がたくさんあって、何だかどれがいいのか分からない」「どれが一番便利なんだろう?」と決め手に欠け、あまり決済へのメリットが感じられなかったのです。あちこちに登録して個人情報を開示することにも、何となく抵抗がありました。

 ところが実際に試してみると、同じQR・バーコード決済でも使い勝手には大きな違いがあることが分かりました。使用するためのチャージ方法や使い勝手、使える店舗、ポイントの付き方など、使う前に知っていた情報も、使って初めて腑に落ちることがたくさんありました。

 アプリをダウンロードすること自体は、数分で終わりました。また、ダウンロード初回はお試し用に無料ポイントが付いていて、自己資金の負担なしで買物ができる場合も多いです。それにもかかわらず、各社の使い勝手のまとめや解説サイト、比較表を見て、何となく使わなくても概要を理解したつもりでいたのです。

 しかし自分で実際に試してみて、やり方を読んで知った「つもり」とは、知識に大きな差があると気付きました。臨時収入ともいえる無料ポイントでは、普段なら買わないような商品を買い、消費行動に違いがあることも、自分が使ってみて初めて分かりました。

 個人的には、使える店がすぐに分かり、チュートリアルを見なくても感覚的に使い始められるPayPayが一番使いやすかったです。しかしこれも、自分が使ってみなければ分からなかったことでした。

やった気になっている人が多い

情報は簡単に得られるようになったけれど、体験に勝る情報はない

 最近気になるのは検索したり、人から話を聞いただけで「やったつもり」になっている人が多いことです。

 実際にやることと、人から話を聞くことは全く違います。コメントやキーワードで検索して効率良く情報収集できているつもりになるかもしれませんが、それは第三者やあくまでも他の人が体験した経験をなぞっているだけであって、自分の記憶には残りません。

 例えばどこかに行く際も、本や情報サイト、グーグルマップで事前に雰囲気や口コミを読み込むことは、事前知識を得る上では効率的です。ですが、「百聞は一見に如かず」とはよく言ったもので、やはり実際に行った方が得られる情報量は多いです。

 情報サイトのコメント欄では、「勉強になります」「とても参考になりました」という趣旨のコメントが数多く並んでいます。でも本当に「勉強になる」人は、その情報を知ってから実際に行動する人。もしくは行動した上で、読んで答え合わせをする人だと私は思います。多くの人は「ためになる情報を知ったな~」と思いつつ、翌日には読んだ内容を忘れてしまっているのです。

 小売業や飲食業は、「もの」や「経験」を実際に体験できる数少ないビジネスです。飲食店なら料理を実際に食べてみる、アパレルショップなら洋服を試着したり生地を触ることができます。できる範囲でリアル店舗に足を運び、商品を純粋な消費者の目線で実際に試してみることが何よりも大切です。

 少なくとも、自分の働く業種に関わる新しい情報は、実際に体験してみるべきではないでしょうか? こうした行為を大切に考えている企業や手間暇を惜しまない人こそ、今成功しているように思います。

 実際に「やってみる」ことには、手間も、時間やお金も掛かります。自分になじみのない新しい領域なら、挑戦するための勇気も必要かもしれません。だとしても、あえて不便や使いにくさを感じた生身の「経験」こそが、これからはよりいっそう価値をもっていくのではないでしょうか?

 自分が経験したことを語ると、その話は自然と具体的になって熱を帯び、説得力をもちます。でも一次情報でない知識は、単なるデータに過ぎません。そして誰もが簡単に調べられる情報です。

 情報収集が便利になった反面で、とにかく効率やスピード重視で「やったつもり症候群」が増えている流れを見ていると、最も大事な原点を見失っているように感じてならないのです。