「ジーンズセレクトショップ」は空論だった

 18年8月期決算と同時に発表した『ジーンズの量販店を脱してジーンズのセレクトショップを目指す』という中期計画方針では「ジーンズ量販店」を価格訴求型・重在庫・低回転・低荒利、「ジーンズセレクトショップ」を価値訴求型・高回転・高荒利としていたが、これは現実を見ない空論だった。

ライトオンIR資料より

「セレクトショップ」は確かに価値訴求型だが、ユナイテッドアローズは改善が進んだとはいえ3.34回転(18年3月期単体、以下同)と12〜13年ごろのライトオンと大差ない低回転だし、荒利益率も同50.8%とライトオンの48.5%と大差ない。加えてライトオンより販売効率が高いだけ(同511.5万円/坪)、格段に重在庫(同153万円/坪)だ。販管費率も同45.3%と高く、ライトオンの46.7%と大差ない。6割を超えるPBの高荒利と19年3月期で20%に達するECの高収益で利益水準を確保しているのが現実で、「ジーンズセレクトショップ」を(軽在庫)・高回転・高荒利としたのは幻想に過ぎない。

 一方で「ジーンズ量販店」を価格訴求型・重在庫・低回転・低荒利としたのは現状を是認したにすぎず、長年の体質を変えられないものと思い込んでいるが、ここにこそライトオンの悲劇がある。

 価格訴求型といっても、カジュアルトップスはともかくNBジーンズの価格は1万円前後とユニクロなどSPAのPBジーンズに比べれば法外に高価だ。値引き訴求されてしまうのは「価値」が価格に見合わないかサプライチェーンが非効率に過ぎるからと喝破すべきなのに、是認してしまうところに全ての過ちが始まっている。

NBジーンズはVMIサプライに転換せよ

 サプライチェーンが非効率だから消化歩留まりが低位に留まり、その分、原価率が切り詰められて価格に見合わない「価値」になってしまう。80年代初期の倍も割高になって(原価率が半分に切り詰められて)顧客が離反した百貨店NBとNBジーンズは大差ないのが現実で、ならば百貨店NBのように消化仕入れにして小売店の在庫負担を軽減すべきだった。

 NBとはそもそもブランド価値と流通をメーカーがコントロールするもので、小売店や問屋に在庫を買い取らせては価格維持が困難になる。ゆえにNBメーカーは消化仕入れやオンラインVMIで店頭在庫と生産ラインを連携し、サプライチェーンを自主管理するのが好ましい。アパレルでは例外的に国内生産を維持してきたNBジーンズ業界なら十分に実現可能だったはずだ。本来、そうなるべきだったNBジーンズ流通がそうならなかった責任はトップバイヤーだったライトオンにあり、そのツケでNBジーンズ業界もライトオンも凋落していったと見るべきだ。

※VMI(Vendor Managed Inventory):フェイシング設定に基づいて納入業者に在庫管理と補給を委託する方法

 売上高が1000億円を超えていたピーク時のライトオンはジーンズカジュアルチェーン売上げの3割強を占めていたから、SPA化するかNBジーンズメーカーにVMIを要求するか、どちらも実現可能だったと思われる。なのにSPA化も中途半端に終わり、NBジーンズのVMI化は議論にも上がらなかったのが後悔される。

 今やライトオンの売上高はピークの7掛け寸前まで萎縮し、NBジーンズ業界はそれ以上にシュリンクしている。この流れを逆転させるにはウエアリングのアップデートと間口の拡大はもちろんだが、サプライチェーンの抜本的効率化が不可欠だ。

 多サイズ展開が必須のジーンズでは小売店が買い取ってはサイズ在庫を持ち切れず、補給も途絶えて欠品が常態化し、顧客を離反させてしまう。無理して在庫を抱えれば在庫回転も消化歩留まりも苦しく、値引きロスで収益が圧迫されキャッシュフローも綱渡りになる。ライトオンが旗を振って『NBジーンズはVMIでサプライするもの』という取引慣行を切り開いていれば、NBジーンズ流通がここまで凋落することはなかったのではないか。

 今からでも遅くはない。NBジーンズのサプライ慣行をVMIに転換させて在庫効率を抜本から改善すれば、品揃えが豊かになり欠品も減って顧客満足が高まり、販売効率が飛躍的に高まって全てがうまく回りだす。ライトオンが復興しNBジーンズ流通の救世主となるか否か、全ては経営者の構想力とリーダーシップにかかっている。