「脱ジーンズ量販店」は成果があったのか

 隘路を抜け出すためには抜本的な路線転換が不可欠だったが、『ジーンズの量販店を脱してジーンズのセレクトショップを目指す』という路線転換は成果をもたらしたのだろうか。

 半期単位の既存店売上前年比を見ると、16年秋冬(9〜2月)の91.8、17年春夏(3〜8月)の89.8、17年秋冬の90.6から18年春夏は99.8、18年秋冬も99.9と、今一歩で水面は超えられなかったものの確かに上向いている。客単価は17年春夏までの前年割れから17年秋冬は102.9、18年春夏も105.0と上向いたが、客数は17年秋冬が88.0、18年春夏94.3と上向かず、18年秋冬で客単価を99.6に抑えて100.3とようやく浮上している。

 

 この指標を見る限り、品揃えの絞り込みと単価上昇を伴う「ジーンズのセレクトショップ」は必ずしも顧客に受け入れられず、「ジーンズの量販店」は脱しても単価を抑え顧客を絞らない『NBジーンズとアメカジに原点回帰する』という方針に帰着したと思われる。しかし「NBジーンズとアメカジ」では従来路線への回帰にすぎず、「NBジーンズ軸」というマーケットポジションも在庫を抱え込む商品経営体質も何も変わらず、消耗戦の隘路を抜け出す展望は見えてこない。

カジュアルの主流ではなくなった「ジーニング」

「ジーンズの量販店」も「ジーンズのセレクトショップ」も「NBジーンズとアメカジ」もすべからく「ジーンズ」が通底しているが、果たして今日、「ジーンズ」はそんなに普遍的なアイテムで「ジーニング」は普遍的なスタイリングなのだろうか。

 ワークアイテムに始まったジーンズがカウンターカルチャーを気取るファッションアイテムとしてブレイクしたのは60年代末から70年代前半で、以降はさまざまなトレンドアイテムが移り替わる中に埋没していった。90年代デフレ下の「渋カジ」で復活し、80年代の「デザイナーズデニム」を継承した「プレミアムデニム」、加工や風合いにこだわる「ヴィンテージデニム」と高価格化していった果てに00年代の「セレブデニム」でピークアウト。高価格化とともに販売数量は01年をピークに減少に転じる一方、生活に定着した日常アイテムとしてユニクロなどの手頃な「PBジーンズ」に需要が移り、08年のリーマンショックを契機にその動きが加速。09年3月のGUの990円ジーンズ発売以降、急速に低価格化してコモディティアイテムとなった。

 加えて女性就業率が急上昇に転じた13年以降、ヒップラインを強調するスタイリングが疎まれるようになり、「セレブデニム」でヒップラインを競ったイメージを引きずるジーンズは一段と人気を失い、17年から急速に広がった「ゆる抜け」「オーバーサイジング」が前時代のヒップコンシャスなジーニングに引導を渡した。

 17年以降の世界的なモードトレンド離れはカジュアルのローカル回帰をもたらし、「リーバイス」が復調して再上場し、加工デニムやリメイクデニムもアクセントアイテムとして重宝されているが、もはや「ジーンズ」は普遍的なアイテムとはいえず、「ジーニング」というスタイリングも都市部ではあまり見掛けなくなった。「ジーンズ」は生活アイテムとなり、「ジーニング」は気負わない日常のスタイリングになったというのが現実ではないか。

 

「アメカジ」も終わっている

「アメカジ」も今日では、もはやカジュアルの主流ではなくなりつつある。「ノームコア」を経てスポーツ/アウトドアアイテムとドームアイテムを組み合わす「アスレカジュアル」がカジュアルの本流となり、カジュアルとビジカジやルームウエアとの境界も崩れてTPOレス化が進む中、ジーンズと組み合わせる伝統的な「アメカジ」がカジュアルの主流であり続けるのは難しい。

 

 世界的なローカル回帰の中でアメカジアイテムは復活しているが、伝統的なアメカジブランドは米国でも復調の勢いを欠き、「ゆる抜け」なスタイリングに流れるわが国では低迷を脱せないでいる。「アスレカジュアル」や「エクストリーム」、「サロン」や「オルチャン」なウエアリングの中でパターンもサイジングも大きく変貌しており、『アメカジに原点回帰』というのは時代錯誤を否めず顧客の間口を絞りかねない。

 むしろ『伝統的な「アメカジ」にこだわらず今風のストリートカジュアルにタイムリーに対応していく』とするのが正解ではなかろうか。

絶対水位は限界を割っている

 ライトオンの提供する「NBジーンズとアメカジ」がいかに今日のマーケットとすれ違っているか、販売効率を見れば明らかだ。ライトオンの坪当たり売上高は近年で最も高かった16年8月期でも105.6万円/年(8.8万円/月)、直近の18年8月期では96.4万円/年(8.0万円/月)でしかなく、国内ユニクロの343.5万円/年(28.6万円/月)とは3倍以上の格差がある。それは顧客の間口の格差とイコールと見るべきで、マーケットポジションを抜本的に見直す必要がある。

 そんな現実に目を背けて『NBジーンズとアメカジに原点回帰する』といわれては、一段と顧客を絞るつもりかと関係者の不安を募らせるだけではないか。

 

 販売効率の低さは全ての経営効率に影を落としている。NBの仕入れが6割を占めるにもかかわらず商品回転は3回転を割り込んで2.5回転寸前に低迷し、販管費率は46.7%と同期(18年8月期)の国内ユニクロの34.5%を12.2ポイントも上回り、給与水準に直結する1人当たり売上高は2091万円と同期の国内ユニクロの3052万円の68.5%に留まるが、これでは優秀な人材を採用して健全な世代構成を維持するのも難しい。

 諸悪の根源は「NBジーンズとアメカジ」を基軸としたマーチャンダイジングにあるのは明らかで、それを継続する限り抜本的な経営効率の改善は望めないのではないか。