自社アプリの利便性をさらに高めるために、決済サービスまで独自に開発したのが世界最大の小売企業 Walmartである。Walmartも早い段階から公式アプリをリリースして利用者は2000万人を突破していたが、2016年に独自の決済サービス「Walmart Pay」をアプリに追加した。2016年7月には、全米の4600店舗で一斉に利用できるようになった。

 興味深いのは、Walmart PayはApple PayのようなNFC型ではなく、レジの液晶画面に表示されるQRコードをスマホのカメラで読み取るQRコード型のスマホ決済サービスであるという点だ。WalmartのレジにはNFCリーダーが設置されていないのでApple PayやAndroid Payは使えない。追加設備投資をあまり必要としないQRコード型なので、短期間で4600店舗に導入できたといえるだろう。

 なお、Walmartの公式アプリにも店内モード機能が搭載されており、店内に入ると欲しい商品がどこの棚にあるのかを素早く見つけられる機能など、店舗の情報が利用できる。

日本に適したアプリを作るには試行錯誤も

 日本の小売業者の間でも、公式スマホアプリをリリースする動きは広がりつつある。東急ハンズの「ハンズクラブアプリ」は、2014年11月にリリースされて以来、順調に登録者数を積み上げて、2017年3月末には69万人を突破した。しかし、ここにたどり着くまでにさまざまな試行錯誤もあったようだ。アメリカの事例を参考にして多くの最新機能が追加されたためか、利用者からは高機能過ぎて使いこなせない、という声が上がった時期もあった。そこでアプリの主管を開発部署からマーケティング担当部署に変更して、利用者の声に耳を傾けて使い勝手のいいアプリにする地道な努力を続けたことが実を結んだ。

 最新技術を導入することも重要だが、アメリカ企業のやり方が日本市場に適しているとは限らない。アプリで集客や売上げに大きな成果を期待するのであれば、モバイルにそれなりの投資を行って日本市場にカスタマイズされた手法を確立させる必要があるだろう。ネックとなるのはコストなどアプリ開発のハードルの高さであるが、Googleが中心となって推進されているPWA(Progressive Web Apps)と呼ばれるプロジェクトを活用する手もある。

 PWAは、一言で表現するならモバイルサイトでスマホアプリのような機能性を実現しようというもの。PWAのベースとなっている技術が、ウェブのバックグラウンドで動作するJavaScript環境「Service Worker」である。このService Workerをモバイルサイトに組み込むことによって、アイコンをホーム画面に追加したり、スマホ向けにプッシュ通知を送ったり、あたかもアプリのような機能が使えるようになる。

 モバイルサイトの新しいあり方として有力な選択肢になる、と期待されたが、今のところGoogleの期待通りには普及していない。その主な理由は、iPhone向けのブラウザ「Safari」がService Workerに未対応のため、iPhoneユーザがこの機能を使えないことだった。しかし、近いうちにSafariが対応してiPhoneでも使えるようになるのではないかと話題になっている。

 iPhoneでも使えるようになるタイミングで、自社のモバイルサイトをPWAに対応させて、その反応を検証してみるのもいいだろう。アプリの可能性をテストできるとともに、モバイルサイトの集客力改善につながることが期待できる。