怒涛(どとう)のような大量出店でセレクトショップ業界に旋風を巻き起こしたアーバンリサーチ。3年前に掲げた「3年後売上高600億円」の目標はまさにその通りに実現した。しかし最近は同社に異変が起きている。出店スピードがここにきて急に鈍化しているのだ。そこで同社の竹村幸造社長にその背景について聞いた。

(聞き手/『ファッション販売』編集長・西岡克)
photo/さんぺい
竹村幸造(たけむら こうぞう)

 1948年2月10日奈良県御所市生まれ。71年京都産業大学経営学部を卒業後、商社に4月入社したが9月に退職。父親のいとこが経営するジーンズカジュアルショップの三信衣料に入社。74年ダイエー古川橋店(大阪府)への出店を機に独立し、89年ジグ三信を設立。97年セレクトショップ「アーバンリサーチ」をアメリカ村に出店。2001年社名をアーバンリサーチに変更。12年8月URホールディングスを設立し社長に就任。趣味は夫人と小旅行でドライブをすること。

 

 ――2桁成長は続いているが、利益面ではこの3年間は減益を強いられている。

 竹村:大量出店し設備投資が膨らんだこと、1坪当たりの売上高が減少していることが原因です。

 今、小売業は時代の転換点に差し掛かっています。今後どう変わるかはまだ分かりませんが、恐らく2、3年の間にはっきりした姿が見えてくると思います。

 この4、5年は出店することに注力してきましたが、それは企業規模を拡大することによって、次の時代に生き残る可能性を高めるためでした。

 来期(2019年1月期)はいったん出店スピードを抑えて、店舗の拡大ではなく、システムや物流、製造に投資を向けていきたいと考えています。

「ドアーズ」と「KBF」が今期好調に飛ばしている

 ――2年前からアパレル業界は不振で、特にセレクトショップが苦戦している。

 竹村:一つはセレクトする商品が同質化してきたこと、2つ目は価格目線が下がってきたこと、3つ目は服を着るのにこだわりは必要ないという意識がお客さまに広がってきたことが原因です。ファストファッションの浸透や製造現場の進化で安くても質の良い商品が作れるようになって価格目線が下がり、「これくらいの価格で十分じゃないか」とこだわりが薄れたのだと思います。

 以前はお金の使い道も限られていたのでファッションにこだわって、少々高くても良いものを買いたいという気持ちが大いにあった。最近は服がコモディティ(日用品)化してきたような気がします。

 だから当社も13年にSPA(製造小売業)型のファストファッションブランド「センス オブ プレイス バイ アーバンリサーチ」(以下センス オブ プレイス)を立ち上げて、事業ポートフォリオに組み入れたのです。

 ――今期(18年1月期)に入って8カ月(2~9月)。好調なブランドは。

 竹村:特に好調なのはライフスタイル提案型の「アーバンリサーチ ドアーズ」とレディスファッション「KBF」の2ブランドです。既存店では5%増くらいでしょうか。ネット通販も伸び、ブランド全体で12~13%は伸びています。「アーバンリサーチ」は普通。「センス オブ プレイス」は利益面でもう一歩。「アーバンリサーチ ロッソ」が少し良くなってきました。

今後の新規出店は抑制するが、出店していく際の中心業態の一翼を担う「アーバンリサーチ ストア」。

 ――今期になって出店したのは。

 竹村:3~9月に16店を新規に出店しました。「センス オブ プレイス」と「アーバンリサーチ」が各3店、「アーバンリサーチ ストア」と「アーバンリサーチ ドアーズ」が各2店。その他4月にギンザシックスに「バイ マレーネ ビルガー」と「フリーマンズ スポーティングクラブ」の店を開くなど10ブランドが出店しました。

 ――「アーバンリサーチ ドアーズ」が好調な原因は。

 竹村:ライフスタイル型なので消費者に身近で、マーチャンダイジングがきっちりと稼働しているからです。

 「KBF」はネット通販の伸びが突出しています。ネット通販で売るには、売れる商品を予測して商品調達をしなければ売れない。その辺がうまくできています。

寝屋川の新物流センターは物流拠点の集約化が狙い

 ――来年6月から大阪・寝屋川市で新たな物流センターを稼働させる。

 竹村:外部委託している物流センターをある程度集約して、コストを抑え効率を高めようと考えたのです。

 グローバル・ロジスティック・プロパティーズ(GLP)が建設した物流施設「GLP寝屋川」に入居します。延べ床面積は2万7000m2、約8000坪です。庫内作業は丸二倉庫に委託し、店舗とEC(電子商取引)の在庫を備蓄します。特にEC対応です。既存のセンターの3、4カ所分の処理能力があります。

 10年に全線開通した第二京阪道路の寝屋川南ICの横で非常に便利がいい。大阪市・肥後橋の本社からも近い。目の届く範囲に物流センターを置きたいという狙いもあります。

 自社センターである大阪の箕面と鶴見の他に実は長田にもあるし、「KBF」だけを委託している倉庫もある。関東にも委託センターが2カ所ありますが、将来的にはそれらをフェードアウトして、最終的に3カ所か4カ所に集約したいと考えています。

 ――集約後の3、4カ所の役割分担は。

 竹村:主に3拠点が中心になります。物流倉庫は一方通行が便利がいいのですよ。店舗やネットに配送する出ていく部分の動脈物流と店やネットから返ってくる静脈物流を別々にした方が効率がいい。

 GLP寝屋川は動脈物流に、長田を静脈物流にしようと考えています。鶴見や箕面はそれ以外の細かい仕事を引き受けてもらおうと。

 ――竹村社長は最近「既存事業を修正している」と発言している。この意味は。

 竹村:小売業にはリアル店舗とネット通販という2つの販路があります。今まではあくまでリアル店舗をベースにして物事を全て考えていましたが、これからはネット通販の方からリアル店舗を見ていこうと視点を変えているのです。今までネット通販はリアル店舗の補完的な役割でしたが、今後は主流になる。そこからリアル店舗のやるべきことは何かを真逆に考えるわけです。

 見方を変えていくとおのずとリアル店舗はどうすべきか、ネット通販はどうすべきか、商品政策はどうあるべきかがだんだん見えてくるわけですよ。

 ――何が見えてくるのか。

 竹村:例えばリアル店舗では今までは売上げをつくるために業態を開発し店舗数を増やしていました。しかしこれからは売上げの主流はネット通販に任せていこうと。するとリアル店舗は従来の売上げ目的から、ブランディングやコミュニケーションを重視し、ブランドの世界を表現していく場所にだんだん変わっていくでしょう。一方、ネット通販はしっかり売って、売って、売るんだという位置付けになります。