ワクワク系(このコラムでお伝えしている商売の理論と実践手法を、われわれはそう呼んでいる)ではイベントの企画・開催を奨励しており、実際、実践会の会員企業はBtoC、BtoBを問わず、大掛かりなものからささやかなものまで、多くのイベントを開催している。奨励する理由の1つは、イベントでお客さんと交流できることやお客さんに喜ばれることが絆作りにつながるからだが、たまに耳にするのが、「イベントをやって、喜ばれてはいるのですが、なかなか売上げにはつながりませんね」という声だ。そこで今日はこういう話をしよう。あるおでん屋さんからの報告だ。

 このおでん屋さんがイベントを行った。それは『おでん総選挙』。同店が出している数十種類のおでんの中で一番好きなものを投票してもらい、ランキングを決めるというお客さん参加型のイベントだ。投票してくれた方には、さまざまなプレゼントが当たる特典もある。そしてイベントは大いに盛り上がり、1カ月で約1200人の投票を得たのだった。

 と、これだけをいえば、「イベントをやったら大いに盛り上がりました」という話で、ここで終われば、喜んでもらえたが売上げにつながらない、イベント期間中は上がったがその後は戻ってしまった、という類の話になりかねない。しかしこの店は違った。なぜなら、そもそもこの『おでん総選挙』には、「イベントで盛り上がる」「総選挙中の売上げを上げる」以上の目的があったからだ。それは「新規名簿を作ること」である。

 顧客名簿を作ることは、ワクワク系では重要な取り組みだ。名簿があればつながることができ、そこから再来店や次の購買を生み出すことができるからだ。では名簿につながる個人情報をどうすれば頂けるか。これは悩ましい問題で、同店も常々、名簿作りを意識しており、常連客もたくさんいるのだが、なかなか名簿は増えなかった。その状況を打開するための施策が、今回の『おでん総選挙』なのである。

 もちろん、総選挙をやりさえすれば自然と名簿が増えるわけではない。同店では投票者に抽選でプレゼントが当たる特典も付けたが、それだけで名簿が増えるようなら苦労はない。そこで同店では、投票の際、住所・氏名等もスムーズに記入してくれるよう仕組みを作り、投票用紙も工夫するなど、さまざまな手を打った。それらがあるからこそ、今回の成果となった。約1200人の投票者のうち、新たに獲得できた名簿は、実に1100人分だったのである。

 同店では同時に、次の来店につながる仕組みも考え、準備し、早速その仕組みは稼働している。それが「喜ばれても売上げにつながらない」から脱却する方法だ。こうして考え、実行していくことで、「お客さんに喜ばれる」ことと「儲ける」ことは、常に良い関係で結ばれていくのである。

※小阪裕司先生の連載最新回は、毎週金曜日の午前5時に公開します。「これまで公開した記事」と併せてお読みください