冷凍ひき肉の解凍に失敗しているお客さまに気配りした生協の例

木村「ひき肉つながりで、生協のお客さまのその後へ気配りの話がある」

鈴木「今のスーパーマーケットの社長に対抗できるくらいの話?」

木村「そりゃあ、もう……鈴木君も料理が好きだと思うけど、ひき肉で困った経験ない?」

鈴木「ある、ある、うちのかみさんがよくぼやいている。解凍がうまくいかないって」

木村「そう、その話。生協の店舗には必ず会員が集まる集会所があるの知ってる?」

鈴木「知ってる! 生協の店長やバイヤーがそこでお客さま情報を収集しているんだ」

木村「そこで、お客さまから『ひき肉を買って、いつも冷凍保存するが、解凍をいつも失敗している』という声が多く出ていたそうだ」

鈴木「僕もよく失敗する。ミートソースを作ろうと思って、冷凍されたひき肉を半分くらい使いたいけど包丁では切れないので、レンジでチンしたら全部に火が通ってしまい、かみさんからいつも怒られる」

木村「冷凍ひき肉の解凍って、難しいよね。生協のお客さまも失敗話のオンパレードだった。そこで、生協は考えた。店舗で解凍方法をていねいに説明したPOPを提示したんだ。でもお客さまの解凍はいっこうに成功しない」

寿司屋大将「冷凍肉の解凍は結構難しいんだよ。なかなか言葉では教えられないよ」

木村「そう、そこで生協はもう1回考えた。お客さまがひき肉を冷凍するなら、冷凍して提供しよう、かつバラ凍結して提供しようと考えた。バラ凍結とは、製造(ミートチョッパー)工程で瞬間凍結し、数グラム単位でひき肉が冷凍されている状態のこと。料理のとき、冷凍されていて、好きな量だけ使えるんだ」

寿司屋大将「それいい。店舗で冷凍しているから、鮮度も確かだ」

鈴木「へえ、すごいね。生協の誰が最初に気が付いたか知らないけど、お客さまの失敗している事実情報から、そのアイデアに気が付けたのがすごい」

木村「そう。お客さまは失敗したこと、問題は言ってくれるけど、『バラ凍結のひき肉を作って』とは言わないもんね。だから、お客さまのその後を考える気配りが必要」

 スーパーマーケットの精肉部門では、生肉崇拝の考え方があるような気がします。冷凍肉より、生肉の方が加工仕難いことや、生肉の方が高級感、新鮮感があるからではないでしょうか? しかし、お客さまは折角、生の状態の肉を買っても、冷凍して保存している人がほとんどなのです。ひき肉、バラ肉などは100%近く、冷凍保存されています。

 この生協の精肉売場が、生肉を販売することが正しいという思い込みを排除できた理由は、お客さまの台所の様子を考えたことにあります。お客さまは生で買ってきた肉を冷凍保存し、解凍に失敗しているということに気が付いたのです。では、なぜ、その事実に気付けたのでしょうか? 集会所でのお客さまの雑談を素直に聞くという気配りができたからです。