他にも、買物客が笑顔になる仕掛けがたくさん

 魅力ある商品の開発、今風の販促手段の他にも、このスーパーマーケットの魅力は尽きない。

 前述したように、フルーツサンドやかき氷を求めて、店先には連日、開店前から長蛇の列ができる。並んでいるお客さまは近所の人だけではない。遠方からわざわざ車や電車で来て、暑かったり寒かったりする中で1時間弱の待ち時間を過ごすこともある。

 そのお客さまに向けて、開店15分ほど前から、とあるイベントがはじまる。大山社長のマイクパフォーマンスとともに、「宮崎県産マンゴー入り、2000円のフルーツサンド」をかけて、「じゃんけん大会」が開催されるのだ(内容は時期によって変更あり)。

私が訪れた日は、社長が不在で弟の大山颯介氏がじゃんけん大会担当だった

 これには、私もかなり感動してしまった。「じゃんけんに勝った人が1名のみ、その場で食べられ、他のお客さまに向けて食レポする」という内容だったのだが、そのアイデアが素晴らしい。長時間並んで疲れているお客さまへ楽しさを提供するとともに、2000円というなかなかハードルの高い価格の商品をあえて1名に無料で提供し、その場で味の感想を教えてもらう……。

 たとえ、じゃんけんに負けても、食レポにつられて「そんなにおいしいなら2000円のマンゴーサンドも買ってみようかな」という気になるし、何より楽しさで疲れも吹き飛ぶ。おまけに「食べた感想や商品の写真は『#ダイワスーパー』をつけて、SNSに投稿してくださいね! 」というアナウンスまである。なんて完璧なんだ。

 また、開店と同時に店内に入っていくお客さまに、従業員たちがハイタッチをしてくれるサービスもある。開店直後の入店客にお辞儀をする店舗なら見たことはあるが、ハイタッチなんて初めてだ。まるでアミューズメントパークのよう。これも、ワクワク感の創出につながっている。

 さらに、独特の書体でPOPを書き、ファンを集めているという特長も。他店のPOPはパソコンで文字を打ち込んだシンプルなものが多く、POPだけではどこの店舗が作ったものかなんて、普通は分からない。しかし、ダイワスーパーのPOPは一目見て「ダイワスーパーのPOPだ! 」と分かる。POPの文字からブランディングに成功しているのである。

 ちなみに、同書体のファンから「この書体で表札に文字を書いてほしい」なんて申し出もあるらしい。もはや、スーパーマーケットの域を超えている。

こちらがその書体。個性的だ……(同社Instagramの投稿より)

 なお商品の品揃えも、地域住民のニーズに応えつつ、個性ある商品が並んでいる。普段の買物もしっかり満足できる商品内容だ。

大切なのは「スーパーマーケットで笑顔を生む」と本気で考えていること

 なぜ、こんなびっくりするような施策ばかりできるのだろう。「1店舗のみのスーパーマーケットなので、自由度が高い」というのも、もちろん理由の1つではあると思う。しかし、その根本は経営陣が本気で「店舗を面白くしたい」と考えているところにある。

「お客さまにとっては毎日の当たり前のお買物を、『毎日の楽しい時間』にしていただけるように日々意識しています。若いスタッフには常にメモ帳を持たせ、お客さまの顔と名前を覚えることが一番大切だと伝えています」(大山社長)。

「ダイワスーパーはスーパーマーケットである以前に、笑顔を生み出す場所であるべきだと私たちは考えます。スーパーマーケットだからといって、何かにとらわれる必要はありません」(大山颯介氏)。

「何をすれば従業員もお客さまも楽しいか? 」を経営陣が考え、「スーパーマーケットで笑顔になってもらう」ことに、従業員もしっかりと向き合った結果が、この成果となっているのである。

 なお、同社のSNSは基本的に大山社長が運用しているが、紹介したい商品によっては各部署のエキスパートの方々も発信しているという。その際に特別な運用ルールは設けず、「毎日のお買物を、毎日の楽しい時間にするためのきっかけになる投稿」であれば何でもOKらしい。

 従業員との信頼関係があるからこそ、運用を任せるということが成り立っているのだが、その信頼関係は「楽しい店舗を作りたい」という姿勢に、従業員が共感しているからこそできていくのだろう。

 ちなみに、「なぜフルーツサンドを販売しようと思ったのか」と聞いてみたところ、「とある青果店がフルーツサンドの販売で盛り上がっている様子をSNSで見て、まねしてみようと思った」とのこと。第1歩目はまねでもいい。そこから「自分たちらしさ」をいかに作り上げていくかが大切なのだ。

この"メディア化"をまねしたい! 「ダイワスーパー編」

 このようにして、ダイワスーパーは毎日の買物の心理的な負担を減らしている。

「この店舗だからできたことで、うちでは取り入れるのが難しい」なんて、感想を持ってしまうのはもったいない。何か1つでも「楽しさ」や「発見」を提供する「店舗のメディア化」に役立ててほしい。

 今回のポイントは、「①まずは経営者や従業員がお店を楽しむ」「②既存のサービスの枠にとらわれない」「③他店がやっていて良いと思ったことは積極的に取り入れる」ことだ。自分たちだとどんなことができるか、ぜひ考えてみてほしい。

 主婦にとって「つらい」買物が「楽しい」買物になるよう、楽しみながらメディア化していきましょう!