前回の記事で配車アプリ・Grabの快適性について書きましたが、私が最も優れていると感じたことは「車がどこにいるかが見える」点でした。タクシーを待っている間も、目的地へ移動しているときも、車がどこにいるかが見えることで「ちゃんと進んでいる!」と視覚的に理解でき、「待ち時間も楽しい」という貴重な経験をしました。

 日本では大型連休や祝祭日が休日の主流となっており、働き方の面でも海外のように分散して休みを取る習慣がまだ根付いていません。そのため、流通・小売やサービス業ではどうしても混雑時期や時間帯が集中しがちで、結果的に多くのお客さまを待たせることになっています。

 行列ができることは人気のバロメーターにもなりますが、スタッフが焦る、お客さま側に不満が生まれるなどデメリットも数多く生じます。そこで、混雑時に店側が取れる対策を実サービス体験から考えてみました。

<待ち時間の演出法>

①「あと〇分」がすぐ分かる

 待ち時間がどれくらいか分からないと人は不安になります。1人にかかるであろう平均時間をお伝えするか、難しければ大体の目安をお伝えするべきです。

 気を付けるべき点は、お客さまの行動によって、伝える待ち時間の表現を少し変えることです。お客さまがその場で待つ場合は、少し余裕を持った時間を伝えれば「比較的早く案内された」と思われますが、見積もりが甘いと「予定時刻を過ぎたのにまだ呼ばれない」とイライラさせてしまいます。

 逆に一時的にその場を離れる人には、予定時間よりもあえて早めの時間を伝えておく必要があります。せっかく戻ってきても順番が飛ばされて、さらに待つことになりかねないからです。状況に合わせて伝えるニュアンスを変えることも大切です。

②完全予約制にする

診療予約システム「i-CALL」の画面。今自分の前にどれくらいの人が待っているかが一目で分かる

 一般的に小児科は、小さな子供が相手ということもあって長時間待たされます。ある小児科では、初診以外は診療予約システム「i-CALL(アイコール)」で、必ず事前予約を取るシステムでした。時間指定ではなく予約番号順で、順番が近づくと自動音声で電話がかかってくる仕組みです。

 ビルの1フロアの小さなスペースだったので待つ場所がないという事情もあったのでしょうが、いつ来院してもいるのは一、二客。他の患者とのすれ違いも少なく、院内で待ったことはほとんどありません。残念ながら引っ越しで通えなくなってしまいましたが、先生の評判も良く、とても通いやすかったです。

 フラッと立ち寄れる良さも店にはありますが、中には美容院のようにじっくり時間をかけて過ごしたい顧客ニーズもあるはずです。待ち時間をなくすためにこうしたシステムを導入する、人気のイベントや担当者を期間限定で予約制にすることもできると思います。

③今どんな状況かを伝える

東京・中目黒の「スターバックス リザーブ ロースタリー 東京」では、混雑時は入場前に整理券が発行され、順番に案内される。どれくらいの人が待っているかが分かるため、外出時も予定が立てやすい

 東京・中目黒の「スターバックス リザーブ ロースタリー 東京」では、混雑時は入場前に整理券が発行されます。受付状況は30秒ごとに更新され、逐一スマホで確認できます。あと〇組待っているかが分かることで、外出時の予定が立てやすくなっています。

 他にも、以前訪れた飲食店での出来事です。スタッフに「どれくらい待ちますか?」と聞いたところ、「ただいま満席ですが、先ほどデザートを出したテーブルがあるので間もなく空くかと思われます」と案内を受けました。「ただいまお席にご案内したばかりなので、お時間がかかると思われます」と別の店で言われたこともありました。

 店内の状況を伝えてもらえると、こちらとしても「待つ」「待たない」の判断がしやすくなります。単に店内の状況を伝えて情報を共有するだけでも、トラブル防止につながるはずです。

④待ち時間の過ごし方を用意する

スシローのスマホアプリ内では「打!打!打!だっこずし」というミニゲームを待ち時間対策に用意

 待っている時間は、順番にソワソワしつつも手持ち無沙汰になりがちです。スシローでは、スマホアプリ内に「ひまつぶし」というカテゴリーを設けてミニゲームを用意しています。バナーには「待ち時間や暇な時に!」というメッセージが付いています。

 特典情報の配信や個人情報獲得のためにゲームを用意しているアプリは多いですが、こうしたメッセージを一言付け加えておけば「そうか、待っている間は退屈だしアクセスしてみよう」と遊んで待っていてもらえる確率がアップします。

 東京ディズニーランド・シーでも、アトラクションまでの待ち列には多くの仕掛けがされています。アトラクションのキャラクターが注意事項やエピソードストーリーを話す、ミッキーの形を模した「隠れミッキー」を壁の装飾に用いるなど、単なる待ち時間にさせない、退屈させないための工夫をしています。

⑤一時離脱を認める

 ③の「スターバックス リザーブ ロースタリー 東京」事例のように、一時外出を認めるのも一案です。その場でただ待つだけでは、お客さま側もできることに制約が出てきます。でもその場を離れられるならば、カフェで休憩する、用事を済ませる、ショッピングするなど選択肢の幅が増えます。単なる待ち時間ではなく、時間限定の自由時間になり得るのです。

 店舗側で整理券を配布するだけなら、「言った・言わない」の防止にもなり、低コストですぐにでも始められます。指定時間にいなければ順番が飛ばされる、受付自体がキャンセルになる可能性などのルールさえ決めておけば双方にとってメリットも多いです。

待ち時間は誰にとっても苦痛

 そもそも待ち時間を伝えるだけでも、通常一客に対してどのくらい時間がかかっているかを知らなければお伝えできません。待ち時間の案内次第では、クレームが生じやすくなります。

 若い人がリアルタイムでテレビを見ない理由の1つに「好きな番組が自由に見られないから」があります。DVDやYouTubeは自分の好きなタイミングで視聴を始められますが、開始時間が決まっているとその番組に合わせたスケジュールを組まなければならず、行動が制限されるように感じるそうです。

 若い人だけではありません。駅で遅延が起きた際、駅員に罵声や怒りをぶつけているのは、私が見る限り中高年の人が多いです。内容をよく聞いてみると「いつ(電車が)動くんだ」という意味の声がほとんどです。終わりが見えない待ち時間は、どの年代にとっても苦痛なのです。

 店側としては、もちろんお客さまを待たせないことが一番ですが、どうしても繁忙期やピークタイムは固定化されがちです。人員が不足しているからこそ、店でできる待ち時間の演出を考えてみてください。