会場の様子

 一般社団法人「運輸デジタルビジネス協議会(TDBC)」は4月25日、東京都内で「TDBCフォーラム2019」を開催した。これは運輸業界と多彩なサポート企業が連携し、情報通信技術(ICT)やITといったデジタル技術を利用して人材不足を筆頭に運輸業界が抱える問題を解決していこうとするもの。フォーラムでは各ワーキンググループの取り組みやライドシェアサービスで有名なUber Japanの担当者を招いての対談などが行われた。

 TDBCは2016年8月に発足した。日本全体として人手不足が叫ばれているが、運輸業界も人手不足の上、ドライバーの高齢化、事故対策などいろいろな課題を抱えている。

講演会場そばに設置されたブースでは活発な商談や交流が行われていた

 会員は、長距離バスのWiller Expressや名古屋のフジタクシーグループといった事業者約40社と、総合スポーツメーカーのミズノ、ソフトバンク、大塚製薬、デンソー、ウィングアーク1stなどサポート関連企業約50社で構成され、運輸業界と多彩な企業が結び付くことでシナジー効果を生み出そうとしている(フォーラムの会場外には会員企業の一部がブースを構え、そうした商品を紹介していた)。

意識改革が結果的に交通事故の減少に

 フォーラムでは、名古屋大学 加藤博和教授(交通システムや交通における街づくりなどに詳しい)によるマーケティング視点からの交通についての講演も行われた。「顧客満足度、商品開発、広報宣伝、モニタリング、マーケティング・リサーチなどはサービス業では当たり前だが、公共交通事業ではあまり聞いたことがない」とし「運ぶこと自体に付加価値はない。公共交通という道具を使ってライフスタイル提案を行うことが大事」と説いた。そのためには「サービスとしてのモビリティ(=MaaS)の発想が必要」と述べた。

 その後、TDBCによる各ワーキンググループによる各取り組みの結果報告が行われた。その中でユニークだったのは「交通事故の撲滅~エコドライブの普及とAI IoTの活用~」というもの。例えば、走行管理表の記入徹底と声掛け、燃費集計精度の向上、本部による営業所訪問などを行った結果、燃費が10%向上したという結果が報告された。そして、事故も2018年5月から2019年2月の10カ月間で20%減、2018年11月から2019年2月という直近の4カ月だけでは56%減となったと発表された。

 この取り組みを行い発表した第三フジタクシーの梅村昇生執行役員に事故減少の理由についてさらに聞くと、「基本に立ち返り、ドライバーの安全や燃費についての意識を高める取り組みを続けたことが、結果的に安全運転につながった。つまり、経営者が本気でやる気をみせれば、良い結果がついてくるということが分かった」と語っていた。

 現在、話題の言葉にもなっているMaaSの取り組みについても報告が行われた。日本は一部を除き多区運賃で、かつ現金、IC、定期券、回数券など多彩な決済手段があること、民間事業者が複雑に入り組み、独立採算制で、例えばMaaSが進んでいるフィンランドは日本のほぼ真逆であるとした。

 MaaS導入に関し大都市や地方都市ではなく、観光地から実験の第1段階を導入していくことが得策であると考え、日本有数の観光地である奈良で実証実験を行った報告もあった。奈良を訪れる外国人観光客は、2012年は年間20万人だったが、2017年には10倍の200万人と5年間で10倍増。外国人のバスの利用人数すら把握できていない事態に陥っていた。運転手不足のみならず、外国人をあまり想定いなかったことから、「奈良に到着してもどこでバスを下車すればいいのか分からない」「前乗りか後乗りかが統一されておらず分かりにくい」「Suicaといった交通系ICカード以外のキャッシュレス決済に対応していない」「外国人専用窓口を設けたが説明に時間がかかり窓口が混雑する」といった問題が発生していたことを明らかにした。

 これらを解決するべくActiveScaler社と組んで奈良訪問に特化したMaaSのアプリの開発を目指すとし、例えば、「ルート検索ができる」「決済は両替や小銭をできるだけ発生させない(≒電子決済)」「チケットもペーパーレスにする」「売上げもオンラインで集計する」「多言語展開をする」「予約システムの簡素化」……、こうしたアプリができれば奈良の滞在時間がさらに増え、経済効果が上がるだろうとしていた。

 一方で、物流センターで人が欲しいときに、すぐに人を呼べる、来てもらえないかを課題に挙げ、運送業者共通のプラットホームという考えが浮上。「A社は午後から3人必要という情報を入れた場合、B社は午後は人が余っているからそちらに回す」というアイデアだ。ただ、これは二重派遣、偽装請負の問題からトライアルは実施できなかった。今後の継続課題として取り組んでいきたいとしたが、法律といった制度面で対応が難しい面も浮き彫りになった。

 特別講演では、中央大学ビジネススクールの中村博教授が「アマゾン・エフェクト」をテーマに講演。アマゾンがホールフーズ・マーケットを買収してリアル店舗を持ったこと、「アマゾン・エフェクト」により、玩具のトイザらス、衣料品のギャップ、家電量販店のラジオシャックなどが経営破たんなどに追い込まれたという事実を説明。そんな中、世界最大の小売企業のWalmartが競合するネット企業の買収、特許の取得、注文した商品を店舗で受け取れるなど、アマゾンに対応する戦略を次々と行ったことで、2018年11月~2019年1月では純利益が70%増加したという例も挙げた。そして、「ラストワンマイルのドライバーが顧客経験価値を決める」とし、運転手は2027年には24万人も不足すると予想されるとした。